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第十三話 俺、亡霊たちと戯れます。その19

「小さなウサギとはいえ、甘く見ない方イイってヤツだな」


「あ、ああ!」


 ほあたあああっ――と、ヌンチャク使いの兎鬼は、気合の大声を張りあげる。


 むう、俺たちを威嚇しているつもりかもしれんな。


「よ、よし、今度は俺が!」


「ミケ、俺があのヌンチャクウサギをぶちのめしてやる!」


「頼むぜ、アロインダイト……え、逃げ出した?」


「ちょ、何故、逃げるんだァァ~~!」


 むう、ビキイイン――と、ヌンチャク使いの兎鬼の全身の毛が突然、逆立つ!


 と、その刹那、兎鬼は勢いよく踵を返し、茂みの中に飛び込んだぞ……え、逃げ出したのか、アイツ!?


「あのウサギちゃんどうしちゃったのかな……かな?」


「さあなぁ」


「逃げた理由はともかく、私たちは面倒な場所に来たみたいね」


「面倒な場所!? ああ、見てください! 私たちのが乗っている猫の車の前方に大きな木がありますよ!」


「この森の主って感じね……わ、そんな巨大の木のところに大きな鬼がいる!」


「むう、大鬼ってヤツだな! 私が相手になってやろう!」


「待てアルテミス! そんな大鬼の様子が変だ!」


 何故、ヌンチャク使いの兎鬼が突然、逃げ出したのかはともかく、自殺者の森の中にも立ち込めている霧が少しだけ晴れた気がする。


 そんなワケで今になってわかったことだけど、俺たちが乗る二匹の猫が引く車は、今いる自殺者の森の主と言っても間違いない巨木の前で立ち止まっていたワケだ。


 まったく、霧ってヤツは厄介だなぁ――わあ、幹に巨大な顔がたくさん! この木も人面樹なのかよ!


 ん、よ~く見ると、自殺者の森の主と言っても間違いない巨木の根本に腰掛ける巨大なシルエットが見受けられるぞ!


 アレがウワサの大鬼って奴か!?


 でも、俺の胸の谷間から顔を出しているスケベアニマルことアポロンが、大鬼に対し、立ち向かおうと二匹の猫が引く車の外へ飛び出そうとしたアルテミスを引き留める。


 様子が変……え、どういうこと!?


「ひゃ、あの鬼さん……ミ、ミイラのようだわ!」


「ミ、ミイラ!?」


 俺の首にマフラーのように巻きついているサマエルが悲鳴をあげる――むう、大鬼はミイラのようだって!?


「ん……あの鬼から生気を感じないわ」


「じゃあ、近寄ってみようぜ」


「よし、なら一緒に行こう」


「ママが一緒ならボクも!」


「このガキ! お姉ちゃんに抱きつくんじゃねぇ! あ、私も行く~☆」


「ナニか妙だわ。アンタたち、迂闊にその木に近寄っちゃダメよ!」


 スカアハが生気がないと言い出す――大鬼はすでに死亡し、ナニかしらの要因が相まってミイラ化してしまったのか!?


 で、その確認とばかりに二匹の猫が引く車の外に出た俺とアルテミス、それに正太郎と闇子に対し、沙希が迂闊に近寄るな――と、警告する。


「あ、この木はひょっとして巨大人面樹……アリマン樹!?」


「わ、クロベエ! また、そこから!」


 むう、俺が穿いているスカートの中から黒狐のクロベエが出てくる……こ、このスケベアニマル二号!


 と、それはともかく、そんなクロベエがアリマン樹と呼ぶ。


「知っているのか、クロベエ?」


「うむ!」


 クロベエは大きく頷く。


 自殺者の森の主と言っても間違いない巨木――アリマン樹についての詳細を知っているっぽいし、訊いてみるっきゃないよな。


「詳細を!」


「うむ、ありていに言おう。あの巨木は意思を持つ吸血植物だ!」


「意思を持つ吸血植物!? って、ことは生き物の血液を糧にしているの?」


「わお、じゃあ、大鬼がミイラ化したのって、あの木の血液を全部吸い取られちゃったから?」


「正解! その通りだ。故に危険な〝妖樹〟として現界では、とある団体が、そのすべての個体を焼き払ったはずなんだが、この世界ではまだ生息していたとはな!」


 厄介というか危険な植物だな。


 とある団体というのが、どんな存在かは知らないけど、よくやった!


 そう言いたくなるかも――ただし、あくまで現界で絶滅したっぽいだけであり、猛獣界では健在なのが遺憾だな。


「むう、きっとアイツだわ! ここにアリマン樹を持ち込んだのは!」


「むう、沙希それはどういうこと? まさか、コイツを猛獣界に持ち込んだモノが誰か知っているのか?」


「当然よ! ソイツは私の先輩だしね!」


「むう、先輩ねぇ……うお、アリマン樹が動き出した!」


 沙希の先輩――歴代の死霊秘法の所有者の誰かさんが、目の前にある厄介な巨木ことアリマン樹を猛獣界に持ち込んだっぽいぞ。


 と、そんなことは今はどうでもいい! アリマン樹の幹にも見受けられる人間の顔――実体化した幽霊の顔の眼、鼻、口から触手のようなモノが飛び出してくる!


「あれは蔦ですかね?」


「うん、アレで近寄るモノの身体から血液を養分として奪い取るのよ!」


「ひゃあ、お母さん、怖い!」


「わあ、お姉ちゃん、怖い!」


「お、お前ら、抱きつくな! とにかく、急いでここから離れた方がいい! 大鬼のように血液を全部吸われてミイラのようになっちまう前に!」


 ぬう、さっさとこの場を離れた方が無難だな!


 大鬼のように血液をすべて吸われてミイラみたいになってたまるかよ!

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