学園85
怒りで吊り上げていた視線を切ると、
「怒りもするでしょ……いきなりこんな目に合わされたら……」
面倒事で名を上げるより、模擬戦で名を上げる方が最優先だと拳を解く。
「ははっ、わりぃわりぃ」
「痛い!!」
物分かりの良い火内に上級生は、上機嫌に肩をバンバンと叩きながら、自分の方に引き寄せて満面の笑みで肩を組み、
「それじゃあパイロットカード」
「…………はぁ」
手を伸ばしてパイロットカードを要求して来る上級生に呆れて、溜息を溢す。
(元を辿ればパイロットカードが原因で喧嘩になりかけたのに、それを平然と要求してくるのは神経が図太いと言うのか、本能に素直なのか……)
言いくるめられてパイロットカードを取り出して渡そうと、やれやれと自分の腰に手を伸ばそうとしたが「ふとっ」伸ばした手を止め、
「……何に使うんですか?」
なぜ自分のパイロットカードを要求するのか上級生に聞く。
視聴覚室でシミュレーター室の様子を見ていた時、確かに上級生が下級生を連れてシミュレータカプセルの中へと連れて行くのは見て、パイロットカードを使うのは分かっていたが、この上級生には何か違和感を感じる。
ただ遅れて来た生徒を探してシミュレーターカプセルにぶちこむだけなら、首根っこを掴まえて放り込んでしまえば良い。
しかし、上級生は自分のパイロットカードを欲している、それが違和感を感じさせた。
上級生は火内の言わんとしている事を理解すると、耳元に口を寄せ、
「お前もあるんだろ?やらなくちゃいけない事が?」
「キサマ何を知っている!!」
火内にだけ聞こえるように囁くと、穏やかな目付きに戻っていた目尻が鋭く吊り上がり、自分の肩に乗せてい手を跳ね除けると後ろに跳び退き、獣のように姿勢を低くして上級生と対峙するが、
「躊躇うな」
「ぐぅっ!?」
対峙するという行為が、上級性に取り押さえられる隙を生んでしまう。
上級性に首を掴まれた瞬間に体が硬直する。
「何を知っているかという答えには、お前の事情は何も知らん」
「…………」
「あんだけ馬鹿みたいに目立つ事をして、今も遅刻して来るってのは余程の馬鹿か目立ちがり屋か……」
体が動くなと硬直するのは、首を掴む手に違和感を感じるから。
「アタシみたいに、何かあるって事だ」
「…………」
火内の吊り上がった目に、上級生が顔を近付けて目と目を合わせると、
「目が……」
上級生の瞳の奥には、機械のレンズが見えるのであった。




