7章蛇妖の精怪7
爛は珍しく体をポキポキと慣らして木に刺した剣を呼び戻した。
久しぶりに昔見た悪夢を再び思い出し見たのもきっと同じ蛇妖が脱皮したときを覚えていて忘れてないからだ。
呪いを解くには駆除しなければならない。爛と謝砂の問題だ。
この若い公子たちが万が一蛇魂術にかかったら祓う自信はない。
謝砂は爛の様子に桃展たちに言い方を変えて話す。
「桃家の公子と帳荻公子たちは塵昌をよろしく」
「僕たちも手伝います」
桃展が言い、鞘から剣を抜く前に謝砂は柄を押さえて制止した。
「大丈夫。けが人の手当もよろしく。宝探しに手出ししちゃだめだよ。爛はまだ宝を探してなかったから宝が欲しいんだと思って帳荻公子それでいいですよね?」
「爛殿、謝宗主。気遣ってくださりありがとうございます。
「はい。爛様と謝宗主で駆除しても他家からは言えないでしょう。ここは帳家の会場です」
「爛と一緒に祓うから妖毒には気をつけるんだ。爛が大暴れするから離れてろよ」
「謝砂も狙われてる」
「言われなくても分かってる。爛も脱皮中に襲われたって憶えられてるのかな」
「私は巣穴を荒らしたというだけだ」
「なあ、揚げパンみたいな油であげたふわふわの間食にぴったりのはなんて言うんだっけ?」
「油条 を思い出すのか?」
「そういう名前なんだ。油条っていうんだ。美味しかったんだよね。お腹もすいたし夢じゃなくてちゃんと食べたいな」
謝砂の言うことに柚苑と雪児はお腹が空いたのか腹を擦った。
帳荻は爛と謝砂の会話から何かを閃いたのか手を叩いた。
「分かりました。つまり謝宗主が言いたいのは精怪だから有眉殿を呑み込んでもふわふわの油条だと思えということですね」
「違うよ」
謝砂は何も考えて話してないと手をブンブン振ってすぐに否定した。
爛は理解したのか頷き隣で真面目に違う
「それは引きちぎれということだ」
「違うってば」
「謝砂は頭と尾のどちらがいい?」
「どっちも嫌だ」
「頭は私だ。斬れないから口から引き裂いてやる」
「妖毒を浴びるじゃないか。無茶するなよ。怪我はやめてくれ。爛みたいに攻撃はできないけどいざとなったら爛を守るよ」
「必要ないよ。気持ちだけでいい」
爛は笑って頷いた。
謝砂は倒れた木に呪符を飛ばして燃やした。
蛇妖が嫌がる煙符も打ち付けるとニョロニョロっと姿を出した。
「ぞっとする」
謝砂は呟いて自分で腕を擦った。
爛は剣を飛ばし木から離れた広い場所へとおびき出した。
三角形の頭は見据えたまま、首を伸ばしたが爛の身長に合わせても全体の三分の一も満たない。
爛と目線が合うと飛びかかっていく。
閉じた口の隙間からはギザギザした歯が見えた。
桃展たちは塵昌のそばにいたままでちらっと爛が見た。
「精怪になっているが六百年は過ぎた大蛇だ。分かったことは?」
爛が聞くと桃展、桃常たちは観察して見えたことを細かく発言する。
「色は落ち葉や枯れ草のような保護色です」
「模様は薄茶色と木の表皮のような亀裂の模様が入り腹は薄い黄土色」
「うねりながら移動してます」
「細かく描写しなくていい」
「食うって精怪なのに人食えるの?」
爛は謝砂の質問にも剣を飛ばして操りながら答える。
「血肉を喰らうわけじゃなく高級な精怪は生気と霊気を食うんだ。妖力が満ちて妖丹を得る。妖丹を持つと魂を喰い妖丹へと吸収する」
爛は突進してきた蛇の腹の下を潜りぬけて一撃をかわす。
近くの木をタンと足場につかって爛は両足で蛇妖の顎に飛び蹴りを喰らわせた。
精怪でなければ顎が外れて砕かれていただろう。
蛇妖はドタンと打ち付けられて地面に倒れた。
有眉を吐かせるのに地面に打ち付けたが喉の引っかかりがとれないらしい。
低く喉をうならせるが口を開けても有眉が出てこない。
蛇妖は頭を振って身を起こした。
爛は蛇妖の前で剣を構えた。
「謝砂、霊蛛で包むのが大げさだったんじゃ?」
「粗めにつけた棘が原因だ。悪かった。余計なことしちゃったけど、おかげで蛇妖の妖毒も吐けないだろ」
「でも戦いづらいから吐かせないと」
爛がカシャンと剣を飛ばし蛇妖が頭や体をうねらせて跳ね返すたびに蛇妖の目と額も赤く光る。
妖気が強くなると痞えている首のふくらみが小さくなった。
爛の剣が首に目がけて打ち込まれると防ぐのに有眉を動かせてる。
爛は刃を当てられず斬れずにいた。




