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狂犬駆除のために設置された毒エサのそばで動かなくなったクッキーを見つけたのはその朝だった。僕は夢から覚めて、のそのそと寝室からリビングに行き、パンとシリアルを平らげた。そして、クッキーにエサをやったり、ペットシートを換えようとして廊下に出たとき、ようやく僕はバリケードの中にクッキーがいないことに気が付いた。バリケードのダンボールとダンボールの間が引き裂かれたかのように穴が開き、その中は空っぽだった。僕は焦って、家を飛び出し、クッキーを探し回った。ゾンビ犬となったクッキーが人を襲っていたら大変だ。だが、市の職員の連中に見つかってクッキーが殺処分されてしまうのはもっと嫌だった。僕は汗だくになりながら住宅地を駆けまわった。どこにもいない。僕は疲れて、とぼとぼ歩き、なんとなくクッキーとよく一緒に歩いた散歩道を辿っていると、安房美船村駅のロータリーのそばに設置された毒エサの傍らで眠っているクッキーを見つけた。
「おい、クッキー」
呼んでもクッキーは全く動かない。体を持ち上げると、クッキーの体はひんやり冷たく、首や手足は力無くだらんと垂れ下がった。
「クッキー…」
顔を見ると、クッキーは目を閉じて安らかな表情だった。毒エサを食べる前から既に“死んで”いたが、とうとうクッキーにも真の眠りが訪れたようだった。まさかゾンビ化していると分かっていて、自らここまで来て毒エサを口にしたのだろうか。最後の最後まで、本当にいい犬だった。僕はクッキーの亡き骸をぎゅっと抱きしめた。




