学園52
「何とも不思議な事でな。この地下シェルターは地上と出来る限り似せた環境を造り、太陽に出来るだけ似た光源を用意したのだが、数年もすると精神に異常をきたす者達が現れた。そして、一人の者があのダストボックスに入って自殺すると、連鎖的に多くの者達が飛び込んだ」
「だから鳥かごでは、下層に処理場を造らなかったのですね」
「そうだ。一応あぁやって鉄格子を付けてはいるが、ゴミを落とす為にも広い間隔で造られているから、焼け石に水だな」
疑似的に創られた地下の町、安全を担保されている変わりに、かk義られた空間という制限が人の精神を蝕んだのだろうか。
精神をきたした者達は、ダストボックスに次々と飛び込み、最後の命綱である鉄格子をすり抜けて、死んで逝った……だが、その話は今の小此木達には関係無い、二人は下で轟音を立ててる粉砕機に落ちないように鉄格子にしがみつき、
「降伏!!白旗!!もう終了で!!」
「だから動くな!!もうシミュレーションは終わる!!」
小此木が芋虫のように鉄格子の上を「うにゅうにゅ」と移動して逃げるから、鉄格子が揺れて危ないと、上級性が怒る。
もう小此木を追う気の無くなった上級生は、鉄格子から落ちないようにしながら、小此木に動くなと警告するのだが、
「あっ!!!?」
「だから動くなって言っただろ!!!!」
「ひぇぇぇぇぇえぇっぇえぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
細い鉄格子の上でバランスを崩した小此木は「クルッ」と回って一瞬、ナマケモノののように鉄格子にぶら下がったのだが勢い余って落ちてしまう。
「小此木!!」
粉砕機へと落ちていく小此木に、小此木がシミュレーションの中にいるという事を忘れて、リナが声を上げる。
手足をバタバタさせながら、ほんの少しでも空を飛ぼうと悪あがきをする小此木。
掴む物も、浮かぶ方法も無い小此木は、背中から真っ逆さまにただただ落ちるだけ。
シミュレーター室にいる全員が息を飲み、唾を飲み込み、もうダメだと諦めた時、
『模擬戦終了、模擬戦終了』
端末から「模擬戦終了」の文字が浮かび上がり、粉砕機の上に落ちるという寸前で、小此木の体はシミュレーションの世界から消える。




