7章 目指すこと
爛は謝砂の前になったり後ろになったりとふらふらと安定しない頭を見ていた。
重心が後ろに引っ張られたようのけぞった謝砂の背中に腕を回し支えた。
「明日に差しさわりますので帳宗主もお休みなられたほうがよろしいと思います」
「そうだった。語りすぎた」
謝砂を抱えようとするが用意されていた房飾りを帳宗主に渡される。
「桃爛殿から頼まれていたものは出来ましたよ。お礼にうけとりください」
爛はすぐに桐箱から腰飾りをとりだしてつけた。
「霊玉に花が咲いているのは珍しい。花は忍冬ですね。小さく加工するのに手が思わず震えました。帳家でも滅多に手に入らない花の霊玉はどなたからか贈り物ですか?」
「霊玉は珍しくはないはずですが?」
「霊玉ではなく花が咲いていることが珍しいんです。霊玉は宝石と同じただの装飾品です。霊玉に花を咲かせたように見えるようにするには霊力を注ぎ入れるのに数人でも五日以上かかります。途切れることなく注がなければ模様になりません。模様が入っているのは霊脈が流れる採掘場で出ていたものしかなく滅多にないのですよ」
「これはもらったのです。帳宗主ありがとうございます」
謝砂は寝入ってしまったようで、用意された客室の扉をあけて入ったところだった。
立ったまま爛に支えられるというか全体重をあずけて持たれながら歩いていた。
「爛?」
「抱えたかったが帳宗主の室で寝てしまったとは言えず酔ったことにして支えて歩かせているふりをさせた。謝砂起きたなら茶を飲む?」
謝砂はぼーっとしたまま爛に座らされ茶を入れてもらう。
「ありがとう」
爛の腰飾りをじっとみた。
白っぽいが桃色と水色のグラデーションの房の上には玉がついている。
「綺麗だな」
「忍冬だ。謝砂が私にくれたものだよ」
「忍冬っていうの? 招功に金銀花って言われたんだけど」
「どちらも同じだ。もらったのだから私の物だ」
爛は外衣のなかに見えないよう隠した。
「返せなんて言わないよ」
謝砂はお茶を飲んでもほろ酔い気分が抜けなかった。
「誕辰に招待された謝砂と帳宗主の二人だけだが九仙家が出席して揃っていたから明日の宝探しにも顔をあわせるかもしれないが無茶しないでくれ」
「言われなくても逃げる。争いは苦手だ。平穏で平和が一番」
「謝砂がそう願っていても仙府争いは謝家も巻き込まれる」
「巻き込まれるのも嫌だ」
「丁家の宿で言っていた許可のために約束を守ることを選ぶのは変わらないのか」
「そうだな。忘れていいのによく覚えてるな」
「引け目を感じず自由に生きていいのに。目指していたことは知ってる?」
「知らない。爛は知ってるの?」
「それが生きる理由になるか分からないけど守りたいものを仙家の争いからは守れる方法の一つにはなる。修復仙師と呼ばれる境地になれば簡単には手出しはできない」
「争いから逃げれるということ?」
「普通に考えて。砕けた魂を修復できるものに手を出せると思う?」
「分かった。修復仙師と呼ばれるように目指してみるよ。目指すだけでどうなるかは分からないけど」
約束を守るのは許可だけじゃない。
この世界に逃がしてくれた恩がある。
生きてると思えたのは謝砂になってからだ。
本当に死ぬことは怖くて実行できなかったけど
常に一人で怯えて不安だった。
生きる理由すら見つけられなかったのが謝砂が用意してくれた道を歩いていくことができる
「怖いから勉強するよ。教わっていく。理解すれば怖くなくなるはず。争いは逃げるより防ぐのが一番だ。少しでも防げれば悲しまないし怖がらなくて済むなら修行する」
「私が君を守ると約束するよ」
謝砂は茶をゆっくりと飲んでいたが頭はふわふわとしていたままだった。




