学園81
(戦いに絶対は無い。奇跡を起こし、偶然を呼び起こすには、それ相応の実力がいる。君達に、私から教えてあげられるのは、実力及ばない者がどうなるかという事)
あの時の上級生が言った言葉が、自分の感情に触れて来る。
「ジン……」
こんな所で無理をする必要は無かった……二人で学校に通って、少しずつ成長していけば良かったのに……ジンが飛び降りた日に、全てが狂った。
ジンには問題があった。
それは彼が、この鳥かごで生まれたのではなく、地上生まれの人間であるという事。
話は簡潔にしてしまうが、地上のとある準都市で起きたLRの襲撃、そこで多くの人達が亡くなり、生き残った人達を、鳥かごか都市で保護する事になったのだが、亡くなった人に入れ代わって鳥かごへの切符を手に入れたのだ。
その手筈をしたのは凛……彼の妹分がしたらしいのだが、それは別として、彼は違法移民という事になる。
彼は目立たないように……彼の人柄の良さは多くの人を魅惑して惹きつけたが、それでもどうにもならない事があった。
それは身分の問題。
亡くなった人の履歴を利用しているからこそ、派手な事は出来ない。
前例が無いのだ。
地上に住んでいる、都市に住んでいる者が功績を偽って、鳥かごに入り込む事があっても、町の出身?村の出身?どこぞの馬とも知れない者が、鳥かごに忍び込むというのは前例として無い。
どんな処罰を受けるのか分からない、いや処罰なら良い……こんな事が明るみになってはいけないと、罰を与えられずに処されるかもしれない……
そんな事にならないように、ましてや軍学校などという、身分を洗いざらいされるかもしれない危険な事はしなかったのに、
「ちょっとした伝手があってよ。もしかしたら、俺も軍学校に通えるかもしんねぇんだ」
それを言い残して、彼は忽然と姿を消した。
残された凜と一緒に、彼を探し、彼の帰りを待ち……そして、あの日が来て、彼は居なかった事になった……彼が病院に運ばれたという記録も無く、葬式を上げて貰ったという事実も無く……ただただ、彼は居なかった。
彼がどうなっていたのか、どうなったのか知る由も無い自分に唯一出来る事は、
「僕が君となって……火内 刃となって……」
彼の名を偽って、彼を消した者達を誘き寄せことだけ。
(戦いに絶対は無い。奇跡を起こし、偶然を呼び起こすには、それ相応の実力がいる。君達に、私から教えてあげられるのは、実力及ばない者がどうなるかという事)
「やってみせるよ……」
これは少年にとっての戦い、奇跡を起こして偶然を呼び起こす……ただ問題があるとすれば、子供である自分にそれだけの実力があるか無いかという事。




