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29話帳荻

「私たちでは倒せません。謝宗主お願いします。術使いで名高い謝宗主しか若様を助けられません」

「言われて助けられるわけでは。爛!」

 謝砂にぐっと詰め寄ってくる。手には弓、矢じりを謝砂に向けてる。

「帳家師弟である帳雲児(ちょううんじ)と言います。帳荻(ちょうてき)様をたすけてください」

 雲時の目には涙をにじませていて十代か二十代前半に見える。

 謝砂が爛の背中まで後ろまで下がると爛の腕で近づかないように防いでくれた。

 その切実な目に圧倒されて断り切れず筆をだして握った。

(廟にでも避難して戦うのを避けようとしたのにこの子のほうが怖い。手に持ってる矢先で刺されそうだ)

 悵荻は剣で防いでいたが鬼に噛みつかれそうになっていた。

 爛が剣を鞘から飛び出させ腕を斬り落とすと雲児は謝砂から離れて帳荻に駆け寄った。

 爛は剣を操りその他にも修仙を襲っている鬼を斬っていく。

「若様!」

 雲児は悵荻が池の中に倒れる前に抱え謝砂の元へと逃げてくる。

 鬼は腕を切り落とされても口から邪気を浴びせようと雲児の後を追いかけてきた。

「ちょ、ちょっと。こっちに向かってきてる」

 鬼は目が白く傀儡に見えた。

 燃えていても目はあるようで剣と飛ばした爛に顔を向ける。

 鬼は煙を帯びているだけで実体はあるようだ。

「屍が鬼になったのなら邪鬼ぐらいか。屍が邪気を帯びるのは怨念があるときなんだが無のようだ」

 屍の鬼は剣を握りしめたままで襲いかかる剣を爛の剣が受け止めた。

 爛は漂ってきた黒い煙の陰気を手のひらで一撃を放ち吹き飛ばした。

 謝砂は持ってきていた呪符を便乗して飛ばした。

 呪符は鬼につくと動きを封じて爛に陰気を飛ばされて屍へと戻った。

「謝砂持ってたのか?」

 爛は腕を引くと掴んでいた謝砂が前に出た。

 謝砂は自慢げに少しシワがよった呪符を爛に見せた。

「気づいたか? この鎮圧符は招功殿からもらってきたんだけど、さっきのは休憩するのに木に貼っていた使いまわしだ。勿体なくって」

「呪符の使いまわしは効かないのだけど。謝砂だと普通の威力はあるみたいだな」

「なんだって! 使いまわしできないの? もっと早く教えてよ」

「謝砂のは効いてるな。どうしてもない時に呪符を使いまわすときは裏に書きなおす。呪符ないときは血で書くんだ」

「筆で呪符を書き直す。使いまわしに信用持てないだろう」

 筆に霊力を込め呪符の四角いイメージで封の字を宙に書いた呪符は光って邪鬼に飛んでいく。

 池にいた鬼たちはすべて屍へと戻った。

 修仙たちも怪我はしているが大事にはなっていない。

「けがをして歩けない方は背負って先に下山します。手当がまだの方は桃家の公子たちのところへ行ってください。手当を済ませたら私たち謝家が付き添うので一緒に下山しましょう」

 すでに招功たちが到着して手当をしている。

 雲児も手当を済ませたが帳荻だけが目を覚まさずにいた。

 爛は帳荻の手首を脈を図るように調べた。

「謝宗主助けていただき感謝します。しかし目が覚まさないのはなぜでしょうか?」

「魂に邪気が入ってる。邪気を抜くには祓うか直接魂を修復しないと目が覚めない」

「悵家ではいつになったら修復できるかわかりません。邪気を祓うにしても覚まさないかも」

 雲児はうつむいて青白くなった帳荻を抱えた手が震えている。

 帳荻も整った青年だった。名仙家の若様なのだろう。

「謝砂今できるか? すぐ修復できれば邪気は霊力で中和できる」

 謝砂は悵雲児が恐怖のなかで泣くのを必死に堪えているのが自分と重なった。

 謝砂は雲児のポンポンと頭を撫ですっと爛と場所を入れ替わる。

「分かった。生きてるし怖くないし大丈夫」

「自分に言い聞かせてるのか?」

「爛、聞かなくても分かってるだろ。わざと言ってるのは分かってるんだからな。黙ってて」

 すぅとと深呼吸して目を瞑り帳荻(ちょうてき)の額に触れた。

 そのまま霊力を指先から流すと顔に生気が戻ってきたように温かみを感じて流すのをやめた。

「うっ。カハッ!」

 目が覚めたのか咳込み毒黒くなった血を吐いた。

「悵荻様、雲児です。ああ、目が覚めてよかったです。謝宗主と桃爛様が助けてくれました」

 帳荻は雲児に支えられて身を起こすと謝砂の袖をぐっと握った。

「礼を述べるよりも先に伝えることがあります。鼈の妖獣がいるかもしれないと大物を狙って山頂まで来ました。すでに塵家が池にいたので身を隠したんです。巻き込まれたくなくて。すると鼈怪に天雷が落ちたんです。そのあと門弟がいて生きてるかもと助けにきたら意識はすでになくて焼死した屍が桃泰山の妖気で鬼へとなったように見えたんです。今しか塵家のことは話せません」

「塵家って塵昌達は先に下山したけど門弟がいたのか」

「塵宗主の姿は?」

「雷がまぶしくて見えませんでした。それと花火に気を取られていたので。駆け付けたときには塵宗主はいません」

「分かった。棗をあげるよ。二人分の残りはあるはずだから食べな」

 謝砂は怯えたような帳荻に棗の入った巾着を受け取らせた。

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