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6章1

「爛がいる」

 謝砂が門からでると麓の廟前に爛の姿が見え急いで駆け寄った。

「瑛はどこ?」

 近づいていきながら瑛の姿を探した。一刻もはやく瑛に会って癒されたかった。

「しゃしゃ! 瑛はここにいます」

 爛に抱っこされていたが地面に足を降ろすと瑛は謝砂の足に引っ付いた。

「瑛!」

 ふわっと脇を持ち瑛を高く持ちあげた。

 ぎゅっと抱きしめるとマイナスイオンでも出てるんじゃないかというぐらい心が癒される。

「待っていてくれてありがとう」

 謝砂は瑛をゆっくりと下ろして手をつないだ。

「なあ爛、門から出ると廟の前に通じてたんだね。知らなかった」

「謝砂はどこから入ったんだ?」

「えっと廊下から入り組んでて覚えてない」

「謝砂が他家と顔を合わせないように案内しろと言っていたからだ。帳宗主と一緒で安心した」

「帳家って大世家なの?」

「そうだ。中央が桃家、西に仙府を持つのが帳家だ。謝家と同じ大世家だ。仙噐の帳家ともいう」

「爛殿も迎えにきていたんですね」

 爛が説明しているとひょっこりと帳雲児と帳荻(ちょうてき)が顔を出した。

「父上はどこに?」

 謝砂が後ろを振り返るとはぁはぁと追いかけてきた帳宗主が後ろにいた。

「帳宗主先に行ってしまってすみません」

「平気ですよ」

「思っていたよりも謝砂早かったんだな。帳宗主お待たせしました」

「いいんですよ。礼ですから。それよりもさっき塵――」

 謝砂は言いかけた帳宗主に首を横に振って意思を伝える。

(塵家のことは後でいい。べつに言いがかりだと怒るようなことじゃないし争いはなるべく避けたい。巻き込まれるのも怖いし)

「帳宗主どうしました?」

 爛に言いかけたことを聞かれる前に謝砂は話題を変えた。

「爛あとでいい。祭なんだろ見て歩きたいんだ。さっきから美味しい匂いがしてきて食べ歩きたい」

 謝砂は瑛の手を引き、帳雲児と帳荻も巻き込んで参道へと引っ張っていく。

 謝砂が離れてから爛は帳宗主を見た。

「爛様、塵家が傘下から脱退しました。そしてまだ塵辰殿が謝砂殿に……」

「謝砂が気にしなければ何も言いません」

「そうですか。爛殿あの石は預かったままでも構いませんか? 加工するのに家で籠って納得する出来に仕上げたい」

「出来たら知らせをお願いします。あと、謝砂が帳荻公子の魂に邪気を抜いて修復し霊力が補われていることに気づいたのでしょう。あの子も修復された魂を持っています。帰ってから光霊石で試してください」

 爛は謝砂を追いかけると謝砂は瑛をつれて同じように目をキラキラとさせて楽しそうに歩いていた。



 連日続いているようだが最終日ともなり盛大だった。

 廟に続く参道に軒を連ねて両脇にぎっしりと揃っている。

 瑛は帳荻と雲児に遊んでもらっていて機嫌がいいようで後ろから見守っていた。

「せっかく来てるんだし帰る前にどしても見てまわりたかったんだ」

「訪れるのは仙家の者だけじゃないからだんだんと店が増えていく。最終日になる今日が一番だ」

 謝砂はすべてが目新しい。フルーツ飴のような串に刺さったものや薄べったいお好み焼きのようなもの、お饅頭や肉まん、干した果物や豆菓子、布や簪などの装飾品まで衣食が揃っている。

 人がひっきりなしで人気の出店があった。覗くと茶の葉を扱っている店のようで会計をもう一人の店員に任せて店主が一人出てきた。

「仙師のお方。覚えていらっしゃいますか? 湧水を買っていただいた店です」

 見覚えがあると思ったら湧水を売っていた茶の葉屋の主人だった。

「ああ! 水を売ってたお茶の葉屋さんだよね。覚えてるよ」

「今日も湧き水とお茶の葉を持ってきたのでどうぞ受け取ってください。塵家が湧水と黒豆茶を大量に注文してくれたんですよ。塵有眉殿から祠を清めたのにうちの黒豆を使っていただいたと教えていただき、今では大流行りしています。湧水も茶葉ももらってください」

 謝砂がもらった黒豆茶の袋はずっしりとした大袋で湧水の小瓶も手に持たされる。

「元気そうでなりより。ずいぶんと助けられた。ありがとう。また行くことがあれば買いにいくよ」

 謝砂は受け取った荷物を爛に渡してぶらぶらと歩くと薬酒の店があり足を止めた。

「ねえ、お兄さん梅酒とかある?」

「ありますよ。果実酒や薬種も揃ってますよ。公子殿は仙師のお方ですね」

 酒壺の前に漬ける前の果物やクコの実が置いてあった。

「甘い酒がいいな。飲みやすくて酒の味がしないやつ」

「桃酒も人気ですよ。梅も飲み頃ですが枇杷酒もいいですよ」

「すっごく悩む。レモン酒もあるのか。蜜柑酒までそろってる」

 蓋をあけてもらい匂いを嗅ぐとレモンの甘酸っぱい香りがした。ハチミツも入っているのか黄金色でややトロッとしていた。

「酒は酒だろう。好きなのを選べばいい」

「果実酒は酒ではなく薬だ」

「お若いのに分かってますね。ぜひ店にも来てくださいね。持ってきてない酒もあるんですよ」

「場所は近いの?」

「帳家の仙府です。西なので桃家からは離れていますが各地の美味しい果実を求めて買い付けにまわてますのでまたお会いするかもしれません。そのときには酒は薬という薬果酒(やっかしゅ)を覚えておいてください」

 爛にも持ってもらい一種類ずつ買い込んだ。

 半分も進んでいないのに荷物で溢れた。

「食べ歩くのには荷物が多いな。一旦荷物を置いても一度こよう」

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