7章蛇妖の精怪3
「塵昌は何してるの?」
「私は陣を安定させる補佐ですが固定しているので陣から離れられません」
蛇妖は塵昌と有眉に向かって目を光らせて舌を出し威嚇している。
「精怪を駆除すれば分かることですが、これが塵宗主からの贈り物です」
塵昌は忌々しく蛇妖を睨みつけた。
贈り物といっているが塵昌と有眉は蛇妖で被害がでないように食い止めている。
駆除することを選んで攻撃をすればわざわざ服従陣に縛られることがないのにと気になった。
蛇妖を攻撃をして襲われても自業自得というもので怪我をしても選んだことだ。
帳家の誕辰としての宝探しの一環だと思い込んで命を取られることはないと自分の霊力を考えずに剣を抜いている参加者たちはチャンスだとしか思っていない。
わざわざ苦労しなくていいのだが他に被害が出ないように食い止めているのは帳宗主の顔に泥を塗らないように気遣ているからだ。
「あまり長くは持ちません。今のうちに逃げてください」
有眉が話せない代わりに塵昌が様子を見て参加者に言う。
だが参加している門弟や傘下の仙師たちは先に斬ろうと攻撃するのに必死で離れようとはしない。
塵昌と有眉が陣で守っていることをいいことに好き放題しているようにしか思えない。
陣で死なないように必死に逃がしているというのに蛇妖を探した宝だと思っているようだ。
「死ぬことはないはずだ。駆除できるはずだ」
「塵家に妖丹を持っていけば門弟に入れてもらえる」
帳家ではなく塵家の門弟になるつもりの者の話も聞えてきた。
巨大な大蛇の精怪を扱う塵家に入れば同じように功績を残せるかもしれないと言い出した。
「あれは帳家が用意したものじゃないのならどこの家だ?」
「怨念が強いほど殺した者に近い血を嗅ぎ出現することがある」
「妖怪は殺された怨念をぶつけてくる。血が近いほど怨念は強くなるんだ。塵家の者に体は駆除されたが妖丹を得た精怪になったということかだな」
「好待遇で招かれること間違いなしだ。駆除しよう」
「帳家が用意したものよりもすごい代物だ。これは漂う陰気も普通の蛇妖にくらべると雲泥の差だ。精怪ということは一度塵家が駆除しているのだろう。圧倒的な力だ。さすが名世家に名乗りを揚げたにふさわしい大盤振る舞いだ」
修仙たちの手には呪符が持たれて駆除符を打ち付けながら話しているのが謝砂にも聞こえてきた。
蛇の目を大きなつぶらな瞳というが人もいるが大蛇の目は不気味なぐらい赤黒い。
目の動きで瞳がどこを見ているのか判断が分からない。
額がとくに黒い煙が一番濃いように見える。
長細い舌をヒラヒラと出し入れする様は嘲笑っているようだ。
蛇妖を押さえる服従陣はずっとは発動できないようで黒い妖気を放って抗っている。
暴れるたびに蛇妖に霊力の白い光が吸収されて妖力が補充されている。
「違う陣が蛇にかかってるだけど重なってよく見えない。見えるようにしたいんだけど陣が邪魔をしてる」
「それは媒体として蛇妖が姿を現したときに繋がれた帳家の結印です」
謝砂の見えているのが分かり塵昌が言った。
「帳荻、結印ってなに?」
「そうですよ。帳家の結界と迷陣は破られていませんから外から妖獣や悪鬼は侵入できません。入ったら媒体に結びつけないと存在できないはずです」
「この会場にある宝珠や仙噐の類は祓うだけではなく怪を引き寄せるものもあります。怪が会場に入り込んでしまう場合を考えて方陣が敷いてあります。方陣によって宝箱に使ってる棺は帳家の秘術で捕えた鬼や妖怪、精怪などは見合った箱を媒体にしています。霊力の代わりに棺に入った仙噐や宝珠を媒体にして箱を開けると現れるようになっているんです」
「だから棺や宝ではなく塵昌殿と有眉殿が箱の代わりに結印で繋がれ媒体になり現れたということなんだな」
「雲児たちは父上たちを探して伝えてきてくれ」
「はい。分かりました。帳荻様をお願いします」
帳荻に言われた通りすぐに雲児は謝砂と爛たちに挨拶をしてすぐに門弟たちと走って山を散らばって行く。
謝砂が様子を伺いつつ蛇妖の怖い見た目にもだんだん慣れてきた。
謝砂はぞわぞわと鳥肌が立ち嫌悪感は拭えない。
その間にも蛇妖に食われはしていないが手や足を銜えられている。
蛇妖は食べられないもどかしさから獲物を遠くの木に強く飛ばし体を強くうちつけた。
「痛そうだな。食われるのが怖くなのかな?」
それでも繰り返し攻撃し、逃げていかない。
「大きな蛇妖を見たら怖いと思うのが普通だろ」
謝砂に桃常が声をかける。
「功績を残したい人たちばかりですから」
「さすが謝砂宗主の言いつけを守って謝家の門弟の姿は見えませんね」
「それも問題に思えるんだけど」
「先に入っているのですでに提灯の明かりが消えて大半は退場しています」
「ぎりぎりまで残っているのが傘下でも小さい小仙家の門弟たちだと思います。帳家の師兄たちは奥の先代たちが隠した宝を回収しにまわっていますから駆け付けるにも一時 はみとかないと」
「約二時間だっけ? そんなに待っていられないよ」
「爛様、どうしますか?」
謝砂が言うと続いて雪児と柚苑が呪符を手に挟み尋ねた。
帳荻が二人の前に立った。
「待ってください。桃家の公子たちでは無理ですよ」
「僕たちじゃないですよ。はい謝砂兄さん」
「うん?」
柚苑が言うと雪児も呪符を謝砂に手渡した。




