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第十三話 俺、亡霊たちと戯れます。その20

「猫車……最大パワー!」


 アリマン樹から逃げろ! 最大出力で――。


「ふ、ふう、あの木が動けないことが命拾いになったな!」


「だけど、一難去って、また一難よ」


「わあ、今度はさっきのミイラ化した大鬼の仲間に遭遇じゃん!」


 アリマン樹のもとからは上手く逃走できたけど、今度は巨大な金棒を持った身長五メートルはありそうな緑色の肌をした薄気味の悪い巨漢――さっきのミイラ化した個体とは別の個体の大鬼と遭遇する!


「キキキッ! 生きた人間がやって来ましたぜ、旦那!」


「むう、オッサン面の人面鳥が一緒だ!」


「あれはハーピーってヤツよ! 人面樹をイジメる最低な輩よ!」


「あんなのもいるのね、ここには……」


「ぷっ……わ、悪い、笑うのを我慢できん!」


「ゴルァァァ! 聞こえてんぞ、ボケェェ!」


 大鬼の右肩には、鷲のような大きな鳥が留まっている。


 だけど、頭はバーコードハゲのオッサンだ!


 うーん、ハーピーとかいう怪物のようだが、その奇妙な姿を見ると笑いが込みあげてくるんですけど!


「ハーピーの旦那。アンタ馬鹿にされているぞ」


「う、うむ、大鬼君の言う通りだな。オッチャン、少しだけキレそうだわ!」


 キレそうだ? むう、すでに激怒状態だ。


 ハーピーの顔面は茹蛸のように真っ赤に紅潮しているしなぁ。


「大鬼君、あの姉ちゃんたちにお仕置きと洒落込もうじゃないか! この森の幽霊たちのように……」


「うぎゃああああっ!」


「え、悲鳴をあげたぞ!?」


「むう、ここら辺の生えている木は幹の幽霊の顔が見受けられるだけじゃないみたいね」


「自殺者の森に生息している木霊(ドリアード)よ」


「私の友人には木霊が多い……許せんハゲ頭だ!」


 茹蛸のように顔面を紅潮させるハーピーは、近くに生えている木の枝を口で引き千切る。


 うむ、自殺者の森に生息する木は、木霊というモノのようだ。


 しゃべることができる木ってところだな。


 幹に幽霊の顔がある木だけってワケじゃないようだ。


「さて、姉ちゃんたちも、この木の枝のように手足を引き千切ってやんよ!」


「ハーピーさん、俺はぶん殴りたいぜ。へへへ、俺は生きている女をイジメるのが大好きでねェェ~~!」


「ちょ、お前、最低な奴だな!」


 ハーピーはともかく、大鬼は最低の奴だ!


 女に暴力を振るうのが大好きとか……。


「ミケ、来るわよ!」


「ああ、わかっている。俺たちをナメてかかっていると痛い目に遭うってことを教えてやる!」


「わたしもやるぞ! 巨大化だ!」


 ハーピーと大鬼は、俺たちをナメているな……むう、甘く見たことを後悔させてやる!


「アロンダイト一式、二式の二刀流です! たあーっ!」


「うぎゃああああ!」


 死ねぇぇ! と、飛びかかってきたハーピーの身体が、マリウスの神速の剣捌きのよって三つに分断される。


「ハーピーって弱いのか?」


「うん、口先だけって感じね」


「クケケケ、俺が死んでも代わりはいる。仲間を呼んでおいたぜ……ガクンッ……」


「え、代わり? それに仲間を呼んだって!」


「ひゃあ、バーコードハゲのおじさんの頭を持つ鳥がたくさんやって来たわよ!」


「ハ、ハーピーってみんな……」


 バーコードハゲのおじさんの頭を持つ鳥――ハーピーが、ドッと大量に出現する。


 俺が死んでも代わりはいる――という意味がやってわかったぜ。


「しかし、オッサンばかりで花のない種族だな」


「ミケ、可愛そうだから触れないであげなよ」


「そ、そうだなぁ……」


 ハーピーって種族には花がない。


 むさ苦しいオッサンばかりなんだろうなぁ……。


 集まってきたマリウスによって身体を三つに分断されてしまったハーピーが呼び寄せた仲間のハーピーの中には、〝頭が女性〟の個体が一羽もいないワケだし――。


「誰だ、花がないって言ったのは!」


「あ、俺だよ、俺! だってさぁ、アンタらはオッサンばかりだし……」


「ぐぬうう、俺たちハーピー一族を馬鹿にしやがって!」


「フン、我々にはメスなど不要なのだ!」


「ああ、メスなんて要らん! オスだけでいいのだ!」


「ちょ、アンタたち、自然の摂理に反したことを言ってないかぁ?」


「はぁ、どこが? とにかく、仲間の仇を討たせてもらうぜ!」


 むう、このオッサン鳥め! 自然の摂理に反しているんだよ、テメらは!


 おっと、なんだかんだと、ハーピーたちが一斉に襲いかかってくる!


「二匹目撃破です!」


「私の毒液を食らえーっ!」


「熊パンチ、熊キックだ!」


「よし、俺も!」


「おい、こっちにも加勢してほしい!」


 さて、アポロンは巨大化し、大鬼と取っ組み合っている。


 巨大な怪獣対決に見えるなぁ。


「やれやれ、コイツを使えば一発だ。ここからは私に任せてくれ。ああ、皆は猫車の中に戻るといい。被害を受けてしまうからね、く~っくくく!」


「む、イシュタル、アンタ……ナニを!?」


 猫鬼にフルボッコにされていたイシュタルが、そう自慢げに言い出す。


 う、猫車に戻れって言ってるし、一緒にいたらナニかしらに被害を受けてしまいそうだ。

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