29話三度目の花火
「屍は剣を持っているから修仙?」
「修仙は霊力を持っているから魂に妖気が邪気が入らない限り鬼にはならず魂は輪廻に運ばれる」
「屍だったら魂が残ってるかな」
邪気が消え屍はすでに燃えていたのか消えて行くが魂は呪符がついたまま残っていた。
謝砂はそっと側にしゃがんで手を伸ばした。
魂は傷だらけでそっと触れないと散ってしまいそうだ。
その傷は呪符のような崩し字に見えたがあまりにも傷だらけでさっぱり読めない。
「気になるのか? はりついた呪符は魂の中にある妖気に燃えて魂も消える」
「妖気を抜いて魂だけを修復する。彼らは人を襲っていないならまだ救えるかもしれないだろう。この山では弔えないと言っていただろう」
謝砂が言うと爛は帳荻と帳雲児を一緒に鞘でコロコロと魂を謝砂の前に一箇所に集めた。
集めると八個あり爛も謝砂の隣にしゃがんだ。
「生きていても死んでいても魂を修復するのか。謝砂らしいな」
「ただ怖がりなだけだ。本当は一刻もはやく下山したくて仕方がないから魂を修復が出来たらする。無理ならそのままだ」
謝砂は呪符の上から魂に直接霊力を注ぐとピシっと音がした。
内側から癒えるように修復されていき、呪符に妖気が吸われ燃えて最後の亀裂が塞がった。
「ほら修復はできた。桃展と桃常に教えてもらったんだけど筆でもできるかも」
残った一つの魂は亀裂が薄かった。筆を亀裂に滑らせていると模様のなかに糸が混じって出た。
(あっ! しまった。糸が出てきた)
油断して蛛糸をシュルっと魂の亀裂入り妖気を包み意識が引きずられる。
反射的に金縛りのようなものを解こうと肩と首をグイっと無理やり動かすが直接流れてくる映像は見えてしまう。目を開けているのに白昼夢を見ているようだ。
「謝砂何か見えるのか?」
亀裂が修復できたのかプツンっと糸が途切れた。
「これは鬼じゃなくて元は傀儡だと思う。白い眼をして驍家荘であったのと見た目が同じだ。傀儡が見た映像だと思う。この池の淵に二人の男の姿とでっかい岩じゃなくて亀っぽいんだけど牙が口の中に生えてるし目つきは恐ろしい。陣が光ると雷が落ちてその傀儡たちと大きな亀が燃えたから焦げた匂いがしてるんだ」
「謝砂が見たことと悵荻公子が見たことは一致してるだろ?」
「はい。謝宗主は修復だけでなく残留思念も見える霊力の高さに圧倒されました。ただ違うのは亀でなく鼈の妖獣だと思うのですが魂が認識していないのですね」
じっと爛に見られるが亀と鼈の区別がつくはずがない。
帳荻と雲児は謝砂の後ろから覗き込んで修復された魂を眺めていた。
「周りのは塵家の門弟の枹を纏ってる服も黒焦げだし証明はできないがこの人は女だと思う。かなり周囲を見ているから」
(女性だというのは勘だが当たってるはずだ。見ている視点が男じゃない。でも自分と同じ怖がりっていうのはあるかもしれないけど傀儡なら違うはずだ)
「女人が桃岳泰山に登山できないのは陰気に呑み込まれやすいと言われているからだ。すでに傀儡だったんだ」
「魂はどうすればいい?」
「桃岳泰山君が裁いて無垢の魂は蓮の花にのせてくれるよ」
謝砂は手を合わせると中身がない魂は軽くて風に運ばれ池の水面に浮かんだ。
「さてと下山しよう。痛っ!」
謝砂はふくらはぎが痺れてきてふらっと立ち上がると頭に帳荻の剣が頭にゴツンと当たる。
スイッチが入ったように突然ドクンドクンと血が波を打つような痛みが頭から襲われる。
ヒューというあとにドンと上がった花火が近かった。
「――三度目だ。やっと終わった」
「謝宗主! 大丈夫ですか!」
「謝砂!」
爛が呼ぶ声が遠ざかるように聞こえた。
謝砂は頭痛と恐怖で張りつめていた糸が緩むとそのまま目を瞑り気を失った。




