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28 開拓の状況の色々

火星は諸勢力が混住している事もあって地球に次いで人口が多い惑星となっていた。

日本の始祖勢力は既に火星から太陽系外に宇宙開拓の拠点を移していたが、火星は地球化が一番進んでいてその成果の利用価値が高く、また諸勢力が混在しているため情報の集積地としても重要度は高かった。

地球は如何なっているのかと言うと未だにシナは覇権争いの真っ最中、エルサレムでは聖地の奪い合いは収まっていないし、東アメリカは合衆国の再興を掲げて北アメリカ大陸で活動していた。

月での東アメリカと日本の戦闘は随分と減ったが止みはしなかった。




西ヨーロッパに残った人々のうち東アメリカ人の様に振舞い日本を非難する人は僅かだった。

以前、火星に送り込まれた幼体の件で対応した時も日本人に詰め寄る人の数が他の勢力に比して圧倒的に少なかった。


「ヨーロッパ人達とは子供達の件ではあまり揉めずに済んでいるな」


「彼等は子供達の行方不明の切欠が戦乱にある事を認めていますからね」


「でもアラスカ人の時は火星に子供が居ないのがこちらの所為だと言わんばかりの親も多かったんだよ」


「ヨーロッパでは戦乱時の混乱で生き別れた親子が多くてその死亡の確認も取れていたりするんです。生き延びているだけでも幸運と捉える人が多いですね」


ヨーロッパ人が日本人と子供達の件であまり揉めていないのは西ヨーロッパが発端となった戦乱が切欠で植物が人の幼体を火星に送り込んだと認めている事と戦乱時に行方知れずになった子供達の数に比して火星に居るその対象者が圧倒的に少ない事にあった。

ヨーロッパでは戦乱時の混乱の中で生き別れとなった親子が多くいて火星で子供が保護されていたならその方がましな状況であったのだ。

ヨーロッパでは火星で子供が生きていても親の方が既に死んでいる可能性もかなり高い状況だった。

それでヨーロッパには日本が子供達を火星で保護している事が強調されて伝わっていた。

これは今の西ヨーロッパを支配する始祖達が戦争を始めた当事者では無い事も関係が有る。

戦争を始めた当事者の始祖達は未だにエルサレムで聖地争いしており、戦乱の結果の全てを彼等の責任としてヨーロッパの再編に全力を注いでいたのだ。

今の西ヨーロッパを支配する始祖達は西ヨーロッパを東アメリカの様にする気は更々無かった。

それで東アメリカ人の様に反応する者はほんの僅かだった訳だ。


「子供達の件にはあまり触れたくはない様でもあるな」


「彼等は全ての責任が未だにエルサレムで揉めているヨーロッパ出身の原理主義者の始祖達にあるとしていますからね。それに戦乱を止める事の出来なかった負い目も有るのでしょう」


