7章
呉店主は少し考えてから謝砂と爛に申し出た。
「謝家府にもう少し滞在したいのですが酒を帳家府に届けないといけないのです。しかし道中に鬼が出没するという物騒な噂がまだありますので……」
「帳家?」
「以前言ったように私の商売する管轄している土地が帳家なんです。贔屓にしていただいてて酒を納めるのに一人では恐ろしくて戻れませんが宴に届けないといけない特別な金木犀と金柑の美酒です。店にいけばありますので謝宗主にもお渡しできます」
「呉健吾殿の腕は確かだな。漬けていてくれた林檎の糖蜜もいい匂いだった」
「もう飲めますよ。冷暗所で毎日かき混ぜて蜜になっています。まだ残っていたのなら鍋で果肉を煮詰めて食べれます。水で薄めてお好みの濃さで味わってください」
「飲んだよ。帰ってから星星に入れてもらったんだ。すっごく美味しかった」
林檎を絞って作った林檎ジュースとは違った味だった。
きりっとしたのではなくてとろっと優しい味だ。
匙ですくうと金色に輝いていて氷砂糖とゆっくりと溶けあった少しだけとろっとしていた。
時間をかけてゆっくりと作られたいた。
すべての仕込みを終えて休憩を取った。
壺に詰めたものは家人たちが大広間から保管場所へと運んでいる。
大広間の門の上には『飛燕殿』と書かれた板があった。
室の外の段差に座って謝砂は次々に運ばれていく壺をぼーっと眺めていた。
「あとは浸かるのを待って毎日かき混ぜるだけだ」
家人に教えていた呉店主が話を終えて謝砂のほうへと歩いてきた。
「すでに果実が熟しているので早く浸かります。毎日かき混ぜてください。果実蜜のほうは果実がしぼんだら取り除いて保管してください」
「わかった」
家人たちは残った梨や柿などを切り分けて師弟や門弟たちも座り込んで食べていた。
糖分を補給しているのか柚苑の皿の上には柿が山盛りに盛られている。
取りに行った爛はお盆の上の皿に二つ大きな柿をのせて謝砂に持ってきた。
匙が用意されている。
「謝砂食べよう」
謝砂の隣に爛は腰を下ろし隣にお盆を置く。
謝砂は爛が持ってきた柿を食べながら帳家のことを爛に尋ねた。
「帳家で行われるのはなに?」
「帳宗主の生誕祝いだ」
「誕生日のお祝いってこと?」
「家宴が開かれる。謝家や桃家の大世家は当主が出向くことはあまりない。内輪の祝いだ」
「祝いの品や祝辞を門弟に届けさせたりするのだが謝砂も招かれてる。帳宗主から直接招待状が届いている。別件もあるが私にも招待状が届いてる」
謝砂に爛は招待状を差し出した。
「今回は絶対仙筆を持っていく。あとは祝いの品だけどさっき漬けた酒とかを持っていこうか」
「それがいい。謝砂が漬けた果実の糖蜜は贈り物にちょうどいいんじゃないか」
「うん。ちょうど生誕がある。酒もその祝い酒だろう」
「はい。ですが。えっ? ご同行していただけるという話ですか?」
「そうだけど」
「護符を頂くことができたらと願っていたのですがありがたいです」
「護衛は門弟にも頼むよ。安心してくれ」
「そういえば普通の贈り物は?」
「法器や仙噐の類で芸術品が好まれるが仙噐をつくる帳家なら山ほどあるだろう。だから書画とか玉がおおい」
「わかった。だったら漬け込んだ壺となんか招功に用意してもらうよ」




