学園44
その教官を呼びつける行為を見てリナは、
「な、何してるの小此木!?」
まるで、自分がしたかのように血の気が一気に引いてしまうが、それはリナだけでは無い。
元々沈黙していた下級生達は別として、ガヤガヤと賑わっていた上級生達すらも一瞬で黙る。
やる事はもう決まっている状況で、教官に対して何かを言うというのは、この仕打ちに対して反論しようとしているのかもしれない。
上級生は、下級生が教官に対して失礼な事を言えば、すぐにでも取り押さえられるようにと前のめりになり、口元に注視する。
一瞬で凍り付くシミュレーター室だが、教官は冷めきった空気を気にせずに、自分を呼んだ小此木の方を向き、
「どうかしたのか」
流れを切った小此木に対して特に怒る訳でも無く、何を聞きたいかのか、それだけを聞く。
それは教官からの発言の許可。
物を言って良いという許可を貰った小此木は、手を上げたまま、
「教官、自分は救助隊に所属希望しています。戦闘隊と違って戦闘を行う必要は無いと思います」
小此木は自分の所属希望には戦闘は必要無いと言い張ってみせる。
すると、その発言がされた途端に、並んでいた幾人かの同級生がピクッっと肩を震わせて、聞き耳を立てる。
どうやら小此木と同じように、戦闘を基本としない生徒がいるらしい。
「あぁ……確かに戦闘隊を目指していないなら、そこまで模擬戦をやる必要は無いッス……かね?」
そう言って、さっきまで小此木に対して興味津々でいたミィオが急に素っ気ない雰囲気になる。
それは、小此木が妖しい笑みを浮かべていた理由が、波乱を起こすような事をするのではと期待していたからであり、妖しい笑みの中身が対した内容では無かったので、興味が急激に失せてしまった。
ミィオはつまんなそうに、リナに顔を合わせて、
「彼には悪いスけど、確かにろくでも無かったッス」
残念そうに苦笑いをするが、その苦笑いには勝手に彼に期待して、勝手に落胆している自分に対してにも、向けられている様にも見えた。
「ふぅ…それか……」
「前に馬鹿な奴がいたから焦ったよ……」
小此木の質問に聞き耳を立てて、凍り付いていた上級生体は「ホッ」と胸を撫で下ろすと、凍てついた氷を溶かすかの様に意気揚々と話し始める。




