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在野の聖女は何処なりや? 我、聖女にならんと欲す  作者: 白麦茶
1章 彼女は決意した

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9話 交戦

一部ショッキングなシーンがございます。

ご注意ください。

「がっ──!?」


──痛い。

後頭部を殴打された衝撃で地面に倒れ込む最中、アンジェの脳を一番に占めたのはその思考だった。

完全に横倒しになり、目の前を草が覆い隠してからようやくものを考える思考力がアンジェに戻ってくる。


──何が起こった?

後頭部を殴られて倒れた。

おそらくは警棒のようななにか。

──誰がやった?

おそらくはエミリー。

魔獣だったら倒れるだけじゃすまないはず。

──どうして?

…………どうしてなのだろう?


そう、どうしてなのだろう。

下手人も手段も分かっている。

けれども動機が分からない。

エミリーとは今日初めて出会った仲だ。

とはいえ恨まれる覚えはないし、仮にも同じ神を信仰する同門。

他の雑多なハンターに比べたらまだ安心できる方だ。

だが現実は、その安心できる筈の先輩ハンターに不意をつかれている。


(仲間の……裏切り……?)


脳裏に蘇るのは先のボウザンの台詞だ。

そういえばあの男はどうしているのだろうか。

目の前でこのような凶行が起こったのに、一体何をしているのか。

その答えはすぐにアンジェの耳まで届いた。


「で?今回はソイツでいいのか?姐さんよぉ」

「ええ。右も左も分からない甘ちゃんだし、たっぷりと現実を教えてあげて頂戴」

「あいよ」


冷たい声だった。

それまでは草臥れ気味だがどこか優しい感じだったエミリーの声は、思わず背筋がゾッとするような乾いた声に変わってしまっていた。

先程までとはまるで違う変貌っぷりに慄いていると、ザクザクと草を踏み分けて男が近づいてくるのがわかった。

その男は倒れていたアンジェをむりやり起こして胸ぐらを掴み、


「……ひぐっ!?うっ……、づっ!?」


一回、二回三回と、肉を叩く音が響く。

アンジェの頬を平手で勢いよく打ち据えた男──ボウザンは、アンジェの胸ぐらを掴んだまま木にアンジェを押し込んで言った。


「さてと、ルールを説明しようかお嬢さん。

逃げようとしたら殴る、余計なことをしたら殴る、俺が何となくその気になったら殴る。

シンプルだろ?」

「……づっ、な、なんでこんな……」


一閃、呟かれた問いの答えはやはりビンタだった。

首が大きく動くアンジェだったが、木に抑えつけられているせいで倒れ込むこともできない。

掴まれた胸元が痛い。怖い。

ジワジワと痺れる頬が熱い。こわい。

千切れになった感情で目が眩む中、クスクスと冷たい笑い声がアンジェの耳まで届く。


「ダメじゃない。ボウザンが折角ルールを話していたのに。

人の話はきちんと聞くものよ優等生さん」

「……ッ!?」


ルールなんてどうでもいい、兎に角付き合って居られない。

だったら無理やり脱出するまで。


(ソッコーで『評価値』叩き出しつつ、魔術で不意をつく!

骨が折れるかもだけど、そこはまぁお互い様ってことで……!)


