6章6
謝家に帰り呉健吾の話を伝えるとすぐに招功が伝符を帰家に飛ばした。
謝砂と爛、招功の三人は宗主の室で相談をした。
「謝砂様が直接行かれるのでしたら山には爛様と二人でも構いませんか?」
「それでいい。謝砂と二人で構わないから準備してくる」
爛が退席してから謝砂はすかさず招功に詰め寄った。
「いやいや。招功や姜ちゃんが無理でも柳鳳ぐらいは一緒に来てほしい」
「門弟を連れだっていくのは好きではないと言っていたじゃないですか。一人でふらっと消えるし」
(一人で行けって行けるわけがない。虎だぞ。すぐに食べられて死んでしまう)
「昔と今では話は違う。桃家の師弟たちの世話があるし手分けするのもいいだろう」
「柳鳳は姜が行かないなら行く気はないでしょうし、謝家の師弟も数人と桃家の若い師弟たちは虎鬼を調べさせるんですか?」
「そのつもりだったんだ。修練は実践を通して成長する」
(人数が多くないと困るんだ。守ってもらえる人数は多いほうがいいに決まってる)
「分かりました。星星殿もご一緒ですか? できれば危ない目に合わせないでください」
招功は星星が気になるようだ。ちらちらと机の上に置いてある仙筆を見ている。
「様子をみるだけだから仙筆の中で待機してもらうならいい?」
頷くのをためらってる招功に交渉条件を伝える。
「仙筆はおいていくよ。だからかわりに師弟も連れてく」
「分かりました。爛様と先に山へ行ってらっしゃいませ」
謝砂は交渉成功と扇子をパシッと手のひらに打った。
謝家が管理する帰家のため爛にしがみついて御剣した。
意識を保つのが限界になったころ帰家が管轄している近くの町にたどり着いて降りた。
町に入ると帰家が用意した馬車に乗る。帰家も仙家ではあるが屋敷は町から離れた山に近い。
馬車のなかに桃展、桃常たちの見慣れた顔がいた。
柳鳳がいなくなると喜んだ謝家の師弟たちによって柳鳳も追い出されて乗っていた。
「柳鳳はなぜ来た?」
なぜか爛は不機嫌そうに聞いた。人数が増えてることが気に入らないらしい。
「姜に頼まれたからですよ。虎鬼について説明してみろ。じゃ隣の桃展」
謝砂も師弟たちと同じように指名されたくなくて目を反らした。桃展が優秀なのがよく分かる。
「虎鬼は虎に喰われた人の魂で普通は身代わりを探し虎に食わす低級の鬼です。虎を狩ればすむので仙師が赴かずに猟師が虎狩りして駆除しています」
「つまり虎鬼は虎を殺せば消えるのが普通だから猟師が虎を殺してから狙われることはない」
柳鳳が補足で付け足し周辺で調べたことも話す。
「この町も噂は流れていました。寧山中の村なんですが、山の東北に虎の被害が大きく虎狩りを生業にする猟師が住んでいました。その猟師が殺されたんですが殺したのは虎ではなく妖虎です。そして虎に使役される虎鬼が村人を殺して帰家に助けを求めたという丁家まで襲いました」
「鬼とはいえ人をだまして虎に食べさせたりするだけで人を襲うほど強くはないはずです。僕たちも虎鬼が最初に現れた村を調べにいきます。爛様たちは?」
「山を調べる。あとで町の宿で合流する」
寧山の手前にある丁家の町で馬車から降りた。
だんだんと民家は少なく田畑がある農村だ。
山道と村に行く別れ道で別れて謝砂は爛と二人で歩いた。
謝砂は後ろを振り返っては見て立ち止まる。師弟たちの元気な声が恋しい。
爛に腕を霊弦でつながれてぐいっと引っ張られて歩かされる。
「師弟たちを柳鳳だけに任せていいのか? やっぱり一緒に村に行かないか?」
「昼に低級の鬼は出ないから村に行かせても安心だ。山に入っても虎が出ると言われてるだけだ。怖くないだろう」
「十分怖い。虎が出るっているだけで十分怖いよ。どうやって虎狩りをしてるんだ?」
「山に入ったら教えるよ。私も狩りができる。雉や兎、鹿も狩るのが上手いんだ」
(だから弓を持ってきているのか。おかしいと思ったんだ。柳鳳が弓を使うのは見たけど爛は剣しか使わないと思い込んでた)
「嫌だ。全部怖いって野生動物だよ。市場や食事できるところで食べるのがいい」
「川があれば魚も食べるか?」
「欲しくないからさっといって帰ろう。虎狩りじゃなく柿狩りにきたんだ」
謝砂はとぼとぼと山道を歩いた。




