7章 鬼の種類分け
雪児は別の古ぼけて軽そうな箱を手に抱えて謝砂の前においた。
封と呪符が数枚重ねて蓋がされている。
瑛とさがした宝探しの時にみたような箱だった。
「これも見つけたんですけど開きません」
「無理するなよ」
土を掘り起こしてまで見つけた箱のようだがどう頑張っても開けられないようだ。
「何が入っているのか気になるのですけど開けてみませんか?」
「嫌だよ。襲われたくない」
桃展、桃常、柚苑で試しても開けられなかった。
「爛様は気になりませんか?」
「謝砂でいいじゃないか。邪気も感じないし開けてみたら?」
「わかったよ」
謝砂がいわれるがまま札を恐々とふれて剥がすとギィと音を立てながら開いた。
中から紙人形も何も飛び出すことはなかった。
ただ箱の中には薄い桐箱が入っていた。
謝砂が見つけたのはお箸のペアだった。
持ち運べるように箸箱まで用意されている。
「お箸だ」
掴みやすいように箸の先端には滑り止めがついている。
漆が塗られてその上から箔押しの模様が入っている。
金箔は花びらのようで銀は砂のようだ。
皆が複雑そうな顔で箸を見た。
固まったままの謝砂にどう慰めようか一同は悩んだ。
何をいえば言えばいいのだろう。
「やった! 二つあるから一つは爛にあげるよ。これでご飯を食べよう」
「うれしいのですか?」
「うん。高級な自分だけのお箸だ。特別だろう。爛は金でいい?」
「お揃いだ」
謝砂は自分の分をしまった。
常に持ち歩こうと思う。
しばらく歩いていると帳荻と雲児が合流した。
桃展たちと見つけた宝を見せあっている。
「公子たちも宝を見つけたんですね。楽しんでもらえてよかった」
帳荻が宝を見ながら気分がよさそうに笑った。
「ねえ、どんなものが用意されてるの?」
「すべて霊玉、宝玉で作られた飾りや、簪や留めなど身に着けられるものや、武器にもなる法器や仙噐もあります。大当たりなのは邪気が入った鬼が憑いたものですね」
「なんでそれが大当たりなの?」
「普通は祓いに出向いても傘下では出会えません。祓うことで霊力も示せます。元々は帳家で捕らえられた中級以上の鬼や精妖です」
「鬼って種類があるの?」
「あります。幽霊となった魂が鬼ですから」
「区別して答えなさい」
謝砂に聞かれて帳荻が答えると黙って聞いていた爛が一言付け加えて聞いた。
桃展たちは自分たちが試されているのかを必死に考え出すと微妙な間が生まれた。
謝砂と爛から目を逸らし後ろを向いてひそひそと言い争う。
帳荻と雲児はしまったと輪からすっと抜けた。
桃展は桃常たちから突かれて代表の回答者に選ばれた。
「死んで魂の状態である幽霊で怨念を抱いたものが鬼です」
「生気を吸われたとは違うの?」
「生気を吸われて死んだ場合は鬼にはならない」
謝砂の問いには爛が答える。
謝砂はこの際だと思ってまとめて続いて気になっていたことを聞いていく。
「鬼になっても襲わないこともあるの?」
「正常に死んだ場合の鬼と供養される鬼は生きた人には害を及ぼさない」
「魂って言ってたけど魂魄とは言わないの?」
「魂魄とは肉体と魂がまとめた言い方で二つが揃っていることを指した言い回しだ。肉体が死ぬと魂は霊魂となって肉体と切り離され魂のみの状態となる。死に方にも色々あるし怨念から変屍して鬼と変わる」
「そうですよ。謝砂兄さん人を殺しだしたら悪鬼と肉を食いだしたら邪鬼や妖鬼。
自分の身代わりを求める幽霊は虎に食べられた鬼は虎鬼、水で溺れたのなら水鬼です。だよね?」
思い出したかのように雪児が言い出した。
雪児は間違ってないか不安になり隣の雪児に同意を求めた。
黙れという意味なんだろうが柚苑が笑顔で雪児の手をギュッとつねっている。
「呼び名が多すぎる。人でないなら悪霊、妖怪の二種類で十分だ」
「妖怪や妖獣が体をなくし魂の状態を精怪といいます。それぞれ対処が違うので呼びわけを最初に憶えます。謝砂兄さんは本能で見分けてたんですね」
雪児は話を逸らそうと話題を少し変えたが爛も気になっていたらしく同じように謝砂を見ていた。
「怖い物には敏感なんだ。心臓が弱いんだよ」
「修復術以外は何ができるんですか? 得意なことはなんですか?」
「えっと逃げること、隠れること。かくれんぼで負けたことはない」
「自慢ですか?」
「言いたいのは賢く戦わずにして目的を果たすということだ」
「賊のような考え方だな」
爛に言われても否定しない。
「勝ち負けは勝敗にこだわらず負傷しないことで力を失わないことが一番いい。勝っても傷が多ければ負けと同じだ」
「集めなくても誰も手が出せないものを見つければ一番豪華という意味だ」
「宝箱は取り合わなくても見つけるのが実力だ。その辺に隠されてる」
(いや、そんな深い意味はない。怖いだけなんだ。巻き込まれずに隠れてでも穏やかに過ごせることが一番なのに。平和万歳だ。平和ボケしていたときが幸せだったと心から今なら思える)