負担が大きいからあまりやりたくないのだけれど致し方ない。

魂の奥底から魔力を汲み上げて全身に駆け巡らせる。

行き巡った魔力によって回る回路は喜びとともに『評価値』を高めていく。

はっと何かに気がついたかのような表情を見せる男だったがもう遅い。

余りある魔力をいなしてアンジェの口は詠唱を紡ぐ。


「"私は祈る。揺るがぬ大地よ隆……っぁぁぁああああ゛あ゛あ゛っ゛!?!?」

「あらあら、もうルール違反?困った優等生さんね」


————いたいいたい痛い頭が痛い。

頭の中をかき乱すような痛みのせいで何もできない。

気がつけば回路を満たし回していた魔力も、唱え発現仕掛けていた魔術も吹き飛んでしまっている。

何かを知っているが故に愉しそうに嗤う女に向かってにらみつけると、今度は男に平手で頬を張られた。

その様子が余程お気に召したのか、含み笑いする女の声がより一層深まったことが腹立たしい。

ぶたれて熱を帯びたほっぺが痛いがそれでもエミリーに強い眼差しを送っていると、エミリーは楽しそうに口を開いた。



「もう何発も打たれてるのに元気良いわねぇ。普通は最初の奴で心折れるわよ」


「……さっきの頭痛、突然起こったにしては再発もせず、痛みもそこまで尾を引きませんでした……。かと言って魔術ではない」

「気になるところはそこなの?どうでもいいじゃないそんなの」

「……二人に詠唱する様子はなかった……上位の術者であれば、詠唱破棄も出来るでしょうけど、そうとも考えづらい……。いったいあれは……?」



耳に空いた穴がうずく。

ピアスが魔術に干渉した、となるとピアスは魔術阻害用の魔導具ということになる。

しかしピアスにはすでに広範囲サーチに引っ掛かりやすいようビーコンの役目となるための式が刻まれているハズだ。

一つの魔導具に複数の機能を載せることは不可能ではないが、魔導具の大型化とコスト増は避けられないのが実情だ。

よっぽど研究開発が進めば小型には持っていけるが、それでもコストダウンはなかなか進まない。

そんな高価なものをわざわざ用意した挙げ句に、演技までして取り付けさせてこの状況をセッティングした。

そこまでやる執念にアンジェは顔を白くする。

聖女を目指しているとはいえ己の身は清廉潔白誰にも恨まれてなどいない、と開き直れる程の度胸はアンジェにはない……いやまぁ自発的に恨み買う真似は自分的にはやってないはずだが。

それでも目の前の二人は今日が初対面なのだ。

ここまで大掛かりな復讐をされるいわれはない。


「……魔術阻害にロケート機能付きピアス……どこでそんな高価ものを……」

「あら?そこまで高くないわよコレ。

だって家畜用の量産品、それの中古ですもの」

「家畜……用……?」


エミリーが放った単語が一瞬、理解できなかった。

衝動的に、耳が裂けてでも家畜の証(ピアス)を外してしまいたい。

自分の耳が何だかとても汚らわしく思えてならない。

内心、ピアスデビューしたし色々試してみたいと思っていた自分が馬鹿らしい。


「放牧してる牛や豚の位置を示すロケート、暴れても抑え込めるように抑制機能……ね?それと同じでしょ?」

「確かに同じ……でも、なんで家畜?家畜に、ピアス……?」

「ああそこからして知らないのね。ピアスでタグ付けして管理するものなのよ家畜って。そんなことも知らないなんて、やっぱり勉強しかできない優等生さんなだけあるわね。

ほんと常識を知らない……はっら立つ」


草臥れた衣装の女神官はそう吐き捨てると感情の抜け落ちた顔を一瞬覗かせて、


「ねぇあなた。どうしてハンターになったのかしら」

「…………それは」

「あなたのことは知っていたわ。

アンジェ・スプラウト、魔導神官課程が生んだ若き才媛。かねてより理論だけがあった連鎖詠唱の実用化に大きく貢献した天才。

望めば教会幹部にも神将にも、地方のボスにもなれる逸材……そんな御大層な人がどうしてハンターになったのかしらね」


■□■□


何故アンジェはハンターになったのか。

そんなものはアンジェ自身の夢(聖女になりたい)を叶えるための手段なのだが。

だがしかし、


「……それってあなたに関係あります?

あたしが何故ハンターになったのかなんて、エミリーさんには関係ないでしょ……あづっ!?」

「関係あるに決まってるでしょうが。

教会からハンターに出向する人は多い……けれどその理由は厄介払い。

抑えつけられない奇人変人か、実力のないゴミを片付けるゴミ箱……それが教会から見たハンターよ」


衝撃を受けた頭がぐわんぐわんと揺らいでいる感がする。

顔を顰めているアンジェの様子を他所に、なにやら思いの丈を吐き出しているエミリーは目を血走らせながら言葉を吐いた。


「私だって夢があったのよ。

聖女になれと、それが無理でも聖女を助ける魔導神官になれと、何年も何年も何年も!そう言われ続けて修行したのに、私が行けたのはこんな掃き溜め(ハンター業)