「揉める事が少なくて親子鑑定もスムーズに進んで良かったよ。オーストラリアやニュージーランドとは少し揉めているからな」


「オセアニアは戦乱とは関係の無い地域ですからね。とばっちりを受けた感じですから不満をぶつけたくもなるでしょう」


「東アメリカみたいにならないだけマシだな。良しとするしかないか」


その頃、オセアニアの始祖勢力とは少し子供達の件で揉めていた。

戦乱を逃れたヨーロッパからの移民達が当初は戦乱が子供達の行方不明の要因とは認めずに日本に責任を押し付け様としたから揉めたのだ。

「日本の所為だ」と糾弾していた始祖勢力がエルサレムの聖地争いに参加してオーストラリアを去ってからは下火とはなったけど未だに燻っている。




ヨーロッパの始祖勢力が月と火星に来訪したのは西ヨーロッパの再編が進みその政情が落ち着いてきた宇宙開拓条約が締結された年だった。

火星は地球化が進んで地表には点々と湖や森林が存在していたし無主地に見える土地にも地下施設が点在していて人が生活していた。

火星に拠点を持つ始祖勢力は皆惑星開拓を進めていて一つ以上の惑星を既に勢力圏としていた。

そして惑星開拓を進めて宇宙へと勢力圏を拡げた始祖勢力はその影響で地球での勢力圏も安定していた。

まず鉱物資源は開拓惑星からいくらでも供給可能となるし、需要も開拓が続き人口が増え続ける限り途切れる事は無くなる。

惑星開拓で培った諸々の技術は応用が可能で惑星開拓技術を習得した勢力は地球でもその技術を活用していた。

特に寒冷地に居住する人達には有用で彼等は地下開拓を進めて過酷な環境から身を守る様になった。

惑星の開拓作業には魔法は必須なので必然的に魔法の鍛錬となる為、魔法使いの能力は向上した。

魔法使いの能力の向上は国防力の向上に繋がり、国防力の向上は勢力圏の安定に繋がった。

火星で始めた開拓は結果として彼等の地球での勢力圏の強化にも繋がっていた。


この頃にはインド文化圏やイスラム文化圏の始祖勢力の一部も既に惑星開拓に乗り出していたからヨーロッパの始祖勢力は完全に出遅れた感じだった。

ヨーロッパ人は火星に来るまではそんな事になっているとは思ってもいなかったから、火星で他の勢力の宇宙開拓の実情を知った時の出遅れた感が半端ではなかった。

まあ、火星は地表の緑化が進んだとは言えまだ未開拓地域も充分にあるから受け入れは可能だし、開拓する惑星も銀河にはまだ充分にあるからヨーロッパ諸勢力の出遅れは充分に挽回が可能だった。

