7章蛇妖の精怪4
「精怪だろうが妖怪だろが巨大な蛇には変わりない。星星みたいに人の姿にはならないのかな?」
「人の姿を保つより食うには自然体が一番だ。大体の妖怪が人に扮するのは惑わして生気を吸うためがほとんどだ。星星は妖怪の中で変わり者だと思っておいたほうがいい」
「さっきから星星を呼んでても仙噐が光るだけで出てこれないようなんだ」
「謝砂様、方陣が邪魔をしているんです。もとから仙噐に契約で結ばれているのなら会場のなかには入れません」
「そんなことってある? 桃岳泰山と同じなんて……。だったら霊蛛糸は仙筆で使えるかな」
「駆除するんですか?」
謝砂に桃展が驚いて聞き返した。
「そんなつもりはない。だってあれは脱皮したのと同じ蛇だ。微妙な色合いや模様も同じ」
ガサガサと巾着の袋の中を探した。
ゴミだと思ってしまっていたのを夢をみてから思い出した。
「残ったのをまだ持っているはず」
「なんで謝砂が知ってるんだ?」
爛は謝砂の手を掴んで抑えられた。
爛の瞳が揺れてすごく戸惑っているようだ。
(脱皮した皮を見るのが爛も怖いのかな。あの模様は綺麗だけど苦手というか蛇柄は怖いから偽物でも蛇の皮模様も見れないんだ)
「前から見てた夢なんだ。記憶の中とかじゃない」
謝砂は個別にしまっていた巾着を爛に手渡した。
蛇妖は丸のみができないとわかると妖毒の霧を吐き出してから生気を吸い出した。
吐き出された体は蛇妖の妖毒にすでに侵されたようで口から魂が吐き出され蛇妖に取り込まれる。
カシャンカシャンと剣が擦れあう音が激しく響きあう。
襲ってくる黒い煙の妖気を斬るのにバチバチと火花が散った。
「斬ったら駄目だ。蛇妖の妖毒だ」
黒い煙は妖毒を帯びていて斬ると霧となり吸い込まれてる。
縛られていても妖毒を一面に噴射されて吹き出した黒い霧で視界を遮られた。
「うっ」
「逃げろ!」
やっと逃げる気になったらしいが妖毒を吸いバタバタと地面に倒れていく。
「魂を数人分すでに食ったようだな。駆除して取り出しても妖気で魂は亀裂がはいっている」
爛がいうとすぐに力を増したのか大暴れしだした。
押さえきれずに有眉と塵昌はがくっと膝をつく。
「うわぁぁ!」
謝砂は震えてマントにくるまりながら叫んだがマントで防げるわけではない。
爛は謝砂の前に出て背中に庇う。
手から一撃を放ち霊力を込めて吹き飛ばした。
剣を鞘から飛ばして指先で操り扇風機のように回転させて気流を起こした。
「爛、助かったよ」
「ああ。これは妖毒だけどまだ液体は有眉殿の服従陣で押さえられているみたいだ。液体は魂にかかって妖毒で呪われる」
「蛇妖の妖毒に体ではなく魂が触れないように守らないと」
桃展と桃常、桃荻も剣をぐるぐるとまわして妖毒を吹き飛ばし祓う。
柚苑と雪児は護符を宙に飛ばして防いでいた。
「魂に液体を浴びれば蛇蠱の蛇魂呪がかかります」
「妖毒は煙じゃないの?」
「蛇魂呪にかかる蛇妖の毒は液体です。霧は妖気が邪気を帯びた状態です」
「妖毒や蛇魂呪は服従陣でも止められません」
「有眉殿、服従陣を消したほうがいい」
塵昌が有眉を見るが首を横に振った。
「私は消せますが、姉上は無理です。自分では消せません」
蛇妖は胴体を伸ばして塵昌に頭を向け二つの目は塵昌を見据えて映した。
舌を伸ばし得た妖気を吐き出して塵昌を陣からバンと吹き飛ばされる。
服従陣を妖気で押し戻されたのか有眉はぐっと閉じた口の端からあふれ出た血は赤黒い。
「うっ。ゲホッゲホ」
有眉は込みあがってきた血をこらえきれずに咳込み血が溢れ吐き出した。
服従陣は有眉が吐いた血で消えた。
蛇妖の精妖は待っていたように青白い光と赤黒い妖気を増し木から離れた。
蛇妖が木から離れたあとに二本の木がドサッと重なり合うように倒れる。
木の重さに地面に揺れがドンと響いた。
地面には円形の陣のような跡が薄っすらだが浮かんだ。
「残っているのは召喚陣の痕跡だ。あの召喚陣は丁家の虎塚に残されたものと同じものだ」
「やはり塵家なんだね。塵昌殿と有眉殿がいるのに襲わせるのか?」
「謝砂宗主、爛殿!」
帳荻が呼ぶと蛇妖は有眉を呑み込もうと口を大きく開けた。
「危ない!」
謝砂は仙筆に霊力を流し込めた。
有眉をぐるぐるに白い霊気を込めた霊蛛で包む。
呑み込みずらいように小さな棘を付けた。
蛇妖の精怪は白い霊蛛に包まれた有眉をぱくっと食ってしまった。
「あぁぁ。待って!」
ごくっと呑み込んだ。