誰が好き好んでこんなキツくてクサくて危険な仕事やるのよ私はそんな馬鹿じゃない」

「あー、一応俺もそのキツくてクサくて危険なハンター業なんだがよぉ」

「あなただけは別よ。あなたがいなければ私はとっくに野垂れ死んでた……本当に頼りにしてるわ」

「だとよ。男冥利に尽きるよなぁ、なぁオイ」


女に頼られていることで自尊心が満たされたのか、鼻の穴を広げてボウザンが尋ねてくるが心底どうでもいい。

どうせあの手の女は他にも頼れる男が無数に居そうなもんだが、それを指摘してお礼にビンタをもらうのは流石にごめんである。


「私は教会のために生きてきた……今更他の生き方はできないし、その教会がハンターをやれって言うなら汚れ仕事でもギリギリまでは我慢できるわ……。

でもそんなところに何でもできて何にでもなれた人が、面白半分に来たらどう思う?」

「…………」

「あなたがハンターになるって聞いたときは喧嘩売ってるのかと思ったわ。

ねぇアンジェさん?能力が劣った人達の中に入って何がしたかったの?

アテクシはこんなにも凄いのよってマウント取り?お山の大将ごっこ?男共にチヤホヤされたかった?

ねぇどうなのよ黙ってないで答えなさいよ!!」


ようやく胸ぐらを掴んていたボウザンの手から開放されたアンジェはノロノロと背中を木に預けながらその場に座り込んだ。

エミリーはその腹の中を思いっきりぶちまけるかのように、血を吐くかのような迫力で本音を語った。

だったら、こちらも本音を思う存分吐き出すことにしよう。


「そう、ですね……だったら本当のこと言いますけどね。

ぶっちゃけあなた達島流し組の事なんてどーでもいいです」

「へ……?」

「あたしがハンターになったのはあたしの夢を叶えるためにハンターになることが必要だったから。

他にどんな人がハンターになっていても、あたしがハンターになることに変わりはない。

だから別にどんな人が教会からハンターギルドに行ってるかなんて興味ないです。

能力が低い人が多いと言われてもへーそうなんだで終わりですよそんなの」

「…………」


懸命に開けようとした箱の中身がスカだった、あるいはともすれば吹き出しそうな感情を抑えている為なのだろうか、ストンとエミリーの顔から感情が抜け落ちた。

それもそうかと、どこか冷静にアンジェは一人考える。

それこそ彼女自身が挙げたように、マウント取ってくるだとかみたいな分かりやすく嫌える動機があれば遠慮なく彼女は激昂することが出来ただろう。

しかし現実には先達ハンター(エミリー)の事なんて眼中にないというのが答えだ。

悦に浸りたかったんだろう?と高を括ってたはずが宛が外れた。

目算が外れれば大なり小なり思考に空白が出来てしまうのが人間の性だ。

まぁ、盛大に喧嘩を売ってしまっていることには変わりないのだが、そこはほら本音を望んだのはあちらさんなのでアンジェとしては煽るつもりはないですと白々しく言うしかない。

ここでそれを言ったところで帰ってくるのはビンタだろうけど。

むしろ平手で済めば御の字か。

だが意外なことに、頬に猛烈な一撃を貰うことは無かった。

より正確に言うとボウザンはヤレヤレと肩を竦めて近づこうとしたのだが、エミリーがそれを止めたのだ。

しかし暴力を振舞うのを止めたからと言って、今更この女が善性に目覚めるはずがない。

より大きな暴力をぶつける為のタメであり、本格的な私刑行う開始の狼煙に違いない。

そのすこし草臥れた声で、エミリーは切り出した。


「ボウザン」

「おうよ」

「もう、やっていいわよ」


その許可の効果は抜群だった。

執着や欲求が粘液になって滴り糸引くかのよう笑みを浮かべたボウザンは、その神官の許しの言葉を得て素早く動き出す。

身に帯びてきた短剣を引き抜くと、再びアンジェの胸ぐらを掴み短剣で胸元を引き裂いた。

白い柔肌が外気に晒され、男の不躾な視線が谷間に突き刺さる。


「ひっ……!?きゃぁ!?、がっ!?」

「叫ぶなっての。魔獣が来るだろーが」

「大丈夫よー。探知なら張ってあるから魔獣が来たら分かるわ。

ゆっくり時間かけて、その礼儀知らず常識知らずの小娘に現実を教えてあげて頂戴」


いやだイヤだ嫌だ。

ずるずる先延ばし出来ないかと思ってた事がいよいよ始まってしまった。

手足を振り回しても大の男を押しのけられない。

魔術はピアスのせいで使えない。

そもそも何度も殴られたせいで目の前の人間が怖くて四肢に力が入らない。


「オイオイ暴れんなよ。

経験ちゃんと積んで大人になろーぜ?」


胸元に続いて腹部を切り裂かれ、へそを晒すことが気持ち悪い。

興奮した男の口から、肌に滴り落ちるヨダレが気持ち悪い。

それを背後で見守り、愉悦で顔を歪める女の視線が気持ち悪い。


(何か……何か無いの!?)


