29話塵辰
退室する門の前にずらっと塵家の門弟が待ち構えていた。
門弟のなかにクリーム色の煌めく外衣を着た公子が二人いた。
一人は塵昌だ。新たに門弟と傘下に入る小仙家の人たちの相手をしている。
もう一人の公子は大山家の宗主だけに挨拶していたのはどこなく桃家の家宴で見た顔だった。
佩いた剣の鞘は玉が埋め込まれ装飾が施された宝剣だ。豪華に飾り金持ちのお坊ちゃん。塵昌の大人しい雰囲気とは正反対で自信に満ち溢れている。
「あれは誰?」
「塵辰公子だな。謝宗主は成婚のときに理理殿の祝いに正式に招かれた嶺家の門弟を助けましたよね。桃家の客人でしたが憶えていますよ。塵辰公子は小仙家を見下してますから塵昌公子が相手を押し付けられているのでしょう」
塵辰というのは遠目にみると貴公子だが瞳をぎらつかせている苦手なタイプだ。
「この間も塵宗主の代わりとして家宴に出席していたでしょう。挨拶といいながら土産を世家に渡してます」
(要するにお坊ちゃんでプライドも高いんだな。恥を欠かされたとか根に持たれてるってことか。関わらないのが一番だ)
「門弟を招いても元から金持ちですから自分たちは大世家と同格だと宣言したんですね」
謝砂は絡まれたくはないと下を向いて歩いたがすっと足が大きく一歩出されて通り道を塞がれた。
帳宗主が庇うようにして謝砂の前に出て立つ。
「謝砂宗主はもう退室するのですね。塵宗主に祝いの言葉を述べられてもよろしいかと」
「これは塵辰公子。謝家と帳家は他家に口を挟めない立場なのでご理解ください。聡明な塵辰公子ならば分かるはず。今は挨拶は控えさせてもらいます」
帳宗主が黙ったままの謝砂に代わって挨拶を交わす。
「帳宗主には塵家から修宴が終ってからご挨拶に伺いさせてもらいます。ですが謝宗主は桃家と親しいので桃家の傘下だと思っていました」
「塵辰公子、謝家に口がすぎます。謝砂殿は帳家の恩人だ。代わりに言わせてもらう」
帳宗主は低く凄みのある声でいさめると塵辰の顔色が変わった。
「いくら謝理理殿が桃威殿に嫁いだとはいえ謝家は傘下ではない。大世家を軽んじるのか?」
「恩人とはしらず失礼しました。最近は特に桃爛殿や師弟とも親しい様子でしたので間違えたんです。傘下である小世家を来賓として招く家だったので勘違いをし、謝宗主お許しください」
謝るのにふてぶてしい態度の塵辰に謝砂は自分が怒ることはないとわずかに会釈して立ち去ろうとした。
「門弟から聞きましたよ。謝宗主は蜘妖の巣で妖獣や鬼を捕らえ門弟と桃家の師弟に倒させていたそうですね。違反ではなのですが邪道ですね」
去り際にもう一言付け足されるが謝砂は帳宗主に押されるがまま追い出される。
「息子からは謝宗主は修復術で鬼になった魂を修復したとも聞きました。それともまだ話すことがあると? 廟がある頂上に鬼が現れることはないので傀儡だったともいえますな。追及されますか?」
(傀儡っだったこと話しちゃっていいのか?)
帳宗主は塵辰を黙らせ引き留められることなく門を出た。




