学園46
小此木を無理矢理シミュレーションにぶち込んだ上級生は、手間が掛かったと、仲間の上級生達に肩をすぼめさせると、
「粋が良いの奴もいるさ」
彼の友達が、茶化しながら笑って返す。
「粋が良いのは、魚だけで十分だよ」
上級生は、後ろ手で合図を返してからシミュレーターカプセルに入ろうとしたが「ふとっ」足を止めて少し間を開けると、
「合成じゃなくて、本物の魚を食いてぇな……」
他愛も無い一言を残してから、足を踏み出してカプセルの中へと入っていった。
それは小此木の事を魚に例えたとか、何かしらの隠語とかではなく、本当に単なる気まぐれから出た言葉であったのだが、
「魚かぁ、最近食ってねぇなぁ……」
「肉類も何だかんだで合成が多いしな、魚ってなるとちょっとな……」
「毎年、養殖用の区画が出来るって噂が流れるけど……出来たとしてもなぁ、うちらは食えないだろうな」
「まぁ、普通に考えたらその施設を造るより、他の施設を造る方が先決だって分かるけど……やっぱりなぁ、食事は大切だよ」
彼が残した言葉は何故か、シミュレーター室内の様子をおかしな事にさせてしまい、それはリナとミィオも例外では無かった。
「魚スか……昔に食べたっス……」
「えっ!?天然の魚を食べた事があるの!?」
「あっ…アネキが燻製にした魚を持って帰ってくれたんスよ」
「良いなぁ……ツバメが地上に降りた時は、写真だったなぁ」
「地上の写真スか、それだって良い物ッスよ」
魚という単語を皮切りに、シミュレーター室では他愛の無い話に花が咲いてしまう。
そんな盛り上がっている中でツバメと美優だけは声を出さず、
(あの時は大変だったね。基本計画とは違う行動をするんだもん)
ツバメがアイコンタクトで、アネキに細めた目を向ける。
(お前だっておんなじ様な物だろ……)
目を細めて楽しそうに目配せを送るツバメに、アネキは睨みを効かせて、こっちを見るなと伝えるが、それでもツバメは楽しそうな目付きを止めない。
二人は顔を見合わせて、にらめっこをしていると、アネキが顎を「くいっ」と上げて、
(お前だって妹分の為に、普通の場所じゃ取れない写真撮りたいって、作戦範囲外に連れ出しやがって……誰が協力してやったと思ってんだよ)
(感謝してる。美優)
アネキこと美優が、苦労させられたと訴え掛けると、ツバメは笑顔で感謝を伝えた。