そしてこれから惑星開拓が進み勢力圏が拡がると今迄の経験からすると地球での勢力圏も安定する。


そんな感じで宇宙に勢力圏を拡げた勢力と地球に留まっている勢力との力の差は確実に開いて行く訳だな。

シナで覇権争いを続ける連中やエルサレムで聖地争いをする連中が知らない内に。




オセアニアの始祖勢力が火星に来訪したのはヨーロッパ人の来訪の更に一年後だ。

ヨーロッパの始祖勢力が宇宙での勢力圏の拡大の遅れを少しでも挽回するために引き込んだ形だ。

オセアニアの始祖勢力は戦乱地からは離れている事もあって宇宙に勢力圏を拡大する意欲に乏しかったのだが、ヨーロッパ勢がこのままではじり貧だと焚き付けたのだ。

実際、鉱物資源が宇宙から潤沢に供給されるようになってオーストラリアの資源国としての地位はだだ下がりだった

ヨーロッパから流れ込んだ人と資本で産業構造が変わっていたから持っているが以前のままなら破綻していた可能性もあった。

惑星開拓に乗り出さない限りはシナや聖地での戦争需要で何とかもっている状態が続いた筈だ。








最近になって騒動になったのは一部のムスリムとインド人が魔法が碌に使えない人々を火星に送り込んできたことだ。

まぁ、地下に居住する分には好きにして下さいって話なんだが、彼等の送り込んだその人々が地表に放たれて暮らし始めたのだ。

火星はまだ生態系が脆弱なので日本は抗議して地表にいる人々を地下に戻すようにと交渉した。

インド人は抗議を受けて直ぐに地下に戻ったのだがムスリムはそのままだった。

インド人が直ぐに手を引いたのは日本の始祖の一人である真祖の私が交渉の場に居たからだな。

インドでは始祖は神様扱いなので。

そうこうする内に地表に住む奴等が森林で伐採し始めたので交渉は諦めて交渉中の警告に示した様に地表に住む奴等を排除する事にした。

日本は火星を砂漠化するつもりはないので地表の不法占拠者を排除する事にしたのだ。

そして実行に移したのだがムスリムから猛烈な抗議が有って再交渉する事になった。

だけどまず彼等は地表で住む事の何が悪いのか理解していなかった。

彼等を火星に迎え入れた時に地球化はまだ途中で生態系が脆弱だから人が地表で住むのはまだ禁止だと説明したのを理解していないのだ。

そして人が住める地表の占拠も惑星開拓と同じで早い者勝ちだと判断していた。

もしそうなら火星は日本が開拓を始めたのだから日本のものと判断しないのはおかしい気もするけど。

これも有ってロシアですら日本の火星での優先権を認めて日本が火星の地球化を進める為に決めた事については守っているのに。

彼等を火星に迎え入れた時に地表が無主地では無い事も説明して有ったのだが日本人とは感覚が違って人がいなければ構わないと判断していた。

そしてこの再交渉の段階でまだ交渉次第で地表に住む事が可能だと思っていたのだ。

日本はいつまでに人を地下に戻すか交渉していたのに彼等は如何すれば地表に住めるか交渉して決めようとしていたのだ。

お話にならないので交渉は決裂したと宣言した日本は地表に住む事は禁止であることを再度通告後に地下に戻る猶予を一週間与えて地表の不法占拠者の排除を再開した。

彼等はこれも交渉の中だと思っていたのだろう当然の如く地下には戻っていなくて全員排除された。

日本人が交渉の余地が無いと判断している事に対してまだまだ交渉中と判断した結果だ。

彼等は交渉が決裂したとした日本の態度も交渉を有利にするためのポーズだと判断していた訳だ。

此処に至って初めて彼等は日本側が地表に住む事を完全に禁止していたことに気付いた訳だが引き下がる事もせずに抗議を続けた。

そして地球か自らが開拓中の惑星で好きにしなさいと言って日本は彼等を火星から追放した。

彼等に同調していた勢力にも退去して貰った。

彼等は太陽系外の開拓が順調に進んでいる事もあるのだろうか思っていたほどは揉める事も無く火星から退去した。

まだ理解していない勢力も有りそうだが表向きはこれで騒動は収まった。


日本が火星で優先して行っているのは地球化で、そのために緑化を進めて生態系の強化を進めているのだ。

それに反する行為を排除する事に躊躇はしない。

ちゃんと事前に説明はしてあったのに……

火星の生態系が強固になってからであれば問題とはしなかったレベルの話なんだがな。

火星で揉めている暇が有ったら惑星開拓に力を入れて自力で勢力圏を拡げればいいのにと思うのだが彼等はそう捉えてはいない様だ。

彼等は火星の土地が空いているなら貧しい者に与えれば良いではないかと思っている様だ。

空いているのではなくて生態系の強化の為に空けてあるのだとこちらは言っているのに。

人が住むにはまだ時期尚早だと。




日本と揉めたムスリムを眷族とする始祖達は元々は中近東の出で勢力争いに敗れてバングラデシュまで逃げてそこで何とか勢力を維持してきた始祖達だ。

東南アジアのムスリムの始祖達に縋って惑星開拓に加わった訳だがそこそこの教育を受けているのは指導者層だけで単独ではとても宇宙に乗り出せなかったであろう勢力なので同じムスリムのよしみでぶら下がっている感じだな。

これはムスリムの仲間内の話なので火星の件の様な事が無い限りは日本には関係ない話だ。


日本ではこの様な事の無い様に最低でも転移魔法が使えない限りは地球に居住する事になっていて例外としているのは戦時に火星に避難した者達だけだ。

ただ殆どの避難民は火星に居住する内に転移魔法を使える様になったから問題にもならなかった。

日本では普通に鍛錬すれば使える魔法を使えない者達については一部の疾患や障害の者を除いて、故意に魔法を使わない者達としていて宇宙に出る事を自ら拒否しているものと捉えていた。

今では魔法教育の機会が有るにも関わらず拒否して地球に住む事を選択しているもしくは魔法以外の手段で宇宙に出る事を選択しているとして放置していた。

魔法以外の手段で宇宙を開拓可能ならそれはそれで素晴らしい事だ。

個人の意志は出来得る限りは尊重しないとな。


火星を追放された者達は惑星開拓に回された様だが今のままでは地表の地球化が上手く行くとは思えない。

彼等の中の貧しい者達は教育されていない事もあって中東のマングローブ林を食いつぶした生活形態を改めていない。

まず間違いなく火星で行ったのと同じ行動をとって緑化の進行が止まるどころか砂漠化が始まるだろう。

彼等は植物の御蔭で地表で呼吸可能となっている事実を知らず神に祈りを奉げながら伐採を進めるのだ。

脆弱な生態系は破壊されて地表は再び人が住めなくなるのに。

実質的に自殺と同じなのだが彼等は気付かない。

そうなる前に気付いて方針転換が出来る様なら火星で揉める事も無かったからこれは確実に起きる。

その後はそれを繰り返すか行動を改めるかだが如何だろう?

