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6章槐の木の下

 丁安は根元に落ちていた花の刺繍がされた髪留めの紐を手に持っていた。

 血雫がポタポタと止まることなく落ちてくる。

 その血は雨のように冷たかった。

 

 柚苑と雪児たちは吊るされた人で紐の縛りが緩くなって下ろせそうな人を探した。

 木の外側に布で吊るされていた人の足を掴んで持つ。ぐっと持ち上がげるとポキポキと枝が折れるような音がした。

「枝を折るなよ」

「枝じゃなくて骨が外れたおとです。軽くて靴をもつと足首の骨がはずれたんです」

「説明しなくていいよ。気をつけてくれ」

 謝砂は両脇にいる桃展と桃常を前に突き出し後ろに隠れた。

 下ろせなかったようで紐で吊るされたまま人を調べていた。

「吊るされている人は服についた血も乾いています。

 生気も吸われたあとでひっかかれたり噛まれた傷口から出血したまま血がすべて抜かれて干し肉のように干からびています」





 木の葉の隙間から細い枝が伸びてきたように黒煙が飛び交った。

 黒煙は丁安の首にひものように巻きつくと吊るし上げるように体が持ち上がる。

 丁安のそばにいた柚苑の腰にも巻きついた。

 剣で斬るが煙は一旦消えてもすぐに表れた煙が再び腰に巻きついた。

 桃常と桃展は謝砂から手を放し剣を抜いて構えた。

 丁安に巻きついた煙に持っていた呪符を謝砂は飛ばした。

 バンと爆発して巻きついた煙が丁安の首から解けた。

「柚苑その煙に呪符を飛ばせ」

 謝砂と同じように柚苑も黒い煙に呪符を飛ばすと煙は消えた。

 柚苑は丁安を連れて槐の木の下から出てきた。

「丁安公子しっかりしてください」

 槐の木から離れると黒い煙が槐の根元から湧き出てきた。

 飛んでくる煙を桃展と桃常も斬っていく。

 ガシャンガシャンと剣が擦れある金属の音で一気に騒がしくなった。

「しまった。仙筆持ってきてないんだった」

(邪気が集まったような煙だな。妖気も感じる)

 木や避けれるものを探して逃げまわる謝砂に黒い煙が飛んできた。

 佩いていた剣を鞘から抜いて銀色の刃で煙を弾き返した。

「雪花(せつか)君が頼りだ。お願いだ助けてくれ」

 霊力を帯びた剣に触れると煙は燃えるようで消えて行く。

 剣を握りしめるとしっくりと馴染んだ。

 ブンブンと振り回すと偶然にも陣が宙に現れた。

 赤く金色に光りを放ち邪気を帯びた黒煙をぶわっと吹き飛ばした。

「謝砂兄さんの術陣はでっかいですね」

 駆け寄ってきた桃展に感心された。 

 謝砂はふうと大きく息を吐いた。

 




 槐の木の下の血が染みこんだ根本から邪気が漂っている。

「槐の木は鬼払いじゃなかった?」

「虎鬼に死体を吊るさせたんですよ。槐の木に血で穢れのつけて邪気を集めてるんです」

「虎って頭よすぎるよ」

 庭園に突風が吹き枯れ葉が舞い、槐の木の葉はざわざわっと揺れる。

 灯篭の火は揺らがなかった。

 煙が渦を巻き一つの塊に集まると虎の影のようだ。

 黒い煙の中に燃えているような火の粉がパチパチと混じっているように見える。

 火の粉が集まり大きな猫の形になると赤黒い瞳が光った。

「連絡用の花火を打ち上げてくれ」

 桃常がパンと空に花火を打ち上げ明るく光った。

「爛様と柳鳳師兄が気づいたら来てくれますがそれまでは逃がさず僕たちで持ち堪えないと」

「逃がさないっていうけど。どうしたらいいんだろう」

 赤黒い目は丁安をじっとみた。


 

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