果実酒づくり
丁安と丁一若は貴重な人手を手放さなかった。
収穫がなくてもしばらくは様子をみるため滞在しようと思っていたが予定は予定だ。
柿だけではなく、かりん、りんご、梨の果樹の収穫を手伝ってからやっと謝家にもどってこれた。
土産に収穫をした果実を山ほどもらって帰ってきた。
爛たちも桃家には戻らず謝家に戻ってきたが柳鳳を一人で桃家に向かわせた。
「柳鳳一人だけでいいの? 桃展や桃常たちは? 治ったとはいえ謝家が預かった公子たちを怪我させたし家に戻さなくてもいいのかと思ったんだ」
「柳鳳は様子を探らせただけだしすぐに戻ってくる。師弟たちの怪我は修練が足らないからだ。謝砂に頼りすぎで血を流させた責任をとらせる」
爛の声がきこえていたようで桃常、桃展、雪児たちはさっと逃げだした。
柚苑だけが逃げ遅れ頭に蜜柑を投げられる。
「責任って大げさだな。何を考えてる?」
「光霊石の修復だ。できるまで逆立ちさせる」
「逆立ちはやめてやれ。桃展が言ってたが光霊石の修復ってむずかしいんだろう」
「そうだな。桃展、桃常はまだできるほうだが逆立ちで口から麺すすりする方がましだろう」
「日頃どんな修練してるんだ?」
「光霊石の修復は体中の霊力の一点に集中させるから全神経を使うんだ。小さな石だとしても力を込めすぎると筋肉に反動して筋肉痛になる」
「それはあとにしよう。謝家の修練に付き合わせることで納得してくれ」
「「謝砂兄さん!」」
桃展や桃常たちが謝砂に集まってくっついた。
「いいか。皮むきだぞ。神経使うなら同じだ」
「その方が何倍もましです」
「喜んで手伝います」
自分たちで収穫した籠を運び出した。
食べきる前に腐りそうで謝家の師弟と門弟総出で修練ではなく皮むき作業を帰ってから始めた。
厨房には入りきらず大広間を使うことになった。
丁家の果樹園は有名だったようで招功と星星も知っていた。
「農家と勘違いされている」と丁安たちが言っていた通り丁家は果樹園の農家で名が通っていた。
まだいた薬果酒の主人の指導のもと枇杷酒はすでに漬けられていたが丁家の果物を見るなりいてもたってもいられないほどテンションが上がってしまった。
今が漬け時で逃すと味が甘さよりも苦みが出てしまうと脅されるように気迫に押された。
宗主の職権乱用だが謝家総出で果実酒と糖蜜というシロップ作りが始まった。
瑛は謝砂の隣で蜜柑の皮むきをしていた。
姜は星星と並んで師姉と師妹たちに混ざって果物を食べていた。
「爛、姜ちゃんが手伝ってくれないんだ。柳鳳がいなくて寂しいんだな」
「姜は嬉しそうに見える。手伝わないのは前に謝砂が手伝うなと言ったからだ。姜に包丁を握らせることはできない」
「苦手なのか」
「皮むきをさせると食べる実が残らない。瑛の方が上手だ」
「分かった。姜に無理はさせないし、食材も無駄にはさせない」
店主を先生に料理教室が開かれた。
大量に積まれた氷砂糖も運ばれて用意されていた。
「いいですか、私の店では皮と種を取り除いて漬けるというのが美味しさの秘密です。砂糖は氷砂糖を使うことで鍋で火にかけたりはしません。じっくりと時間をかけて作ります」
「梅酒を一回しか作ったことないんだよね」
「氷砂糖と果実は一対一。酢を少量混ぜてもいいですがどちらでも構いません。果実酢は氷砂糖、果実、お酢を一対一対一です」
「お酢は苦手だ」
「またの機会にしましょう。果実酒は私が調合します。極秘ですので割合を教えられません」
「作ってくれる方がいい。手間代もちゃんと払うから招功か姜ちゃんからもらってくれ」
普通の種類の柿も皮を剥き種を取った。
梨の皮も剥いて種を取り薄く斬った。
水分がたっぷりで瑞々しくそのままでも甘くてシャリシャリとした触感だ。
梨ジュースも美味しいがシロップで漬け込んだほうがより手間を惜しまない分長く楽しめる。
「柿と梨は喉にいいから咳止めにもなる」
「謝宗主はよくご存じですね」




