6章7
謝砂と爛は獣道のような場所から山へと入っていった。
まだ昼間だというのに背の高い木のせいであまり光が差し込まず薄暗い。
柿の木はいったいどこ生えているのか出会えない。
謝砂は熟れた実がついていないか探して見上げながら山のなかを歩いた。
「柿の木はどこにあるのか聞いておけばよかった。探せないし見つからない。全部鳥に食べられてないのかも」
「柿じゃなくて虎探しだ。単なる虎の仕業かもしれない」
「謝砂、足元に気を付けて」
「うん? うわぁ! なんだよこの罠」
謝砂の足元に木の枝や落ち葉で隠されているが人が仕掛けた罠だ。
鞘を箒の代わりに使って枝をよける。
「いたるところに罠を仕掛けて物騒だな。獲物の足を引っ掛けて捕らえる縄の罠にしてほしいよ。人が間違えて踏んだら危ない」
手を置いた木には三本の爪でえぐられた痕がつけられている。
「この道が虎の通り道で間違いない。猟師が罠を仕掛けていたようだ」
爛は隣の木を指差した。
「謝砂この木を見てみろ。山には罠が仕掛けられているがすべて矢が木に刺さっている」
謝砂はぐっと顔を木に近づけた。
「木が腐食してるから毒が塗られてるのかな。刺さってるのはみたいで血がついてる」
触りかけたが手を手首を爛がぱっと掴んだ。
「毒が塗られている。虎を殺せる毒だ」
「わっ! もっと前から教えておいてくれよ」
謝砂は手を慌ててひっこめて爛の後ろに下がる。
罠がどこに仕掛けられているのか分からず怖くなって爛にぴったりとくっついた。
人が歩いた後を歩くのが一番安全だ。
「爛やけに詳しいんだな。虎狩りってどういう狩りをするのか知ってるなら事前に教えてほしい」
爛は聞いてほしかったようで自慢気に笑った。
「もちろん。前に山で猟師と一緒に虎狩りをしたことがあるんだ。
桃家の管轄する山だったのだがそこでも虎の被害が大きかったんだ。
猟師は箭に毒を塗り石弓を虎の通り道に仕掛けてあるが弩という石弓が外されていたから私に聞いたんだ。
私は通り道の高い木に上って見張っていると虎鬼が弓の前に座って箭を器用に外した。
虎鬼は半里すすんだところで虎が通り過ぎた。頭がよくって後から来たんだ。
分かった私は木から降りて次の日同じところで虎鬼に仕掛けをはずさせてから猟師に仕掛けを張りなおしてもらい一緒に木に登り待っていた。
同じように虎は虎鬼が歩いた後の道を歩いていたから今度は箭が虎に当たったんだ。毒で倒れた。虎鬼の姿もいなくなり虎の害はなくなって今も大丈夫だ」
「爛は虎を狩ったことがあるんだな。今回も似たような虎の害なら虎が仲間を殺された恨みで猟師を殺したのかな」
「ちがう」
謝砂が聞いたことに即否定した。
「なんで言い切れる?」
「虎鬼は六,七歳の子供の姿をしていることが多い。虎が食いやすいように獲物の服を脱がせる役目なんだ。虎鬼というのは殺された虎に身代わりを差し出すことで魂を解放され自由となるが消えることが多い」
「身代わりを求めて殺させるというか獲物を差し出すのって恐ろしい」
謝砂はぶるっと身震いした。




