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27 地球型惑星の開拓について

日本人の中には地球の領土を放棄しても構わないと公言する者もいるが地球の生態系を資源として見た場合にそんなに安易に放棄する訳には行かない。

地球の生態系は惑星を開拓して地球化を進めるための貴重な資源なのだ。

数十万年数百万年単位で考えれば進化とか適応とかで生物も分化して何とかなるかもだが人が惑星開拓を進めるに当たってはあまり意味の無いタイムスケールの話だな。

地球の進化の成果を利用して手っ取り早く済ませるのが惑星開拓を進めるに当たっては賢い選択だ。

地球の領土を放棄するならば少なくとも地球に代わるだけの生物資源を持つ生態系を確保してからでないと。


宇宙開拓条約では地球並みの強固な生態系を持つ未開拓惑星についてはその占有を認めていない。

生態系に馴染むのが面倒なのと強引に移住を進めて生態系に拒否された場合に生物資源としての利用も不可能となりかねないからだ。

宇宙開拓条約ではそれらの惑星の原住生物に知性体が当然いるものと考えていて惑星と惑星系の占有権は基本的に彼等にあるものとし、惑星開拓の為の生態系移植の優先利用権のみを認めている。

例外として惑星系内の惑星等の開拓は認めているがこれは実験を兼ねた話でこの未開拓惑星の生態系が移植して利用可能なものかを確認する為である。

現状でこれに該当する惑星系は日本とロシアが発見した二つだけで果たして我々に利用可能なものか研究を重ねている所だ。

問題が無ければ領土の生態系を確保する場としての地球の重要度は少し低くなるな。

因みに火星型惑星で強固な生態系を持つ未開拓惑星は見つかって居ない。


宇宙開拓条約が結ばれる契機となったのはロシアによる地球型惑星の開拓の失敗である。

日本は条約が結ばれる以前から強固な生態系を持つ未開拓惑星については慎重に事を進めていて移民には慎重であった。

惑星の生態系は惑星の魔法回路と組み合わさって惑星全体を保護しているものと考えていたため、移民を無理に進めると惑星の生態系が人を異物として拒絶する恐れがあったからだ。

この件は惑星開拓を進める他の勢力にも伝えてあり認識を共有しているつもりであった。

ところがロシアは勢力圏の拡大を急ぐあまり地球型惑星への入植を始めて生態系から拒絶されたのだ。

初めは日本の懸念もあってロシアも慎重に進めていた様なのだが……


「計画通り平原に入植基地を建設し入植を開始しました。現在の入植者は凡そ三万人で特に異常は見受けられません」


「日本の奴等は考えすぎなんだ。これなら地球並みの開発も可能だろう。大気は呼吸可能だし、危険な病原菌も見つかっていない、このまま入植を続行するぞ」


ところが入植者が三十万人を超えた当たりから変化が現れた。

石が飛んで来たり、大気中に致死量の毒が撒かれたり、でもバリアを発動していれば問題ないので人に被害は無い。

確かに人に被害はないが居住地周辺の自然環境は人が増えるにつれて悪化する一方であった。

とても魔法の使えない子供達には居住出来る様な環境ではない。


「おい何とかならんのかロシアの威信が掛かっているんだぞ。環境が悪化する一方じゃないか」


「日本人の忠告を聞いておけばよかったですねぇ。開拓が進むのに比例して環境が悪化しています。入植を止めるしか方法は無いです」


「それは出来ん。開拓はこのまま進めるんだ。何とか環境の悪化の方を食い止めるんだ」


「でも惑星の生態系を確実に損ないますよ。植物の毒が大気中に発散しているのが原因なのでこの惑星の植物を根絶やしにするレベルで排除するしかありませんが宜しいんですか?」


