学園59
「んっ…ここは……」
眠りに付いたリナが、次に目を覚ました時には、先程までの無機質なカプセル内では無い、目の前に広がるのは廃れた街。
リナは、廃れた街を確かめる様に視線を泳がすが、どこを見ても活気に溢れている場所は無く、人が住んでいた名残があるだけ。
顔を上げて空を見上げると、いつもよりずっと遠い所にある青い空と太陽。
ここは仮想空間であり、虚構の世界を見ているというのは分かっているが、それでも感性はここが地上だと勘違いしてしまう。
「…………」
この仮想空間の中には自分一人だけでなく、ツバメがいる事も分かっているが、それでも観光するかのように、周囲の景色を味わいながら一歩一歩と歩くが、油断はしていない。
ツバメの事を理解しているからこそ、リナはゆったりとしている。
この模擬戦が、自分達二人にとって特別な戦いだというのはお互いの想い……だから、いきなりの不意打ちという、つまらないマネはしない。
お互いが待ち望んだ時間を、最高の形にしたいから、
『グゥゥゥ……』
「ミンクか……」
前菜が出て来るのは予想の範疇。
リナの目の前に突然現れたのは、シオマネキという蟹のように、片手だけ肥大化したゴリラの進化。
世界中で見られた、生物の突然の進化の一つ。
本来は温厚であり、社会性があり、友好を理解出来るゴリラであるが、このミンクはその真逆。
『グゥォォォォォ!!!!!!』
人を見ればすぐに敵意を剥き出しにし、巨木のように太い腕、ティラノザウルスの足のように太い手で、問答無用で襲って来る。
『バンッバンッバンッバンッ!!!!!!!!』
『グゥォォォォォ!!!!!!』
パワードスーツを着用して使うのを前提としたハンドガンの弾を、降り注ぐ雨を払うように、太い腕を前に出して肉盾とし詰め寄って来る。
『バンッバンッバンッバンッ!!!!!!!!』
機関砲で使う弾丸のように太い弾丸は、ミンクの太い腕に全て吸い込まれて致命傷とはならず、
『ブゥオン!!!!!!』
リナの目の前で来ると、巨大な腕をハンマーにして殴り掛かる。
当たればパワードスーツでも一撃で装甲がひしゃげ、装甲がひしゃげれば中の人間は圧死してしまう。
決して喰らってはいけない一撃をリナは、
「そこ」
自分目掛けて放たれた拳を、体を半身にして躱すと、ヒートソードをミンクの足首に突き立てる。




