学園93
「……はぁ」
ショボショボしていた目に、液体が染み込む。
ぼやけていた目が潤うと、眠っていた脳にまで液体が染み込み、
「いっつ……!?」
「リナ!?」
体に痛みが走る。
それは脳が覚えている傷、何度も刺されて血達磨にされた事を認識してしまっている。
「安心しろ、シミュレーションの中で起きたのは嘘だ。お前の体には、傷一つ付いていない」
「はい……」
シミュレーションを嫌という程訓練している身、シミュレーションの世界で起きた事は、現実で起きた事では無いというのを理解している。
「息を整えるんだ。ベッドの上で寝ている。シミュレーションは終わった」
「はい……」
声を掛けてくれている人は、基本の基本をしてくれている。
やられた記憶に引っ張られて、体が反応しないように……催眠術では無いが、言葉で意識を保ってくれる
。
「……ふぅ、もう起きれます」
「タフだ。ツバメに付き合ってると頑丈になるのか?」
「人の五倍は頑丈になります」
「ちげぇねぇ」
上半身を上げて、声の主の方を見ると、そこにいるのは、
「もう一度自己紹介した方が良いか、ツバメの相棒、片桐美優だ」
「あっ…初めまして、私は……」
「リナって言うんだろ?ツバメから聞いているし、ユナ教官の娘なんだって」
「そ…そうです……」
シミュレーター室にいた、あの人であった。
少し視線を動かすと、ミィオがいるのだが、
「ツバメは……追い掛けられているんですか?」
ツバメはここに居ない。
「人の事は言えないけど、仲良いんだな…お前」
「自分はどうかと思うッスよ。あの人」
体を滅多刺しにされてもなお、ツバメの名を出す事に、美優とミィオは顔を合わせて、美優は呆れたように苦笑し、ミィオは苦虫を嚙んだかのように、嫌な顔をする。
「そんな顔しないで、ツバメは……」
「う…うぅ……」
「大丈夫か?無理しないで寝てて良いんだぞ?」
「えっ?誰?」
ツバメには、優しい一面もあると伝えようとしたが、聞いた事の無い声が隣から聞こえて、そっちに視線を移すと、
「大丈夫……シミュレーション……分かって…………」
そこには自分と同じようにベッドから上半身を起き上がらせている人がいる……のだが、苦しそうに上半身を前のめりにして俯いている。
「あの…だ…大丈夫?」
「問題無い…生きてる……」
「そ…そう……」
その姿は、初めてシミュレーション内で大怪我をして動けなくなった自分のようで、無理をしているのは一目瞭然であった。




