↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/763

6章8

 バサバサと音が聞こえて謝砂は爛の背中をぐっと掴んでひっぱり立ち止まる。

 パキっと枝が折れた音に謝砂は耐えきれず叫んだ。

「うわぁぁ。あぁ。なんだ自分で踏んだのか」

 警戒するあまり自分の足音ですら心臓が跳ねる。

 鳥の鳴き声も気味が悪いように聞こえてくる。

「なあ爛。虎鬼はいない?」

 爛は呆れているのか立ち止まっても何も言わなかった。

「出てきてほしいのか?」

「違う、違うって。何を言い出すんだ。柿しか興味はないからな」

(口にしたら出てきそうで勇気を出して聞いたのに。なんてことを言うんだ)

 謝砂は怒って爛の足をこつんと軽く蹴って隣を歩いた。

 突然何かを感じたのか山から鳥が一斉に飛び立った。 

「ガウゥゥ!」

 獣が吠える声が山に響くが姿は見えない。

 謝砂は怖すぎて叫べない。耳を澄ませて方向を探す。

「足を引きずる音がする」

「虎鬼たちへの合図とか。私たちが山に入ったのが分かったとは思えないが、話せるなら今から食べるぞとか?」

「通訳してる場合じゃない。どこか逃げないと」

 爛はトンとそばにある背の高い木を叩いた。

「木の上にのぼって様子を見よう。虎だったら歩く前に虎鬼が先に来るはずだから」

「嫌だ。そのほっそい枝がポキッと折れたらどうするんだ」

「一人で登るから謝砂はその辺に立ってて。声を出さずに絶対叫ばないこと」

 爛は身軽に木の上に登っていき見えなくなった。

「爛、爛さん。爛殿。一人置いていかないでくれ」

 爛が登った木に向かって呼びかけるが返事がない。

 謝砂は怖くなり佩いていた剣を胸の前で握りしめる。

 木の枝に爛が隠れた爛を見つけようと後ろに下がっていくと背中にドンとぶつかり袖が何かに引っかかった。

(木に当たって引っかかったか。そうだよな歩ける道は幅狭い。少し横に避けて後ろに下がれば見え……。この腐ったような臭いがする。やばい!!)

 謝砂がぶつかったのは木じゃないことはなんとなく感じたが振り向く勇気がないが吐きそうな腐った臭いがした。

 謝砂が固まったままでいるとシュッと力強く矢が飛んできたが謝砂を避けて突き刺さる。

 爛が矢を放った矢は屍を射抜いて木に突き刺さった。

 シュッシュッと飛んでくる矢に目をぎゅと閉じ動かずにじっとしていた。

 狙った的に当たったようでどさっと倒れる音がする。

 弓を弾く音が止んでそっと目を開けて振り返ると予想した通り屍が木に刺さっていた。

 射られた屍は仰向けに倒れていた。

 謝砂は鼻をずるずるとすすり静かに泣いていた。

 爛が木から猫のように着地した。爛は謝砂を通り過ぎて進むと何かを拾った。

「空振りだな。粘っても虎妖は出てこない」

「なんで、なんで剣を飛ばしてくれないんだ」

「今日は狩りに来たといっただろう。ほら雉だ」

「そのために叫ぶのを禁止にしたのか? 雉は桃太郎のお供だろう」

 謝砂は手をぶるぶると震わせて雉を指差した。

「桃は持ってきてない。桃のお供にはできないがお腹すいているなら今焼いて食べるか」

 爛が拾った鳥は雉らしいが種類は分からない。

 矢は刺さったまま爛は雉の首を掴んでいる。

「もう狩りはやめてくれ。爛、置いて帰らないか。それを持って近づくなよ。近づけるなよ」

 謝砂は爛から三歩離れて歩く。

 近づいてこられても鞘の先で雉を遠ざけて距離を保つ。

「やっぱり置いて帰ろう」

「こんなに太っていて美味しいのに置いて帰らない。見てみろよ謝砂待ってくれ」

 爛に追いかけられ謝砂は死んだ雉のほうが虎鬼よりも怖くて逃げるように山を下りた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。