学園47
(ぬかせ)
お互いに妹分に甘いと、目で口ほどに喋っていたのだが、
「模擬戦が始まるぞ」
騒がしくなってしまった空気を引き締める為に、教官が注意すると、上級生達は口を閉じて一瞬で「ビシッ」と背を正し、それに習って下級生達もお喋りを止め、上級生をマネておずおずと背を正す。
みんなの騒ぎに乗じて、目で会話する事で教官から注意されるというヘマをしなかったツバメと美優であったが、こうもピッシリとされていては、体を前屈みにしてアイコンタクトをしていたら目立ってしまう。
ツバメは、あれ程美優と会話していた目を端末に向けて、あの少年の模擬戦を見学しようとしたが、
『トットットッ……』
美優との回線を開いて、指を素早く動かして文字を打ち込んでメッセージを送る。
『アイツか?お前の大切にしている、もう一人の奴』
するとツバメも、素早く指を動かして文字を打ち込んで、メッセージを送り返す。
『そうだよ。アタシの大切な人、かけがえの無い人だよ』
端末の中に映る、泣き顔を晒している小此木の頬を愛しそうになぞり、ツバメは恍惚とした、色目たった表情で彼だけを見つめる。
(これはガチ……なのか?)
自分の相棒であるツバメに彼氏がいるというのは、別にどうでも良いが……何というか腑に落ちない。
ツバメに彼氏がいる事に嫉妬している訳では無い……二度も同じ事を言うと、気にしているように思われるかもしれないが……いや、気にしているのは事実であり『どんな関係なんだよ?』と不躾な質問を打ち込んで送り付け……
『模擬戦が開始します。映像記録を行いますか』
不躾な質問を送ろうとした所で、端末から本当に送るのかと止められてしまう。
不躾なメッセージを送る為のアイコンが、新たなアイコンで防がれている。
模擬戦の観戦をしないと押して、メッセージを送ると押せば、ツバメと彼の関係を詳しく聞けるのだが、
(……何をしているんだか)
出歯亀みたいな、ツバメのプライベートを覗き見しようとしている自分に呆れる。
「…………?」
端末から視線を上げて、リナという少女を見つめた。
リナは、会った事も見た事も無い人に見つめられて首を傾げるが、美優は、リナの事をツバメからよく聞かされていたので知っている……知っているからこそ、
(一度も話を聞かされた事が無かったから、気になったんだよな)
知らなかった彼を、気にしたのだろう……そう思って納得する事にした。




