29話塵家の脱退
「皆のご尽力に感謝します。桃家に納められた仙噐や法器など配りました。今回は謝家と桃家、次いで塵家が妖丹を持った妖獣や悪鬼を駆除した個人の数も多い。集めた妖丹は邪気を帯びているため払わなければならないので上位三家が引き受ける」
「謝家は何がいい?」
「えっと招功殿にお尋ねください」
謝砂は叫んで答えた。
謝砂は突然聞かれて口に入れた松茸を呑み込んでしまった。
味わいたかったのに勿体ないという後悔で泣きそうになりぐっと目に力がはいる。顔を上げるとすぐさま集まった視線が避けられた。
「塵家は何を?」
「塵家として仙府をいただきます。そしてこの場で塵家は桃家の傘下を脱退し一世家となることを宣言します」
突然の宣言に騒然とする。
塵家に招かれすでに門弟になっている者が多いようで小仙家の宗主は嬉々する者が多い。
桃威は黙ったままだったが桃素貞が玉佩と一枚の紙を渡した。
「傘下から脱退される塵家荘の仙府は塵仙府として新たな玉佩と桃家との盟約証をお持ちいたしました。返却することで脱退さたとみなすのでこれより塵家の仙府です。一つの世家として桃素貞が塵家宗主にご挨拶を」
謝砂より中央にいた桃家の年長者らしい人は桃素貞の行動に耐えかねて拳を振るわせドンと卓を叩きつけ立ち上がる。
「桃素貞どういうつもりなんだ? 桃威宗主は何も言っていないだろう」
言い合っていた年長者のこの一言で桃威は名だけの宗主になった。
桃素貞の口元がかすかに笑ってみえた。
「――私が命じていたことです。塵宗主これからは対等な立場として互いに修仙として民のためにぜひ尽力を。お祝いもうしあげます」
桃威は塵宗主に向かって胸の前で手を合わせて挨拶をした。
「このたび塵家は才能溢れるたくさんの修仙の方を門弟としてお招きすることにあたり塵家は桃家の傘下ではなく大世家に名を連ねることを集まった各仙世家の宗主たちにご挨拶をいたします」
上座に立ち塵宗主は挨拶を述べているようだが謝砂の席からは遠くて人の頭で姿が見えない。
「まずは仙府を返していただきます。今まで塵家が納めていた仙府のことです。すぐにとはいいません。私たちも準備があるので。小仙家の方はのちに塵家の傘下にさえ入ればいいということです」
「くっ。塵家は一度自らの術で家が滅びかけたのを忘れたのか。再建するのに桃家が尽力した恩を仇で返すというのだな。修宴で門弟を招いた理由は脱退のためか」
謝砂は話の論点が見えてこず隣に座っていた帳宗主を手招いた。
「どういう話なの?」
「謝砂殿は存じなくて当然です。塵家は滅びかけたんですよ。陣に長けている家で塵千殿の一昔前まで、私の祖父の代では大仙家の一つに数えられて仙府も単独だったんです」
「滅んだってなんで?」
謝砂に聞かれて肩をよせた。そして周囲を警戒し小さく耳元でひそひそと話す。
「塵家は陣で捕らえた悪鬼の妖力を得ようとしたのですが怨念が強く下ろした陣眼が破壊されその時の当主が呪詛を受けたんです。塵家は陣に長けているんですが塵家は妖獣を陣で召喚し契約した妖獣で悪鬼や妖怪と妖獣と戦わせ呪術を発動させます。魂を修復し妖気や邪気を祓う謝家とは火と水の存在。陣をつかって召喚した妖獣に呪詛をかけて妖魂を散らすのです」
(呪詛て陣で発動させるのか)
「桃家が傘下から脱退されたくないのはなぜ? 傘下になってない家も多いだろうし脱退して問題があるようには思えない」
「傘下のことは各家で決まりがあって複雑で一概には言えません。ですが私が思うに桃家の年長者は龍神が生まれたという祠がある塵家の仙府を返したくないということではないでしょうか」
「あの祠のことか。龍神だっていうけど元は妖龍がいたんだぞ」
「龍神の加護がある霊泉も桃仙府だといいたいとか。私にも昔の複雑な話は家に帰って聞かないと分かりません。桃家と塵家、謝家と複雑なんですね。帳家の面倒ごとなどは軽いものです」
塵宗主は桃威に挨拶を返し真っすぐにぐっと顔をあげた。
「これまで通り妖獣や鬼を駆除し仙家の責務は忘れてません。門弟を集めたのも実力のある修仙師の方に力になってもらうだけ。招いていけないことでもあるのですか。桃家の指図は受けません」
謝砂が抜けようとする前に塵家宗主と門弟、傘下になる小仙家の当主たちが宴から出ていきお開きとなった。
「私たちも退席いたしましょう。さっさと退席してここから出ていかないと帳家と謝家も桃家と同じに思われますから」
帳宗主に急かされ謝砂は退席した。
またほとんど食べれずせめてと一口と運ばれていた酒を飲みほした。




