学園48
ツバメの深層の事を根掘り葉掘りしない……そう決めたツバメであったが、指先はまた動いてしまう。
『どんな関係なんだよ?』と文字を打ち込んで、送信アイコンを押そうと指が震える。
「なんだこれ……」
「凄いこんな所が……」
端末の中の小此木を見ている上級生達も目を丸くし、
「ハハハッ、マジかよ!?」
「やった!!やった!!これなら上級生に一泡吹かせられるよ!!」
今まで沈黙していた下級生達も、今は沸きに沸き上がって、彼の活躍に色めき立つ。
ツバメと小此木との関係を根掘り葉掘りしないと決めたからこそ、アイコンを押そうとしている指を、理性で押し留めている美優であるが、
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
「待てこの野郎!!!!!!!!」
端末の中で聞こえて来る悲鳴と怒声に理性が負けて、メッセージを送ろうと指が震える。
それは余りにも呆気に取られる行動であった。
確かに、上級生達から逃げるという選択をした下級生達は何人もいたが、それでも最初は戦う判断をして、追い詰められて逃げ出すという選択肢に移っていた。
戦える所まで戦って、そのまま殺されるまで戦うか、戦えるまで戦って、逃げ出して殺されるか……戦うという選択肢を必ず最初に挟んでいたのに、端末の中にいる彼は、
「最初から逃げるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「だったら追い掛けないでぇぇぇぇ!!!!」
尻尾を巻いて立ち向かおうとせず、最初から逃げ出した、シミュレーションの端を目指して、そこで隠れようとしたのだ。
もちろん、最初から逃げ出した小此木を、上級生達は苦笑いをして見守り、同級生がどれくらいで小此木を仕留められるかという話が上がり、シミュレーター室の中はぬるま湯に浸かるような温度になってしまったのだが、
「んっ…なんだろう?」
小此木が偶々感じた、一つの地面が話を変えた。
歩道を走り、シミュレーションの端を目指していた小此木であったが、突然走らせていた足を止めると、
振り返って戻り、地面を『コンコン』とノックするかのように踏み付ける。
その動きに、端末で観戦していた者達全員が頭に「?」を浮かべるが、その時の小此木も頭に「?」を浮かべていた。
地面に四つん這いになって地面をノックして、違和感の中に更なる違和感を見付けたのか、立ち上がってヒートソードの刃先を突き刺して抉るとそこには、
「……取っ手?」
そこには取っ手があった。




