学園37
上級生が動いて来た所で、こちらも動く……理想はそうなのだが、
「やっぱり最初って可哀想」
「そッスね」
一番最初の勝手の分からない、同級生にそれを求めるのは酷という物。
リナとミィオは、追い詰められている同級生を見守り、状況をモニター端末で確認しながら、画面に出ている同級生と上級生の位置情報を見て、
「接触まで後、百メートル……」
「そろそろ蜘蛛の巣に引っ掛かるッス」
これから起きる事など何一つ予想出来ずに空を舞っている蝶が、鬱蒼とした木々に、綿密に張り巡らされた蜘蛛の巣に向かっていく様子を思い浮かべている。
時間制限がある中で、蜘蛛は何一つ焦らないで獲物を待つ。
ただ息を潜めて、後十分もすれば、この模擬戦が終わってしまうという状況になっても、焦る事無く待ち続けていると、
「上級生が決めに来たッスよ」
ミィオの言葉を皮切りに、端末の中の上級生がノソノソと動き出す。
さすがの上級生も、制限時間が差し迫って焦りの色を見せたかと思うかもしれないが、
「蜘蛛みたいに狡猾……」
蜘蛛の巣に引っ掛かった、獲物を捕らえる為に動き出したのだ。
『ガシャンッガシャンガシャンガシャン!!!!!!!!』
鋼鉄の鎧が、ボロボロになったアスファルトの上を走れば、音が鳴るのは当たり前の話。
下級生のパワードスーツが走る甲高い音を、上級生のヘルメットが音を拾い、下級生が迫って来ているのを教え、
「蜘蛛みたいに狡猾……」
それに対して上級生は、足音を出さないようにゆっくりと進むのもそうだが、足に布を巻いて、音を拾われないようにしている。
上級生の動きは、まさに蜘蛛そのもので、下級生の蜘蛛の巣に引っ掛かった音は逃さず、自分の音は聞かせない。
同級生は、上級生の位置が分からずに四苦八苦しているのに、上級生には下級生の動きが明確に分かる。
下級生が、自分の方に近付いているのに合わせて、破損しているコンクリートの物陰にゆっくりと移動し、コンクリートと同化するかの様に、体をコンクリートの壁に身を寄せて息を潜めると、ポジションを取るのを終える。