流石に行動を改めると思うのだが馬鹿が居て上手く行っている所を乗っ取ろうとか考えるかもしれない。

これもムスリムの間で留まりこちらに波及しなければ問題は無いのだが……

日本人は彼等を追放した段階で警戒して監視対象としている。


日本人が火星から追放してから監視対象としているムスリムの始祖とその眷族は惑星開拓に駆り出されている様だがあまり良い話は聞かない。

ムスリムにも色々ある様だが彼等は弱い立場だから施しを受けて当然と考えていて仮に施しを受けても神に感謝するだけだ。

施しをした相手には施しと言う善行を行う機会を与えたのだから感謝しろと言った態度だ。

彼等にとって施しは神に保証された権利な訳だ。

火星の件も彼等にとっては権利を行使したに過ぎず悪い事とは思っていない。

与える事を拒む富める者から奪うのは貧者の権利だと解釈している者もいる様だからな。

こんな考えで勝手に行動していたら惑星開拓の邪魔にしかならない。

火星での様に開拓中の惑星で地表の生態系が脆弱なうちに勝手な事を始めたら揉めるに決まっている。

育てて増えたら分けてあげると言っているのに食べる権利が有るとかほざいて種籾を当然の如く奪おうとするのだから揉めない訳がないのだ。


「彼等の行動はシナの朝鮮族を思い起こさせるな。他人の成果にぶら下がって良い所取りをしようとするんだ。物事を都合よく解釈して行動しそれを当然の権利だと思っていて拒否すると怒るんだよな。差別だとか何とか」


「シナ人は火星の事も自分達にも権利が有るから対価を寄越せだの、火星は自分達の物だから勝手に弄るなとか言ってますからね」


「まぁ、シナ人は宇宙に出る兆しも無いから放置して置けば良いけど。こいつらは如何するんだろうな。他人事だけどさ」


「地球に戻すしかないだろうな。日本はこれ以上関わりたくはないから監視は続けて仮に支援要請が有っても拒否する方針だ」


「日本は宗教絡みは基本的に関わらない方針でしたよね。イスラムとも出来得る限りは関わらないで来たはずです。どうしてこうなったんでしょう?」


「未だに続く聖地争いには関わっていないだろ。それに日本が関わると面倒だと捉えていたのは原理主義者に対してだ。イスラム全てを拒否していたらインドネシアとも国交を続けれないよ。シナの封じ込めだって上手く働かなくなる。問題を起こした奴等とはその伝手で関わっていたんだ。もう関わる気は無い」


「それで済めばいいんですけど」


「そうなんだよなぁ~シナと同じで何もしなくても絡んできそうなんだよ。嫌がらせの為なら何でもしそうだ」


「火星の件では地球でもう罵っていますよ。何もしていないのに火星を追放されたって。日本にはそんな権利は無いとか」


「彼等は何も悪い事をしたと思っていないからな。地球で神に許されている生活を火星でも続けて何が悪いと思っているんだな。神が許しているんだ日本人なんかが文句を言うなってところだろう。火星の生態系の事なんて何も考えてはいないな」


「結果として生態系がおかしくなってその神に許されている生活が出来なくなってもですか」


「神の仰せのままにとか言って済ませるんだろ。結果を自分達の所為とは考えないんだよ」


「神に結果責任を押し付けて好き勝手にするって事ですよね」


「まぁ、そんな奴等は何処にでも居るって事だ。奴等は今いる開拓中の惑星でも同じ様に振舞って揉めている様だよ」


「その揉めている話は私も聞きました。本当なんですか?ムスリム同士なんでしょう?」


「本当だよ。担当者の愚痴を聞いたから。『奴等を宇宙に連れ出すんじゃなかった』とか『日本人が怒っていた理由が分かった』とかムスリム同士なら何とかなると思っていた様だが上手く行ってはいないな」









火星でのムスリムと揉めた一件でも分かる様に最近は碌に魔法の使えない者達でも惑星開拓に送り込む始祖勢力が増えていた。

日本では有り得ない話だ。

日本でも月や火星の開拓初期にはそんな事もあったが今では皆無と言って良い。

まぁ、その辺りの事は日本が如何こうするものではない他勢力の内政の話だ。

彼等がそれで上手く行っているなら問題は無いのだが……

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