学園45
沸き立っている上級生と、沈黙している教官の間に挟まれても、小此木は何食わぬ顔をして、平然と腕を上げたままで教官の言葉を待っている。
上級生達が自分に対してとやかく言っているのを聞いてるはずなのだが、それでも、自信満々に手を上げ続ける小此木の心臓は毛ではなく、鉄の棒が生えているに違いない。
教官は「ゴホンッ」と、わざとらしく咳払いをして、沸き立つ上級生を静かにさせてから、
「言っとくが、この催し物は上級生が組んだ物であるが、私達教員も協力をしている」
この催し物が外で行われいるお遊びと違い、学校が絡んでいる物だと教える。
「それに、お前が言っている事は間違っている。救助隊と言っても、戦場にいる仲間を助けないといけない。そうなれば救助隊だろうが何だろうが、状況によっては、お前にも戦闘を行わせる」
教官はこれは当たり前の事だと、声の抑揚も変えず、声色も付けずに言い切った。
「…………」
その言葉と雰囲気が冗談では無いと、理解したのか小此木は腕を下げて、
「い…いやぁ~~~!?」
悲痛な叫び声を上げたかと思うと両手で頭を押さえ、どこぞかの漫画の様にイヤイヤと身体全体をくねらさせる。
どうやら小此木は自分が非戦闘員、救助隊を目指している事を理由に、この惨劇から逃げ出そうとしていたらしい。
その目論見が外れて慌てふためく様子を、
「演技なんだか本気なんだか……」
リナは頭を痛そうに抱えて、小此木の大袈裟な動きを見ていた。
そんな嫌がっている小此木を、対戦する上級生は容赦無く手招きし、
「ほらっ、良いからおいで」
「イヤァ~~止めてぇ~~!!」
見逃してあげる等、甘いマネをする事無く、シミュレータカプセルという名の、蟻地獄の中に連れ込んでしまう。
それから最初の数分間、カプセルの中から、
「殺される~~人殺し~~シミュレーションでも人を殺したら人殺し~~!!!!」
物騒ではあるが、間違ってはいない事を叫び、
「天に召します我が主よ、どうか私を御守りください……ナムアミダブツ」
最後には、困った時に頼る神様達にケンカを売るような事を言って嘆いていたが、仮想空間の中にぶちこまれると、嘆きは止んで静寂が訪れた。




