柿の収穫
謝砂たちが丁家につくと丁安が出迎えに来た。
「お待ちしておりました」
姜から瑛を預かって謝砂と手をつないでいた。
「謝砂様のお子様ですか?」
「うん。瑛だよ。とっても可愛いだろ。柿の収穫を一緒にしたくて。駄目だったかな?」
「駄目ではありません。お子様がいたとは知らずに少し驚いてしまって」
謝砂は瑛に目線を合わせ繋いだ手をぶんぶんと振ると丁安は馬車を降りてきた姜をちらっと見た。
「結婚されていたとは知りませんでした。あちらの方がもしかして奥方様ですか?」
「あははは。違う。姜ちゃんは従妹だ。瑛は隠し子なんだ」
「謝砂、瑛で遊ぶな。嘘を言わずにちゃんと説明しないと瑛が覚えてしまう」
爛は瑛を持ち上げて片腕で抱っこした。
丁安は謝砂と爛を交互に見て瑛の顔をじっと見た。瑛はにこっと丁安に笑いかけた。
謝砂も笑いたくなるぐらい丁安の表情が真ん中に集まって変顔のようだ。
「謝宗主ではなく桃爛殿のお子様だったのですか?」
「瑛は私と謝砂の子だ」
「えっ……」
丁安の顔色が赤くなったり紫や青白く変化する。
「爛、言い方に気をつけろ。違う勘違いされる」
「事実を言っただけだ。嘘は言ってない」
何かの仕返しだろうか爛は瑛を連れて先に屋敷の奥へと入っていく。
謝砂と丁安に微妙な空気が漂っている。
謝砂は沈黙が流れる前に説明する。
「瑛は二人で育ててるんだ。瑛の魂は一若殿のように修復した魂だ。爛と見つけた子で色々事情があって謝家の子として育ててる」
「そうだったんですね。まだ幼いのに複雑な事情があるんですね。それよりもあちらが噂の謝姜殿だったのですね」
「噂?」
「はい。謝家が描いた絵の仙女だとも言われてるんです」
「姜ちゃん人気なの?」
「書画だと言われているのは近寄れず眺める存在という意味です。一目見ただけでも才女だと言われるのが分かります。これから謝姜殿に縁談を申し込む仙家はますます増えると思います」
「姜は婚約前だ。相手はいないし現れる予定もない。優しく見えるのは見た目だけで性格は強い。優しい丁家の一若殿とは違うから勘違いするな」
「あんたは黙ってて」
姜は柳鳳の背中をバシッと叩いた。
「丁安殿謝家の門弟と同じく私も残った邪気払いを手伝います。護符も預かってきましたので受け取ってください」
「ありがとうございます。町の人たちにも手伝ってもらったので屋敷の修繕もある程度はできました」
姜が護符の束の包みを丁安に差し出した。
知的な言い方に気遣いは才女の名にふさわしい。
丁安は服で手を拭いてから受け取った。顔が赤くなっているは気のせいだろうか。
姜は伝符を受け取り謝家から門弟を連れてきた。
正門と閂は新しいものに付け替えられていた。
門の敷居を跨いで中庭に入ると陰気が立ち込めて暗く重たかった空気が浄化されていた。
庭園を通り過ぎ脇の門をぬけると虎塚があった。
さらに登っていくと果樹園が広がっていた。
果樹園にはいると桃展や桃常たち師弟たちと謝家の門弟も籠を持ったり背負い広がっていく。
瑛と収穫するつもりが爛から柳鳳が素早く瑛を奪い肩車をして連れて行ってしまった。
柳鳳は瑛にも協力してもらうらしく瑛を使って姜を呼び追い払われないように身を守ってる。
「みんなで収穫して持っている籠を一杯にすること!」
謝砂が叫ぶと「「はい」」という返事がいっぱい聞こえた。
葉が散り始めているが代わりに柿の実が橙色に色づいている。
「収穫の手伝いありがとうございます。腐ってしまうので助かります。収穫していただいたものはぜひ持ち帰ってください」
「手伝いっていうか楽しませてもらえてありがとう」
「これってもしかして熟した実の果肉は吸えるほど柔らかいという絶品の柿?」
「絶品っとは知りませんが謝宗主の説明は丁家の柿のことですね。ここでしか採れません。収穫してから寝かせると実が熟して蔕を切り、身を匙で食べます」
「それだ! ずっと探し求めてたんだよ。やっと出会えた」
謝砂は手の届く範囲だけの柿を収穫して上のほうは爛に木を登ってもらい受け取り籠に入れる。
熟しているかを隣で丁安に選別してもらっていた。
「一若殿はあれから体に異変はない?」
「大丈夫です。一姉さんも果樹園にいるはずなんですが呼んできましょうか?」
「自分たちで探すよ。丁安はみんなに収穫を教えてて」
「謝砂が選んだ木は当たりだ。大きな実がなっていた」
爛が登った木から収穫した林檎みたいに大きな柿を腕に抱えてすとんと降りてきた。




