学園58
ツバメはリナの事が嫌い……という訳では無いはずだが、どこか倫理観という物がおかしく、まるで猫が好奇心で小動物を弄ぶかのような時がある。
「ふぅ……」
ツバメが軍学校に入るまでは、実際の模擬戦をした事もあるし、シミュレーターでの模擬戦もしてた……が、その時はやり過ぎないように大人が見守ってくれていたし、お互いにまだ幼かった。
ツバメの本気もまだ、笑って済ませられる程度であったが、
「何をボーッとしてるの?早く始めよ」
「…………うん」
軍学校に入ってからの、ツバメの本気はまだ知らない。
ツバメに言われるがままに、シミュレーターカプセルの方へと歩き出すリナ。
(天才…最高傑作……)
周りがツバメを呼ぶ時の呼称。
天才と言われ、最高傑作と表現され、非の打ち所の無い呼称だが、
(それでも、あたしと同じ化け物……)
裏では、ツバメの事を化け物と呼ぶ人もいる。
「行こうか」
シミュレーターカプセルの前に立って、ツバメが手を伸ばす。
「うん……」
そう一言だけ応えるとツバメの手を握り、ツバメに手を引かれながら、シミュレータカプセルの中へと連れて行かれる。
シミュレーターカプセルの中に入るとツバメは、リナをリクライニング状のイスに座らせ、
「髪の毛ボサボサ……」
ボサボサになってしまっているリナの頭を撫で、リナは気持ち良さそうに、ツバメの手に自分の頭を擦り付ける。
「ミィオに頭を撫でて貰ったんだ」
「そう…良かった」
ツバメはひとしきり、リナの髪を撫でて堪能してから手を離し、
「それじゃあ……」
名残惜しそうにしながらツバメは、シミュレータカプセルの中から出て行く。
一人残されたリナは、バイザー降ろしてから軽く目を閉じた。
「唯一の欠点は協調性か……」
天才、最高傑作……化け物、そう呼ばれるツバメの欠点は、その性格。
決して他人を見下すとかは無いのだが、他人に対して冷たい……干渉しない所がある。
同じ組織に所属していても、仲間としての意識が無い相手に対しては無関心を貫く。
ツバメのその協調性の無さを改善する為に、ツバメを学校に通わせる事になったのだが、それに伴ってリナもまた軍学校に入学する事になった。
「だから…学校か………………」
自分が学校に通う事になった理由を思い出しながら、リナの意識は遠退いて行くのであった。




