戻る前の約束2
ちょうど帳家の門弟が呼びに来た。室のそとから声をかける。
「塵家の方が到着されました。正門におられますが案内いたしますか?」
「そのままで。私が行きます」
「先に伝えてきます」
「では有眉殿は雲児と一緒にご案内します」
有眉が席を立ちあとに帳荻と雲児も席をたち出迎えに行く。
「身支度がありますので失礼します。謝宗主助けていただいた恩は必ずお返しいたします」
「恩なんて返さなくていいよ。ないから。またね有眉殿」
謝砂は有眉に手を振り爛は会釈した。
有眉は謝砂と爛に礼をして部屋から出て行った。
病み上がりだとは思えないぐらい背筋がピンと伸びていて行動が早い。
「塵昌は行かなくていいの?」
「はい。迎えを呼んだのは私ですが姉上の門弟たちなのでいいんです」
塵昌が話を続けていた。
「帰りが遅くなったら心配されてたよね」
「帳宗主の誕辰祝いと丁家の様子を見に行くということを受けていますので戻るのが遅くてもいいのです」
「丁家には行ったのか?」
「いえ。帰りに行く予定です」
「行くのに誰か呼ばないのか?」
「迎えに呼んだのは姉上の手の者ですから安心してください」
「塵昌、頼みがあるんだ」
「なんでも言ってください」
「何かを聞いてから返事をするべきだろ」
「謝宗主の頼みはすべて引き受けます」
「丁家はそっとしておいて欲しいのだけど無理そう?」
「報告は必要です。今でなくとも私たちではなく他の門弟の者が行きます」
「丁家を守ってくれないか? 帰家には頼んだが丁家は謝家の傘下には入ってないんだ」
「私たちが丁家と話をつけます。実際丁家の人が居ても居なくても仙府として手に入れることになります。塵宗主は父上ですが止められません」
「塵昌殿の作戦は?」
「私が丁家の門主を兼ねることで防ぎます。常に私の信頼できる師弟を置いておきます。不用意に他の門弟が近寄れはしません。もし調べられても丁家の人の顔は知らないので大丈夫だとおもいます。姉上が門主になるのがいいのですが私なら小仙家の一つぐらい欲しがっても流されて終ります。追及はありません」
「塵昌の魂も修復して気づいたけど魂に妖気で傷が埋められている」
「塵家の秘術ですが継承者しか知りません」
「塵昌公子も跡継ぎでしょう」
「塵辰兄上だけが次期宗主で子なのです。有眉姉上と私は正妻の子ですが父が愛した人は塵辰兄上の母君だけです。扱いは傍系と代わりありませんよ。父と呼べるのは兄上だけですから。姉上は実力があるので発言権もあり信頼も得ています」
「これから宗主が何をしているのか探ります。爛様、謝宗主私たちが間者となります。私の命は差し出せますが守らなければならない門弟たちがいることはお分かりください」
「修復した魂なんだから差し出さなくていい。間者なんてしなくてもいいし危ない橋は渡らすわけには行かないが調べてほしいことがあるんだ」
「なんですか?」
「禁術について知りたい。蛇妖の魂にかける呪詛を調べてほしいんだ」
(爛と理理にかけられた呪詛は何なのかが知りたい。確信がないけど呪詛返しができないほどの呪いってなんだろう)
「調べてみますが私に閲覧できる権限がないので時間がかかるかもしれません」
「無理にとは言わない。知れたらでいいんだ」
「分かりました。謝砂様、気を付けてください」
「大丈夫。塵昌と有眉に護符をあげるよ。魂を修復したことは隠したほうがいい」
「そうですね。分からないようにしないといけませんけど塵宗主は鼈宝の目を持っています」
「鼈宝って?」
「すべてを見通せるといわれている目です。欺けるかは分かりません。以前助けていただいた師弟たちは塵宗主に始末されました。修復された魂だけは妖気が入らず塵宗主にも壊せませんでした」
「始末って殺されたの?」
「はい。姉上から聞きました。私は常に蚊帳の外なのです」
「そんな塵家の師弟なのに?」
「秘術は本家の直系でも一部しか知らされていません。私が知っていることと言えば塵家の者たちは師弟や門弟たち含めてすでに邪気で魂に傷をつけられています。謝家の教えは修復で魂を守ることですが塵家の秘術では元神を傷つけず魂の器のみに傷を負わすのは妖気と邪気に常に触れていることで慣れ祓うためであるいうことらしいですがそれすらごく一部しか知らないのです」
謝砂は黙って爛を見た。
爛もなにか考えているようだ。
(元神っていうのが魂の中のことをいうのなら妖気が混じってたのは気のせいでもなさそうだ。秘術というが塵昌も知らされてないことがある。あの傷は呪詛だろう)
「謝砂、魂が傷をついているように見せれることはできる?」
「分かった。魂に亀裂がはいているようにみせかけることはできると思う」
「隠すのに見えないようにしてしまえばいいなら護符か星星の蜘蛛の糸で覆えばいいかな?」
「私がする。謝砂じゃなくても直接霊力を流して亀裂の跡をつけるぐらいならできる」
爛は立ち上がると塵昌の額に手のひらを当てて一撃を放つ。
ドンと突き抜ける衝撃に自分じゃなくてよかったと思った。
叩くのは霊力は関係ないのではと目を背けた。
「うっ。ありがとうございます」
塵昌は赤くなった額に湯呑をコロコロと転がして痛みを和らげながら礼を言った。
「痛いけど我慢しろ」
爛はすっきりした顔をしている。
「有眉殿には護符を渡して。塵昌にも護符を渡しておくよ」
謝砂は仙筆をとり一枚ずつ護符を書いて渡した。




