学園22
そんな睨み付けられて怯えている下級生と、睨み付けられてアタアタとしているのを見て、笑っている上級生の寒暖差の中で、ポニーテールに付き添っていた少女だけは、涼しいそうにアネキから視線を外さず、
「何かあったんスか?」
不機嫌と言う名の砦の、突き崩し作業に入る。
「早く並ばないから、いけないんッス。下級生が怯えてるから、睨むのは止めた方が良いッスよ」
かなりドストレートな事を言う辺り、美優と少女の中の良さが伺える。
「……ない」
美優は、少女からの投げ掛けに険しい顔を崩すさ無いが、それでも沈黙の壁にヒビを入れられて、心の声を漏らす。
「何が無いんスか?まさかパイロットカードスか?」
「無いんじゃない、居ないんだ」
「いない……あっ、確かにいないッスね」
少女は、ヒビの入った沈黙の壁にクサビを打ち込んで、さらに会話を引き出した所でアネキの言う通り、あの、赤い髪を持った少年がいない事に気付く。
赤い絵の具で塗りたくったかのような赤髪は、黒髪、金髪、ブラウンという自然の色と違い、とんでもなく目立ち、こうやって下級生が一列に並んでいれば点呼を取らずとも、居ないと分かる。
少女は、下級生から視線を外して壁掛けの時計を見てみると、集合時間まで残り五分を切っていた。
「いきなり心象悪くなるのは、可哀想ッスね」
この催し物は上級生だけでなく、教官もいるのは、楽しい楽しい催し物ではなく、生徒達の評価をする為であり、シミュレータ室まで来るのも評価の一つ。
シミュレータ室に来る方法は何でも良い、リナや少女のように、上級生との伝手でここまで来ても良いし、廊下に張り出されている案内図を頼りにしても良いし、学園の端から端まで探って、ここを見付けも良い。
唯一良くないのは、シミュレータ室で行われる催し物の時間に間に合わない事。
この催し物のコンセプトは、自分の知らない場所でも、自分のやり方で辿り着くという事で、壁にはこ この案内図があるし、周りの上級生にも、ここの事を聞かれたら教えてあげ、頼まれたら連れて来て良いとまで言われている。
ここまでお膳立てされていて、辿り着けないというのは、本人の対応力が無いという事となってしまう。
「赤髪は遅刻スか……まぁ、赤髪は一人みたいでしたし、迷子になったって事……」
「しゃーねぁ……」
「あっ…アネキそれはルール違反ッス!!」
美優は、赤髪の少年が辿り着けない事にやれやれと肩をすくめて、シミュレーター室に背中を向けて、出て行こうとしてしまう。




