7章 帳宗主の誕辰2
謝砂たちは帳荻と雲児に客室へと案内された。
門から中庭をぬけて広間ではなく奥へと進む。広い敷地に迷子になりそうだ。
騒がしくなく紅葉が楽しめる静かな場所だった。
庭園には小さな滝があり水が流れる音が聞こえている。
「こちらが謝砂様の室になります。のちほど爛殿の室に案内します」
「ありがとう。こんなに広い場所だったら星星を出してもいいか。招待状に瑛の名前も書かれてたけど一緒に出席していいの?」
「それが……。爛殿と謝宗主は先に宴に参加いただけますか?」
「桃家の代表者として爛殿、謝家として謝砂宗主のお二方でお願いします。塵家の方もいらっしゃられていて大世家が集まってしまったんです」
「塵家?」
謝砂がたずねると帳荻と帳雲児は目くばせてお互いに困った表情をしが帳荻がため息をついて話し出した。
「はい。帳宗主と交流がある家しか仙府以外は招待していないのですが祝いに来ていただいたのに追い返すこともできませんし、どこからか聞きつけた大世家が一堂にきてしまったんです」
「本来ならすでに帳家のみで祝っているのですが、翌日に帳家の身内で誕辰を行いますのでご招待を送られていただきました」
「星星出てきて」
謝砂は帳荻と雲児の前で仙筆をだし星星を呼び出した。
ふわっと人の姿で星星は出てきた。
帳荻と雲児は口をぽかんと開けたまま星星を見ている。
先に我に返ったのは帳荻だった。
「綺麗な方ですね。謝砂様の姉君ですか?」
「そうよ。謝砂の姉です」
星星はぐっと顔を帳荻に近づけた。帳荻はごくっと生唾を呑み込む。
「ちょっと違う。お子ちゃまをからかうな。泰山では出てこれなかったけど仙筆と契約した蜘蛛の霊獣? 霊精? もとは精妖だったんだ。複雑だけど星星だ」
「私は謝砂と一緒で構わないから星星と瑛に室を用意してくれるか?」
爛は謝砂の説明をスルーして帳荻に一部屋頼んだ。
「瑛、星星をよろしく。見張るんだよ」
謝砂は瑛に言い聞かせた。頷く瑛の頭を撫でた。
「分かりました。案内します。瑛殿手をつなぎましょうか?」
思い出したのか瑛は帳荻の差し出された手を握った。
(どうして手をつなぐ必要があるんだ!)
謝砂が叫んで帳荻の手にチョップする前に爛に腕を掴まれて近づけられないようにされる。
そして手で口を塞がれた。帳荻は星星たちを案内しに室から出ていく。
帳荻が瑛と星星を片腕ずつ腕にぶら下げているのが見えた。瑛もすごく喜んでいる。
謝砂は塞がれた手を叩くが外してくれない。
「後ほど呼びに来ますのでそれまでお休みください」
雲児は何も気にしないのか爛と謝砂がもめていても仲裁せず部屋の扉を閉めて出て行った。
誕辰は謝砂が思っていた誕生日祝いではなくスケールが違った。
ホームパーティーのようなものか還暦祝いの想像していなかったが披露宴のように盛大だ。
赤い飾り布で装飾され大広間の奥には漢字で『喜』と彫られた大きな鍋の蓋のようなモンタージュがあり圧倒された。
「謝宗主、桃爛殿お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
謝砂と爛を門弟が案内し帳宗主に通した。
広間の入口で祝いの盃を渡され酒を注がれる。
すでに誕辰は始められていた。
口をつける前に爛に蓋をされる。
「まだ飲んではいけない。祝辞を伝えてから飲み干すんだ。私の真似をしろ」
爛が先に見本を見せてくれる。
「この度は帳宗主のご長寿と健康をお祝いを桃爛が申し上げます」
「よく来ていただいた。かたじけない」
「誕辰をお祝いを謝砂が申しあげます」
「はるばる来ていただきありがたい。ぜひ祝いの盃をかわそう。飲んでくれ」
「では」
爛が盃を掲げぐっと一口で飲み干したのをみて謝砂も真似をして飲み干した。




