7章 星星
「爛、避けろ!」
蛇妖はぐっと身を起こして長細いシュルっとした舌を伸ばした。
爛に蛇妖毒を飛ばそうと襲い掛かる。
「うっ」
謝砂が言ったあとも爛の反応が鈍い。
舌が届くギリギリで身をねじって逸らせ舌を剣で斬った。
謝砂は手に持った呪符を飛ばすと蛇妖の斬った舌の妖気に触れて燃える。
斬り口からは血の代わりに黒い邪気がこぼれる。
爛は一撃を受けたところが痛むのかすぐには動けずにいた。
蛇妖の額に残った妖丹のかけらが最後に強く光を放った。
残った舌を口に戻して毒が混じった黒い煙が飛ばされたのを謝砂ははっきり見えた。
隣にいる爛を目がけていて避けられない。
とっさに謝砂は左手で爛の右の手首を掴むとグッと下に引き軸にし、そのまま勢いよく回る。
爛の後頭部に片手をまわしそのまま胸に強く押しあてた。
爛のバランスを斜めに崩すとそのまま足も引っ掛ける。
謝砂は体重の重みをかけて爛をドサッと座らせると頭を胸に押し当てて抱きしめた。
「謝砂どけ!」
爛に突き飛ばされそうでぐっと腕に力を込めた。
「嫌だ。二度目は助けられるか分からない。星星!」
手に握りしめていた仙筆を箸のように投げて地面に膝をつき背中で庇う。
仙筆の蜘蛛の模様が光を放ち白金に飛び出した霊蛛は黒い煙を吹き飛ばす。
巨大な蛇妖の精怪を網のように捕らえ謝砂の血でコーティングした糸は食い込む。
ジュゥっと焼けるように精怪を巣の中に閉じ込めた。
謝砂の頭上には何かでテントの中のように頭上が覆われる。
謝砂と爛は柵に囲まれた中に入っていていた。
細くて槍の先の尖った白樺の木の枝のようなものが結印された箱に突き刺さり粉々に壊れた。
星星が霊蛛を吐き出したのか防御壁を作り蛇妖の毒は防がれた。
「もう大丈夫みたい」
謝砂は腕の力をふっと緩めたが背後で何が起きてるか振り向けない。
爛の長くて滑るような髪の間に顔を寄せる。
首筋からはふわっと酔わせるような芳醇な香りを感じた。
服はいつもと同じ柑橘系の匂い袋と同じ香りがした。
謝砂はずるずると鼻水を啜った。
「謝砂、離れて大丈夫」
爛は安心させるように謝砂の肩に手を置く。
謝砂は爛にしがみついたままで顔を上げて振り返った。
蛇妖の精怪は箱に結びつけられていて消え、白い小さな玉石が残った。
天井と柵は白く見覚えのある触り心地が滑らかそうなベアロのような毛並み。
地面に深く突き刺さった柵が動いた。
「えっ足?」
「私が倒したことになるわよね? それとも謝砂のもの?」
星星の声が聞こえた。
天井が回って揺れると離れて空が出てきた。
「この場合は星殿が宝の所有者ですね」
「ええ。もちろん頂くわ」
転がった玉石を糸を吐き出して取る。
謝砂の霊気と蛇妖の精怪を祓ったものが玉に込められている。
星星は魂の代わりに額に取り込むと光を放ち取り込まれる。
「間に合ってよかった。私のおかげよね」
頭上で声が聞える。
星星は蜘蛛の姿をしていた。
「あれ何?」
謝砂は爛の胸倉をつかんで揺すった。
「あれが星星だろ」
本来の姿だろうが大きくて謝砂と爛を足の中に入れてるほどでかかった。
「うわぁぁ! 何? どこ? どこにいるの?」
「蜘蛛の腹の下」
謝砂は血が急激に下がっていく。
「霊蛛使えるんだからさっさと糸で巣に包みなさいよ」
「星星でてこれたのか」
星星は体を小さくぬいぐるみサイズになり謝砂の目の前にぶら下がった。
「きゃぁぁ! 蜘蛛……」
「ちょっと謝砂! 待って」
星星は慌てて人の姿に戻ったが謝砂は爛の衿を握りしめたままガクッと気を失い仰け反った。