「良い訳がないだろうが。それでは環境が良いからと植民を始めた意味がない。何とかその植物が毒を発散しない様には出来ないのか?」


「そんなことが可能ならとっくに遣っています。日本の研究者に相談したら『ロシア人は植物に喧嘩を売りましたね。日本人は怖くて避けて来たのに』と言われました」


この問題の兆候の発覚は惑星が公開された時の日本の研究者による調査による。

日本の研究者は日本が調査研究中の惑星ではここまで手荒な事は許されていなかったので関心を持ってこの惑星を調査したのだがその時に大気に微量の植物性の毒が見つかった。

それでロシア側のデータと照合したのだが大気成分に明らかに差が有ったので報告を上げたのだ。

この時点では毒と言っても人の生存に問題となるレベルではなかったためロシア側では軽く考えて入植を止める様な事は無かった。

日本側が慎重に進める様に忠告してもロシア側は耳を貸さなかったのだ。

確かに実証してはいないので問題となるかどうかは分からない。

それでロシア側が実証をしてくれるのならとこの惑星開拓を日本側は注視していた。


「このままだと入植者は施設に閉じこもって生活する事になる。それでは火星型惑星の開拓時に地下で生活するのと変わらん」


「いえ、それより悪いです。火星型惑星の開拓は地表の地球化が進めば地表に住む事も可能ですがこの惑星は開拓が進むほど地表に住む事が困難になります」


ロシア人達は拙速に事を進めて惑星の生態系に拒絶されてしまったのだ。               この件は途中までは順調に入植が進んだ様に見えたためにロシア側が自慢げに吹聴して失敗が表ざたになってしまった。

ロシア人達には自信が有ったのだろう。

成果を誇示しようとして入植途中からこの惑星を複数の勢力に公開していたから失敗を隠蔽する事も出来なかった。


「何とかならんのか」


「植物の排除も一応は検討しましたが現実的ではありません」


「当然だ。成功するかどうかは分からんが費用が莫大に掛かる事だけは分かる」


「入植希望者も減っているしお手上げですかね」


「何ともならんのか」


惑星開拓の責任者の首が飛び、最終的にロシアはこの惑星への入植を断念する事となった。

入植を進める程環境が悪化するのでは入植する意味が無い。

惑星の生態系を破壊して開拓を進める事を検討した様だがそれでは地球型惑星に入植する意味が無い。

開拓するだけでも火星型惑星を開拓するのと左程変わりの無い労力を必要とする。

生態系を破壊する手間を考えたら労力は倍では効かないだろう。

どの様な方法を検討したのかは分からないがそれで生態系が破壊できるとは限らないのだ。

これでは惑星の生態系相手に戦争するのと変わらない。

その分、勢力圏の拡大が遅れる事になる。

結局、同じ惑星系の火星型惑星を開拓する方が良いとの結論になった様だ。


宇宙開拓条約を結んで以降の日本は益々慎重に研究を進める様になりロシアは二度と強固な生態系を持つ地球型惑星に入植する事は無かった。

入植に失敗した惑星では今でも研究が続いている。

ロシアの強引な入植にも成果が有って規模が適切であれば施設を設置しても問題ない事が実証されていた。

それで小規模な研究施設を設置して研究は進める事にしたのだ。

もしかしたら開拓地が適切に分散していれば問題は無かったのかもしれない。

だけど日本は実証する気は無いしどの勢力も実証する気は無さそうだ。

仮に成功しても火星型惑星の開拓の成果より成果に乏しそうと推定されていたからな。

失敗したら逃げ出す羽目になるし。

結局は火星型惑星を地道に開拓するのが勢力圏を拡げる一番の早道と言う事だ。





                  



地球型と火星型の惑星における最も顕著な違いは大きな衛星を伴っているかどうかだ。

この衛星による潮汐力によって惑星は多大なる影響を受けていて地殻変動が有ったり潮の満ち干があったりする訳で地球の生態系のダイナミズムもこれで保たれている。

月が有るだけで環境に著しい違いが出て生物は刺激を受けて進化が促される。

だけど地球型惑星だからと言って強固な生態系を形成するとは限らない。

過去の地球の様に惑星が全球凍結してたいした生態系が存在しない場合もあってその場合は占有が認められるので開拓は可能となる。


私の眷族が開拓中の惑星の一つが全球凍結していた地球型惑星で大気と海は初めから存在していた。

過去に植物性プランクトンが大量発生したのか酸素が大量に供給されるとともに二酸化炭素が急減して気温が下降し全球凍結してしまった惑星だ。

通常なら凍結中に火山活動で二酸化炭素が発生して光合成活動が停止している為にその濃度が上がって温暖化が進み氷が融けるのだがこのメカニズムが上手く働かなかったかもしくは全球凍結してから時間が充分に経っていなくて温暖化に至っていないのだな。

