学園50
ヒートソードを片手に追い掛ける上級生と、全速力で走って逃げる小此木。
もうそれは模擬戦とは言えない泥沼の争い、ギャグマンガのような光景……ではあるが一応、銃撃戦もしているから、決して逃げ続けたとは言い難い。
そんな冗談みたいな状況になってしまったからこそ、上級生達は初めて見る場所に関心を示し、下級生の方は、一応とはいえ、戦った上で時間切れに持ち込めば金星というのを理解したからこそ、小此木の勝利を応援する。
シミュレーションの中にいる二人には、シミュレーター室の状況を知る由も無いが、
「……こうなれば奥の手だ」
上級生には、この状況が良くない事は分かっている。
パワードスーツの胸に手を当てて、何かしらの操作をすると、
『制限解除、出力を上げます』
一気に加速する。
「うそぉ!?」
それは小此木の計算外、身体的な能力の差は個々人で出てしまうのは仕方無いが、同じパワードスーツに身に包んでいる以上は、最高速はそうは変わらない。
イメージとしては同じ車を与えられて、コースを走るとかのテクニックを競うなら差は出るが、ただストレートを一直線に走るなら差は出たりしない。
それを踏まえて、残りの時間をひたすら走って逃げようと算段を立てていた小此木には、突然追い上げて来るのは予想外で、
「それってどうやるんですか!!!!!?」
「教える訳無いだろう!!!!!!」
このままでは、模擬戦が終わるまでに追い付かれてしまう。
「あぁ、やっちまったなぁ」
「まぁしょうがないんじゃない?逃げ続けてる訳だし」
シミュレーター室の方にいる上級生達は、最後の切り札である出力解除した事をやりすぎという者と、仕方無いという者に別れ、
「あんなのあり!?」
「これは公平じゃない!!」
せっかくの勝ち目を潰されそうになっている、下級生達は不満を漏らす。
「逃げ切れないぞ!!諦めて戦え!!」
「嫌だ!!絶対に逃げる!!」
追い付かれるのは時間の問題となっても、ヒートソードを握って振り返って戦うという選択はせずに、必死に走る。
一歩一歩走る度に、ちょっとずつ少しずつ距離は縮まり、ヒートソードを振れば、小此木の背中を切り付けられるという所まで来ると、
「これで終わりだ!!」
腕を振り上げて、この茶番劇を終わらせようとしたのだが、
「まだだっあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」
小此木は、すぐ側にあった区画毎に備え付けてあるゴミ箱の中にダイブすると、何か変な声を上げた。




