学園70
この感情の寒暖差に目が回る、意識が回る。
ツバメの感情のオンオフが激し過ぎる。
さっきまでの、慈しむの態度を見せていたツバメも嘘では無いが、首を締め上げて意識を堕とそうとしているツバメも本当で……
(意識を…グルグル回してる場合じゃない……)
例え首を締め上げられているからと言って、一瞬で意識が飛ぶ訳では無い……それがRLHであるリナなら尚更の話。
(腕を…折って……やる……)
自分が堕ちるまで時間がある。
ツバメから仕掛けて来たのだ、首を絞めるツバメの腕を掴んでへし折ったからと言って、文句を言われる筋合いは無い。
ツバメの腕を掴み、細枝を折るように…折るように……
「美優にはビックリさせられちゃったの……アタシの事を一瞬で堕としたんだよ」
手に力が入らない……
「相手がリラックスするという時に、一番息を深く吐くんだって……全身に巡っていた、張り詰めていた気を吐くために……体内の空気を吐き捨てて、新しい空気を吸おうとした所で首を絞めれば……」
(頭が…重い……暗い……よ…)
もうその先を言う必要は無い、ツバメに抗えず、体をツバメに支えられながらグッタリとして、意識が四散し始めている。
血が、空気が遮断された体で、片足を震えながら上げてツバメの足を踏み付けて、眠りから逃れようとするが、力が入ら無い足でツバメの足を踏んでも抵抗にならならい。
死期が近い虫のように、足をフラフラとさせる事しか出来ない。
「くっ……ふぅ……」
苦しそうに声を上げ、自分の体が重くなって来ている事を感じ、自分の視界が黒く狭まっていく。
視界の周りから覆っていた暗闇は、ゆっくり、ゆっくりと目の中心まで浸食して、見えていた物は真っ暗になり、ツバメの体を伝いながら「だらんっ」と操り人形が椅子に座っている時のように、項垂れてしまう。
「ダメか……」
ツバメはリナが気絶してしまうとリナから手を離し、リナはそのまま足から力が抜けると膝から折れて地面に落ちた。
一応、目を覚まさないかと、リナの体を揺すってみるが何の反応も無い。
「今回は、これぐらいで終わりにしようか」
意識すら無いリナに終わりを告げると、シミュレーションを終わらせるためにシステムに介入する。
自分が、学校に通って変わる物があったように、リナも会っていない時に何か変わったかと期待したが、それはこれからの話なのだろう。
落胆はしていない、いつもの日常では変化する切っ掛けが無かったというだけ。
『システムを元に戻しますか』
後は承諾だけすれば、自分達はシミュレーターカプセルの戻っている、リナを連れて保健室に連れて行けば……
『ギュゥ……』
「リナ?」
足を掴まれた。