そのまま放置すれば何れは地球の様になったのかもしれないがそれは今日明日と言った話ではないので遠慮することなく開拓を進める事になった。


「大気の酸素含有率が高すぎてそのまま呼吸すると死にますね。割合以外は地球の大気と左程違いは無いのですが」


「気温も低いしな。これも大気に温暖化ガスが少ないからだな。まずは大気の組成を弄って酸素を減らして温暖化ガスを増やす事だな」


この惑星は大気の酸素含有率が高くてそのままでは地球の動植物を移植するのに向かなかった。

酸素を減らす単純な方法は物を燃やして酸化物にしてしまう事なのだが地表にそんな物が露出していれば酸化して酸素は減っていた筈でつまり惑星表面を覆っている氷の下から掘り出さないとそんな物はない。

それでは時間が掛かると言う事でこの惑星は魔法の実験場と化した。

真面な生態系が無いこの惑星では魔法に地球の様な縛りが無い。

それでアイテムボックスに酸素だけを収納して大気を調整しつつ、惑星上の氷を攻撃魔法で融かしながら海と陸の造成も行った。

これは一週間ほどで済んで大気はほぼ地球とほぼ同じ組成となり動植物の移植が取り敢えずは可能となった。


「惑星改造が魔法で簡単に済んでまあそれは良かったんですが、嵐が静まりませんね」


「大気の酸素濃度が三十%以上あったのを一気に二十%まで下げて、氷を一気に融かして水や水蒸気にすればそうなるだろうさ。それにしても魔法に縛りが無いって凄いね。地球ではこんな規模の魔法は発動しないよ」


「もう火星でも無理でしょうね。ここも今だけですよ。生態系が移植されてから五年もしたらもう無理でしょうね」


「なんか火山活動も活発になっている気がするけど?」


「地表をあれだけ弄れば刺激するでしょうね。気圧変動も大きかった筈ですし」


「まぁ、魔法が発動するって事はたいした生態系は形成されていないって事だ。問題は無いよな」


「その筈ですよ。風が収まったら調査しましょう」


暫くは惑星上が豪雨や暴風で凄かったけれど生態系の移植前だから問題は無い。

そのまますぐに地球の生態系を移植できれば万々歳だったのだがそんなに美味い話は無かった。

この惑星にも生物が全くいなかった訳ではなくて微生物は細々と生存していたのだ。

これが環境の激変に合わせて惑星中で爆発的に繁殖したのだ。


「凍る前は生き物で溢れていたんでしょうね、この星も」


「水が緑になったのには驚いたけど生物がいたと言う証拠だからね。ただ人の住める生態系が形成可能かが問題だな」


「地球から上手く生態系を移植出来れば良いんですが」


「まず調査だな。移植する地球の生物に害がある様では困るから」

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原住生物が無害である事の確認に三年も掛かった。

まぁ、無害であると言うか微生物の働きもDNA型も地球と変わりがないので地球の動植物をそのまま移植して一つの生態系としても問題はないだろうとされた。


「ようやく植物の移植が始めれますね。三年もかかるとは思いませんでしたよ」


「次はもう少し手際よく済ませれると思うな。初めてで慎重に進めたからな」


「ここもDNA型は地球と変わりませんでした。人の進出した範囲では違う型は見つかっていません」


「今の所は違う部品で出来た生物は居ないと言う事か」


「設計も基本的に同じですよ。進化しても左程変わらない形態をとるでしょうね。日本とロシアが発見した地球型惑星の生物も基本的には地球と変わりませんでしたから」


「そうだったな。まぁ、だから植物の移植を始めれるんだ。もし違いが有ったらもうしばらくは調査と研究が続いたよ」


「施設は今迄の開拓と同じ様に地下に敷設するんでしたね」


「地表は生態系の移植が済んで強固な生態系を形成するまで居住は禁止だ。初めから水も大気もあるし時々外に出て大気を呼吸できるだけ他所よりはましだな」


「大気中の二酸化炭素濃度を下げない為にも植物と動物の移植を同時に進める必要が有ります」


「当面は動物と言っても人だけだぞ?」


水も大気も初めからあったから態々地下を開拓する必要もないのだけどなるべく自然に生態系を定着させたいから人は地下に居住して当面は裏方だ。

そこから先は他の惑星よりも速く生態系の移植が進んで真世歴六十五年に人口は二千五百万人を突破した。








生物は条件さえ揃えば普通に発生する物の様で微生物の痕跡なら火星にも有った。

ただ進化する環境条件は決まっているのか今の所は地球型惑星でしか強固な生態系は発見されていない。

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