戻る前の約束
有眉は塵昌に向き向き合い聞いた。
「昌、礼は言ったの?」
「何?」
「まだなのね」
有眉は謝砂と爛の前に立つと塵昌の手を掴んだまま膝の裏を蹴り一緒に跪いた。
二人は揃って頭を下げた。
「謝砂様、爛様ありがとうございます」
「姉上と私を助けていただきありがとうございます」
「礼なんていいから立って。外で待ってるから着替えてきたほうがいい」
「心遣い感謝します」
謝砂は有眉を立ち上がらせるが棺から出るときに服にも護符がついたようだ。
どうしても置かれている棺が気になり起きた有眉がキョンシーにか見えない。
落ち着かずちらちらと棺を見てしまう。目に入るたびに心臓がドキッとびっくりして跳ねる。
別のところで話したほうがよさそうと謝砂は先に外に出た。
室前の石段に座って待っていると着替えを済ませた有眉に隣の室に案内された。
板の間になっていて机と椅子が用意されていた。
有眉が用意したのか茶と蒸しパンのような菓子が置かれていた。
爛と謝砂も腰を下ろして食べながら会話をする。
茶を入れながら有眉が訊く。
「蛇妖の妖丹はどうなりましたか?」
袖の中をごそごそと探り帳荻が有眉に差し出した。
茶を受け取り爛はすでに食べていた謝砂に先に渡した。
蒸し菓子には甘い干しブドウが入っていて美味しい。
「父上から預かっています。有眉殿に渡すようにと。この邪封袋に入れてあります」
護符が縫い付けられている巾着に砕けたかけらを駆け付けた帳家の師弟たちに拾われた。
「帳家の家紋が刺繍された巾着です。帳家からの返礼として使われています。妖気はないと言っていましたが謝宗主も確認してください」
帳荻は爛が受け取ってから謝砂に巾着の口を緩めても見せてくれた。
妖丹から邪気は感じられず頷くと爛は有眉へと手渡した。
「妖丹が砕けてる」
「あの、ごめん。砕けてるとまずい?」
「いいえ。砕けたのを初めてみたので驚いただけです。これは頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろん。謝家はいらないし、爛もいらないだろ?」
「うん。私のものではないし謝砂の好きにしていい」
「だってさ。有眉殿が返礼品として持ってもらっときなよ」
「受け取らせていただきます」
有眉は邪封袋をしまった。
「蛇妖の精怪から守っていたのはなぜ? ほっといて逃げればよかったのに。有眉殿なら逃げきれただろ? 家に戻ってしまえばいいだけだ」
「帳宗主の誕辰に塵宗主が贈ったものです。他家で騒ぎを防ぐのも務めです」
「すごいな。部外者ですっていう顔をしてもいいのに」
「謝砂宗主も同じではないですか?」
「逃げ出すよ。戦いたい人が駆除してくれたらいいから隠れて待つ」
「私たちを修復してくれました」
「なんていうか成り行きだよ。ずっと震えてたし心臓バクバクで記憶があまりないんだ。蛇妖は爛が戦って星星が止めをさした。怖がりは治せないって自分で分かってるから意識が飛ぶんだ。修復したのは自分のためだよ」
「話の途中ですがあの、有眉殿と塵昌公子はすぐに塵家に戻られるのですか?」
帳荻が聞くと有眉と塵昌はこくりと頷いた。




