7章 帳宗主の誕辰
「山地の近道を通ったから出くわしたんでしょうか。今まで山鬼に出くわしたことがない道だったので道案内をしたのです。信じてください。わざとではありません」
呉が爛と謝砂に申し訳なさそうに聞いた。
「信じてるよ。出くわしたのは偶然だし、みんな無事なんだから気にする必要はない」
「謝砂の言う通り。山鬼はもともと歌と音楽が好きなんだ。賑やかな曲に釣られて道中出てきたことも考えられる。曲にあわせて踊ることもある」
「音楽が好きな妖怪もいるのが意外だ」
「帳家に報告はしておく。出かけるときは護符を持っていれば鬼に出くわしても逃げ延びれるし結界になります」
「教えていただいたので墨糸を持ち歩くことができます」
「桃常から護符を受け取ってください」
「はい。呉殿こちらです」
「同行していただいただけで命まで救っていただいたんです。護符を頂くなんてとんでもない。受け取れません」
「私からなので受け取ってください」
「よろしいのですか? ありがたく受け取らせていただきます」
断られることを予想していたようで爛は謝家の黄色い護符を桃常から呉に渡させた。
爛は師弟からだと遠慮せずに受け取りやすいと配慮したようだ。
謝砂は爛の横腹をツンツンと突いて覗き込んで笑いかけた。
突く手を掴まれ防がれる。
「謝砂のためだ。呉殿がいないと果実酒が飲めないと悲しむだろう」
顔色を変えないが呉の酒を爛も気にっているらしい。
「うん。爛の言う通りだ。呉殿、買いにも来るけどまた謝家の近くに来たときは酒を届けてくれ」
「ありがとうございます。では後ほど。お気をつけて」
呉に見送られながら謝砂たちは店から出ていく。
帳家の城のような屋敷の正門に歩いていく。
門のそばに少し大きくなった帳雲児と帳荻が迎えに待っていた。
謝砂は瑛の手をつなぎ歩いていた。
出店が多くてなかなか進まない謝砂の手を瑛が引っ張っていたが謝砂の誘惑にはまっていく。
「瑛、こっちには飴細工だ。何がいい? えっと小鳥を一つちょうだい」
謝砂は白い白鳥のような鳥の飴を買い瑛に渡した。隣にいる爛が代金を払う。
「山査子飴はいかがですか?」
「一度食べてみたかったんだよね。それを一本」
呼び止めらるとすぐに店をのぞく。
迷子にならないよう謝砂の腕に爛は霊弦でつなぎ連行した。
買い食いをして食べ終わるころやっと帳家にたどり着いた。
「帳荻、雲児久しぶり!」
「謝宗主、爛殿父の誕辰祝いに来ていただきありがとうございます」
(誕辰って書いてあったのか。生誕だとばかり思ってた。口に出す前でよかった。でも帳荻と雲児に会うのって一月ぐらいしかたってないのにムキムキになってるのは気のせいだろうか)
「お招きいただき感謝する」
爛が挨拶を述べる。
謝砂の足に瑛がしがみついて隠れた。帳荻と帳雲児に警戒しているのだろう。
「ねえ、招功たちは見なかった? ついているはずなんだけど」
「謝招功殿や門弟のお方は先ほど到着されて屋敷の中にご案内したところです」
帳荻に門の中へと入るよう促されて謝砂と爛も中に入った。
瑛はずっと気になるのか謝砂に抱えられながら帳荻をちらっと見ては目を逸らす。
謝砂も警戒していた。
「やっぱり聞いてもいいかな? 帳荻も雲児も特別な修練でもしたの?」
「はい。気づいていただけて光栄です」
謝砂の見間違いではなく帳荻と雲児は全体的に一回り大きくなっていた。
筋肉が盛り上がり胸板の厚みが増している。どっしりとしている。
やや細めの少年のような容姿が筋肉ムキムキの青年に成長していた。
「屋敷に戻ったあとで鍛えなおしました。謝宗主に修復していただいた魂を傷つけないようにと父上から先生をつけてもらい筋肉を鍛えることで精神が鍛えられました」




