6章2
荷物を置きに戻ると柳鳳が待っていた。
「姜ちゃんに置いてかれたのか?」
「違います。桃宗主がお呼びです」
「そっか。爛、買ってきた枇杷酒を土産にしていっておいでよ。柳鳳も好きなのを持っていて師弟たちと飲めばいい。酒じゃないシロップだからえっと果実蜜? を買ったんだ」
謝砂は枇杷酒の入った酒壺を爛に渡し柳鳳は自分で匂いを嗅ぎ数個選んでいく。
「そうだった。謝砂兄さんもご一緒に呼ばれていますよ」
「どこに行けばいい?」
「桃家の祠堂です」
「桃家じゃない部外者を祠堂に入れたらいけないと思うから待ってるよ」
(祠堂って仏壇とか墓みたいなものじゃんか。一人じゃないとはいえ怖いんだけど口に出して言ったら罰当たりとか言われそうだ)
「謝砂は部外者ではないから気にしなくていい」
「桃威宗主が呼んでるからいいんですよ。妖丹を引き渡すだけのでさっさと行ってください」
爛に言われ腕を掴まれて柳鳳に背中を押され挟まれるように祠堂へと歩く。
「さきほど桃家の管理を桃威宗主、傘下を桃素貞殿が取り仕切るような形になりました」
「なんで数時間しかたってない間でどうなったの?」
「時間? 数刻のうちですが詳しくは知りません。桃家の公子でもないのに教えてもらえませんよ」
案内をして柳鳳とは桃樹園の入口で別れた。祠堂は桃樹園の地下に作られた空間にあった。
謝砂は怖くてじっと爛の後ろについて歩く。
「桃威宗主、桃爛と謝砂が入ります」
扉がギィーと音を立てて開いた。中は思っていたよりも明るい。
「だれもいないし叔父でいいよ。爛、謝砂殿憶えているか?」
「では叔父上。どうしたんですか? 人払いしてお一人ですね」
「理理の前では後悔したと思われて言えないから先祖の許しを得ようと祠堂に来たんだ」
「許しですか?」
爛が尋ねると桃威は苦笑した。
「ここで桃家の宗主になれと言われたときにはびっくりした。しかし理理を妻にすると決め腹をくくり宗主の座に就いた。そして仙家を取りまとめる立場も引き継いだ。素貞殿は従兄だ。父君は柳家だが実力もあることで母である桃の名を継ぐことになった。立場は私と変わらない。理理との婚約で謝宗主の後ろ盾もあり爛が後押してくれて就くことができた当主の座だ。認めてない者が素貞殿を当主にと推している。謝砂殿、心配しないでくれ。私は理理を必ず守る」
(真剣な目をしてるからなんか約束してたんだろうな。知らないだけで複雑な家庭事情ってどこの家でもあるんだな)
「集めた妖丹は邪封袋に入っている。桃家の妖丹は素貞殿が受け持つことになった」
「分かりました。受け取ります」
受け取った巾着の中はビー玉がいっぱい入っているようだった。
これが全部妖怪や悪鬼だと思うと怖いが見えなければいい。
「爛は桃家からしばらく離れた方がいい。修練のために師弟も数人連れて行ってくれ」
「分かりました。では先に行きます」
「桃威殿、桃樹園の東屋に酒を置いておきます。甘い枇杷酒です」
謝砂は抱えている酒壺を見せて桃威に笑いかけた。
「気遣いに感謝する。いただくよ。謝砂殿、爛のことをよろしく頼む」
ブンブンと巾着を振り回して祠堂から出ていく。桃威は謝砂たちが出ていくまで祠堂の中にいた。
塵家は宴の後すぐに大勢の門弟を引連れて帰った。
妖丹が入った邪封袋の口を開け鼎にじゃらじゃらと入れられる。
塵千は門弟を宴の席を設け妖丹が入った法器の鼎に少量ずつ生気を吸わせた魂霊丹を作る。
妖丹が入った法器の鼎に生気を吸わせた。
傷がついた魂に呪術で邪気で傷をつけ僅かな傷から生気を吸う。
鼎を祠堂に運ぶと召喚術の陣を発動させ、塵辰と有眉を呼ぶ。
「気を失い目がさめたときには記憶には残らない。有眉、門弟に霊薬を飲ませろ」
有眉を下がらせてから残った塵辰が塵千に聞いた。
「集めた妖丹はどうされるのですか?」
「謝家に礼はすでに済ませたのにまた手を出してはないだろうな。手に入れた鼈宝の目で見通したがあの鬼になった傀儡の魂を修復したのは本当だ。謝砂殿だけは糸が幾重にも巣に包まれているように霞んで見ることができない。以前の謝砂殿の霊力ではないなら謝家は後回しだ」
「分かりました。塵家に集まった妖丹を妖獣に運ばせます」
「謝家の仙府で試したが妖丹の力で蜘精が鬼を捕らえて操れるほどに力が増したようだ。目的もない低俗の屍や妖獣にくれてやるほうがいい。虎の妖獣が見えた。まだ低級で肉しか食べれないがどうなるだろうか」
含み笑いを顔に残し、目に赤い光を放つ。陣を描いて虎の妖獣を召喚し妖丹を食べさせ消した。




