7章 露天風呂
「謝砂様、起きてください」
「謝砂殿」
謝砂がパチッと目を覚ますとなぜか木箱の中に寝かされていた。
それよりも驚いたのは一面に巣がはられていた。寝かされている木箱はまだ新しく木の香りがするのに変だ。
「うわぁぁ。ど、どうして糸だらけなんだ? とって! この蜘蛛の巣をのけてくれ!」
起き上がると蜘蛛の巣が貼られてありあちこちについた気がして手で払いのける。
「みんな謝砂兄さんが生き返ったよ。柚苑も手を貸して」
「ちょっ、っと待って」
雪児が言うと慌てて柚苑は机に置いてあった茶菓子の小さな饅頭をつまみ食いしていたが慌てて口に押し込んだようでパンパンに膨らませたまま謝砂の手を取り一緒に払いのけた。
「棺の中ですよ。よく眠れましたか?」
「まだ死んでないのに入れるなよ。それでここは?」
「帳家ですよ。謝砂兄さんと爛さまの部屋です」
「爛は?」
がばっと体を起こした。
「お風呂に入りにいかれました。星星殿が糸を吐いて運んだので洗い流しに行きました」
一度払いのけられているらしいのならぐるぐるにもっとすごかったのだろう。
痕跡は棺の枠淵に残っていた。
蓋が閉まらないぐらい溝に分厚く重ねてはられている。
ふわふわのスポンジのようだ。
「爛様の衿を握りしめたままで引き離そうとしても手を離さなかったんです。見てくださいこのよれよれの服を」
謝砂が今も手に持っていたのは爛の服だった。爛は脱いで抜け出したようだ。
「爛様も歩けなかった二人を一緒に運ぶのにちょうどいい大きな棺があったため星星が入れて運んだらしい。
「星星殿は瑛といますよ」
「急に動かない方がいいのでは?」
「大丈夫しっかり寝たよ」
雪児と柚苑の手を借りて立ちあがり足を出すと本当に棺の中に寝かされていた。
重厚な厚みのある黒い棺だ。
一度は死んだとはいえ棺の中に入るのは初めてだ。
ずるっと足の力が抜けた。
「わっ。やっぱり危ないですよ」
雪児にぐっと引っ張り上げられる。
「冗談でも心臓に悪い」
支えられながらなんとか椅子に腰を降ろす。
「謝砂兄さんもお腹空いているのでは?」
柚苑に言われると食べてないことを思い出したが蜘蛛の巣だらけでご飯を食べる気にはならならず首を横に振った。
「でしたら湯を浴びてきた方が落ち着くのでは?」
雪児のいうことはもっともだ。
「帳家の奥方様がおもてなしにとお風呂を用意してくれています」
もてなすと言った奥方は本気だった。
謝家と桃展たちが泊っている客室に竹で小屋をそれぞれ建てくれたらしい。
帳家の人たちが用意してくれたのはお風呂だった。
竹で出来た家屋に個別に入れるよう風呂が用意されていた。
湯は運ばれていてあたたかい。柚子が入っていた。
露天風呂だ。
昼間も気持ちがいいが夜も入れば月や星も見れるだろう。
「爛は入ったのか?」




