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6章9

 やることもなく爛に部屋に置かれていた林檎と柿を切ってもらうのを大人しく眺めて待っていた。

 うつうつと眠たくなったとき柳鳳と桃展たち師弟が来たのか宿が一気に騒がしくなった。

「柳鳳たちが来たんだな。元気ある声してるから怪我もしてないみたいでよかった」

「爛様! 謝砂兄さんいますか?」

「柳鳳お帰り。お腹すいてるだろうしみんなお風呂に入ってご飯を食べな。この宿のご飯はとっても美味しい」

「謝砂兄さんどうかしたんですか?」

 不審そうな目を向けられた。

「収穫なしで後ろめたいんですね」

「収穫はあった。爛が雉を狩った」

「雉ですか? まだ残ってますよね?」

 柳鳳はバタバタと厨房に確かめに行く。

 机と向き合って座り短刀でシャリシャリと果物の皮をむいていた爛が立ち上がった。

「できた。謝砂食べたかったんだろう」

 受け取った皿の上には林檎の白鳥と柿の薔薇が盛りつけられていた。

「見事な飾り切りだな。食べるのがもったいない」

「暇つぶしだよ。甘くておいしいから食べて」

 爛は謝砂の口に林檎を加えさせた。

 確かに林檎も甘くて止まらず白鳥の羽を一枚ずつ手を付けた。



 謝砂と爛は食べ終わったころに柳鳳と桃展、桃常を呼んで村の様子と丁家の公子の聞いた。

 爛は話を聞いたあとも柳鳳を残らせさらに詳しく話をしていた。

「隣の部屋に丁家の公子がいますので話を聞いてください」

「連れてきたのはいいんだけど成りすましとかではない?」

「大丈夫ですよ。安心してください」

 謝砂は不安で確認しないと近寄れない。

 柳鳳はもっていた水筒をそばに置いてあった茶器の椀にうつした。

「謝砂様が飲ませていた水で薄めた酒を飲ませましたが異変はありませんので一緒に連れてきました。鬼や虎鬼ではありません」

「うっすい酒水は飲ませたらいけないんじゃない? 瑛に飲ませて姜ちゃんにすごく怒られたんだ」

「心配しなくても無色透明で味もしません。水だし飲めるようにちゃんと調合してますよ。飲んでみますか?」

「遠慮する。せっかく美味しいものを食べたんだ」



 丁安は心身が衰弱していて部屋でゆっくりと休ませているという。

「柳鳳です。爛様と謝宗主を連れてきました」

 部屋の扉を開けたのは桃常だった。

 室には桃展の姿があった。卓にご飯が置かれていたから運んできたらしい。

 身なりを整えた丁安が立ち上がって胸の前で手を重ねていた。

「丁家の末息子の丁安がご挨拶をさせていただきます。このたびは手を貸していただきありがたく存じます」

「顔を上げてください。何があったかは柳鳳から聞きました。怪我は大丈夫ですか?」

 謝砂は丁安の肩に手を置いて顔を上げさせる。

「はい。私は擦り傷だけなんです。兄上たち師兄たちは虎鬼に大けがを負わされて死にました」

 丁安は自分の手首をぐっと強く握りしめて歯を噛みしめた。

「桃爛様と謝宗主お会いするのは初めてです。大仙家の公子とお会いするのも初めてで緊張してるです」

 視線に気づいて手を離したが手首にはくっきりとした指の痕が残り赤くなっている。

 丁安は誤魔化すように話を続けた。

「村にいてずっと竹藪に身を隠していましたが村を襲ったのは間違いなく虎鬼と虎の怪です。虎は猟師と取引のある丁家に恨みを持っていますから怨念があり私以外丁家は誰も生きてないでしょう」

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