学園88
(ジン…君なら……)
ジンならこの状況でも、勝って見せると悠々としていたのだろうか…分からない……
「はぁ……」
もう一度、震える体を落ち着かせようと溜息を吐いて、手を握り締めると、手の平に浮かんだ汗で濡れる。
心臓が『バクバク』と破裂しそうな程に脈を打って、胸が震えている……呪いのように「自分は勝つ」「やってみせる」と思っても現実が……
「……アタシの初めての時は、震えながら母さんに抱き着いていたよ」
「えっ……?シミュレーションでですか?」
本番を前にして体が震える自分に対して、美優は寂しそうな笑みを向ける。
「勘違いするなよ。初めての時ってのは…………子供のRLに襲われた時だよ」
「RL……?ここは鳥かごですよ」
「アタシは、地上生まれだ」
「……………………」
「珍しいよな。地上生まれなのに鳥かごにいるなんてよ……母さん達が優秀な兵士で、その功績が称えられて都市に引っ越したんだけど、その後にな都市がやられちまって、鳥かごに移住が出来たんだ」
そこで火内は絶句してしまう。
美優が地上生まれだったという話、初めての戦場に巻き込まれた話よりも、
(あるんだ…こんな事が……)
美優とジンの話が繋がった事に。
ジンが言っていた、都市壊滅で亡くなった人に紛れて鳥かごに来た話と、美優が住んでいた都市が壊滅させられたという話は繋がっている。
二人が直接結びつく話では無いが、それでも進展した。
「ありがとうございます……気持ちが落ち着いたような気がします」
「上の空のように見えたが……本当に落ち着いたみたいだな」
ジンを落ち着かせる為に昔話を軽くしただけであったが、強張っていた表情が溶けた。
「お前の話も聞きたい所だけど、頑張って来いよ」
「はい」
美優は、何が火内の気持ちを落ち着かせたのか無粋な事を聞かずに、火内の腹を軽く叩いてエールを送ると、そのままシミュレーターカプセルから出て行こうとしたのだが、
「……あっ、一つだけ頼みが」
「どうした?」
美優が立ち去る前に、火内は背中を少しだけ浮かべる。
「何があっても、模擬戦を止めないで下さい」
「止めないで?何か策があるのか」
「……えぇ」
火内の表情を見て、何か策があるというよりは、覚悟を決めているのを感じて、美優は一瞬迷ったが、
「……分かった。出来るだけな」
「お願いします」
彼もまた為すべき事があるのだからと、お願いを聞き入れると、今度こそシミュレーターカプセルから出て行く。
一人シミュレーターカプセルに残された火内は目を閉じる。
「少しだけ近付いたよ…ジン……」
居なくなったジンを探して、五里霧中の中を手探りで歩き回った先で見付けた「何か」は、初めての成果であり、無駄でなかったと思わせてくれて、
「頑張…る…よ…………」
溢れて来たやる気と共に意識が吸い込まれた。




