6章13
「一姉さん?」
意識が戻ったのか全部の指を動かした。
「ゲホッ。ゲホッ」
「姉さん。しっかりして」
浅かった呼吸が治り深く息をすると外気が気管を冷やし咽こんだ。
手を当てて抑えるが一若はつっかえていた血を吐いた。
謝砂はびっくりして慌てて爛の後ろに隠れた。
丁安にどうしてかと尋ねられてないのにその前に否定した。
「何もしてないよ。知らない。霊力を込めて修復はした。魂が体に戻ったんだから他のことは分からない。自分のできることをした」
爛は背中に謝砂の重りを付けたまま膝をつき腰を曲げて丁一若の腕に触って確認した。
じっとみると一若は人形のような綺麗な顔立ちをしていた。
「謝砂、大丈夫だ。落ち着いて」
「だって血を吐くなんて怪我をしてるか、修復した魂が定着しなかったせいとか?」
「違う。定着したから吐いたんだ。意識も戻ったし安定しているよ」
覗き込んで肩から顔を覗かせる謝砂に教えてから立ち上がった。
「ありがとうございます。つっかえていたのがむせて咳込んだんです。気分も悪くありませんので心配ありません」
手をぐちゃぐちゃになった丁安の頬に触れた。
ぬくもりを確かめるように両手でそっと包んで頬に押し付ける。
「丁安、ちゃんと助けを呼びに行ってくれたのね」
「――姉上」
「生きてるわよ。槐の木に借魂して体を仮死状態にしていた。意識があるうちに経穴をつき霊力を魂にうつし槐の木に封じ体の霊脈を封じていたの。虎鬼として操られないようにかんがえて虎妖が臭いを嗅いでもただの人。丁安が逃げれるように時間を稼いでいたのに戻ってきてしまったのね」
「間に合わなかったのだと……」
「霊蛛に包まれて霊力が回復したからもう少し遅かったら出血死していたわ。丁安、その首の傷はなに?」
「死ななくてよかった。一姉が生きていたなんて思わなかった」
ぎゅっと丁安は腕に抱えた一若を抱きしめた。
「姉さんを見殺しにする気だったのね。助けは誰を呼んだの?」
「謝宗主と桃爛殿と桃家の公子たちだよ」
丁安が助けを呼んだ相手を知り丁安の頭を一若は殴った。
「重要なことは早く言いなさい。いつも言っているでしょ」
丁安を振りほどき膝をついて腕を前に重ねて頭を下げた。
慌てて丁安も同じように丁一若と同じように膝をつき頭を下げる。
「この度は助けていただき感謝いたします。命を助けていただきありがとうございます」
「どういたしまして。それよりも聞きたいのですけど、樹木に魂を移せたのはなぜですか?」
謝砂は丁安の仙術を見る限り仙術は普通で不思議に思っていた。
「丁家は仙家としては小仙家ですが代々仙術と樹木植物の研究をしているんです」
「樹木に仙術ってどうやって?」
「霊力を持った樹木や果樹の実はどうなるの組み合わせてみたり。町の人は仙家ということを知っていますが取引のある商人に農家と思われていると思います。裏山に果樹園があって今の季節のおすすめは柿ですね。丁安と一緒に守らないといけない土地です」
「生きる道が残されていることに感謝しなさい。残された者として守るものがあることが生きていていい理由として私たちには果樹園があります」
「果樹園があるの? みんなで収穫したいんだけど間に合うかな」
「謝砂様、五日後には柿の収穫に来てください。公子たちの怪我を治してからでも収穫できます」
「謝家からも片づけの手伝ってもらうよ。一緒に柿の収穫をしてもいい?」
「もちろんです。そのときにお話しすることもあります」
屋敷の正門からは馬の蹄の音と人が走ってきた足音が多数聞えてきた。
「謝宗主! いらっしゃいますか?」
御剣した仙師たちが庭に降りた。
打ち上げた花火に気づいた帰家が応援に駆け付けてきたらしい。
「帰家の当主、帰秀です。門弟たちを引き連れてきました」
「謝宗主はご無事でしょうか?」
「一応は大丈夫。丁家の片づけを手伝ってあげてくれ」
「もちろんです。丁家の当主とは旧知の間」
謝砂は丁安に話した。
「遺体は埋めるなら穴掘りぐらいなら手伝うよ」
丁安はちらっと一若を見てから首を横に振った。
「遺体は燃やして代わりにみんなの仙剣を埋めます。遺体は食われて揃ってません。魂もすでになく不完全ですから燃やしたほうがいい。残った僕がしなければいけないことです」
涙を流さずに淡々と話す丁安には悲しみよりもすることで残された理由を必死に探しているように見えた。




