学園32
自分を恐れて引いたはずのミィオの手が、自分を抱いてくれている……リナは、この状況が掴めずに呆けてしまうが、
「アネキにしごかれていから、腕は全然平気ッス」
ミィオは、聞かれてもいない事を勝手に説明すると、リナの顎に手を添えて、顔を上げさせようとしたが、
「恐くないの……」
リナの怯えた、小さな声が聞こえると手が止まった。
震えるリナ、そこに何のトラウマがあるのか分からないが、それでも、ミィオは優しい声で、
「ふっふっふっ……自分はもっと怖い事を知っているスから、全然平気ッス」
「でも……」
「女の子同士でも、いきなり人の服を剥くのはダメッス。これ以上は、教官に怒られるッス」
「はぅっ……」
顎に添えていた手を、頭に乗せ変えると、リナに有無を言わせないようにグシャグシャに頭を撫でまわす。
どうやらミィオが腕を引いたのは、リナに掴まれて、腕に出来たであろう跡を見せたら傷付くと思って、体を引き離したらしく、リナの事を恐れていた訳では無かった。
リナのボサボサの髪をさらにボサボサのボサボサにした所で、
「後で、これ使いなよ。すぐに効くから」
リナに、小此木と呼ばれた男子生徒が、こっそりとミィオのポケットの中に何かを入れる。
「何を……」
男子生徒、小此木に、何を入れたのか聞こうとした時には、彼は既に背中を向けて離れてしまっていた。
ミィオは時間的にもタイミング的にも、もう小此木に声を掛けるのは無理だと判断すると、彼から視線を外し、散歩中に行きたくない方に連れて行かれそうになって、拒否する犬の様に身を固めているリナを、
「ほれッス!!」
「ぐぇっ!?」
コチラも強制的に首輪を引っ張っていくご主人様の様に、リナの顔を上げて壁の方を見させる。
「……良いか。壁にある差込口に自分のパイロットカードを」
教官は律儀にも、彼女等三人が自分達で収拾を付けるのを見守ってから、説明を始めた。
ミィオは、リナの顎から手を外すと、ポケットの中からパイロットカードを取り出すと、教官の説明通りに、片手で器用に操作手順を踏んでいくのだが、
「…………」
リナは自分のした事もそうだが、ミィオが怒りもせずに、優しく受け入れてくれる事が心痛かった。




