有眉の修復
謝砂が寝ていたのは丸一日だったらしい。
食事を済ませて茶を飲んでいると招功が帳荻と雲児が尋ねてきた。
部屋の中に招いて茶を入れた。
「塵昌公子と有眉殿のご様子は?」
謝砂の代わりに招功が尋ねた。
「塵昌公子は目覚めています。そして有眉殿も目覚めました。霊蛛によって守られていたので蛇妖の妖毒は浴びなかったのですが服従陣によって魂に傷があるようで霊力が安定してません」
「有眉殿はどこに?」
「案内します」
帳荻に案内されたのは人払いされた別の室だった。
誰もいなくて謝砂が帳荻に聞いた。
「塵昌は?」
「今は父上のところです。謝宗主と爛殿を呼びにきたんですよ。すぐに戻ってこられると思います」
部屋の中には護符で囲まれた分厚い棺が一つ置かれていて慌てて爛の後ろに隠れる。
蓋はされてないが人が入っているのがちらっとみえた。
ぱっと見は人形のようだが人だ。
爛は謝砂に振り向いて引っ張った。
「隠れなくても死んでない。死臭もないしただ安置されているだけだ。よく見ろ有眉殿だぞ」
「有眉まで棺の中から出してあげないのか?」
「魂を保つのにはちょうどいいのかと塵昌公子が謝宗主にみせるまではそのままにと」
「ちょっと失礼するがやましいことはしないからな」
謝砂は勘違いされないようにじっと帳荻と雲児たちを見た。
額に手をあてるが霊気はあるがやけに冷たい。
棺の周りは縄がされそのうえ護符で囲まれている。
有眉の顔に生気がなく霜がついてる。
「どこに置いておいたんだ? ずっと外に寝かしてたのか?」
謝砂は霜を爛から手巾をもらってなるべく優しく払った。
部屋の扉が開いた。
塵昌が部屋に戻ってきて謝砂の邪魔にならないように少し離れて話す。
「仮死状態なんです。霊力は戻っているのに安定せず蛇妖の毒が抜けても目覚めません」
「仮死状態なら魂を修復しやすい。離れやすい状態だから護符で飛ばないように守ってたんだ」
霊力を流しながら額に触れ持ち上げるとふわっとした魂が浮かび上がる。
手のひらで包み込み修復をはじめた。
触れなくても分かるぐらい傷がついている。
蛇妖の精怪と服従陣で繋いだときに戻ったが亀裂が入りすぎて体が魂を戻ったと認識してない状態だ。
ぽわっと温めるように霊力を込めた。塵昌と同じように亀裂が妖気で繋がれていた。
霊力で塞がる傷が妖気でかさぶたのようになっていた。
その妖気を浄化してしまったのなら魂がもどったと体が認識しないという誤作動も理解できる。
赤黒いかさぶたが剥がれて亀裂には金の筋が入り修復されていく。
傷なら修復して表面もツルツルになるが亀裂は塞ぐことしかできない。
なんかの呪詛のような文字が削られて彫られていたが傷となっていてツルツルに修復できた。
呪詛の効力も消えたはずだ。
無垢な魂に戻ると体にすっと入った。
息だけをしていた体は魂を認識して有眉は目を覚ました。
「えっ? 謝宗主がなぜいるのですか?」
「姉上! よかった」
塵昌が支える手を払いのけて棺の中から自分で出てきた。