助けを求めるようにアンジェは辺りを見回すが、当然のように突然現れるヒーローなんてものは表れない。

そもそもこの森は強力な魔獣を狩り尽くす為に人の出入りが制限されている。

敏腕ハンター達は森の奥に居て、助けになんて来るわけがない。

それでも、アンジェは諦めずに視線をさ迷わせて──。


「……て」

「あん?あー助けならこねーぜ。

エミリーが探知魔術張ってんからよぉ。

助けが来たらすぐに分からぁ。

そもそも立ち入り規制中だろーが」


そう、今この森にハンターはほとんどいない。

普段なら居ないはずの強大な魔獣を間引くために少数精鋭しかこの森には居ない。


「……げて」

「ムダムダ。仮に魔獣が来ても私には分かるわ。

この森に居る強力な魔獣でも探知出来る自信位ならあるわよ」


そう、探知魔術というものはよくできているものだ。

自身より格下なら勿論、術者よりも格上の存在であっても立ち所に居場所を察知する事ができる。

その目を誤魔化すには余程の実力か、特殊な技能が必要だ。

では、

では、

果たして、

アンジェを見ている二人の死角、後方にある背の高い藪の上から覗き込んでいるあの猫の顔は一体何なのだろうか。

アンジェは目を見開き、声を張り上げた。


「──逃げて!!」

「なーに言ってやがる。つか、誰に言っごっ、ぎゃあああ!?」


瞬間、アンジェの白い柔肌を弄りいよいよ膨らみに手を伸ばそうとしていた男の体が、なにか大きなものに跳ね飛ばされて宙に舞った。


■□■□


辺りにぐるるっと低く獣が唸る音が響くと同時に、それまで感じなかったことが不思議なほどむせ返るように濃密な獣臭が立ち込める。

辛うじて服としての機能を喪っていない神官服を纏った少女はへたり込んだまま動けない。

先程まで凌辱を受けそうだったショックから立ち直りきれてないというのもある。

だがそれ以上に目の前で大の男一人を軽々と跳ね飛ばし、この場に乱入した存在に圧倒されて指一つ動かす余裕すらない。

その存在は鳥のように羽毛に覆われていた。

その羽毛は背中を虎柄に染めている。

それは良い。

体の一部が縞模様の巨鳥だってこの広い世の中を探せば居るだろう。

アンジェは探すつもりになれないが、まぁ覚えていれば話のネタにはなるかもしれない。

だが、その鳥が掲げるべき頭にあるのは鶏冠ではなく三角を基調にした耳であり顔つきであり、嘴の替わりに立派なヒゲを生やしたまごうことなき猫頭であった。

鳥の胴に猫の頭が乗っている……それだけでも異形なのに、更にその獣には立派な尾羽根ではなくフサフサとした狐の尾が生えている。

背中が虎縞の鳥なら居るかもしれないが、流石にここまでごっちゃごちゃした獣がこの世にそう居るとは思えない。

となると、この存在はただの動物ではなく世界が産み落とした澱みの凝集体──すなわち魔獣に他ならない。

その証明についてはすぐに横から声がかかった。


「がっ……くそっ!

なんでこんな浅瀬に鵺が居るんだよ!?

鉄等級がパーティ組むレベルだぞオイ!!」


よろめきながらも立ち上がり、腰の剣を抜いて構えながらボウザンが悪態をつく。

今し方大きく体当たりで撥ね飛ばされただと言うのに、この立ち上がりの速さは流石と言ったところか。

だがその構えはアンジェの素人目から見てもガチガチの不格好で、何より表情が真っ白に引き攣っている。

それもそのはず、鉄等級とはボウザンが属している硝子等級のそのまた更に上。

経験を積み実績を重ねた実力あるベテランハンターが冠する位階なのだ。

そんな実力者がパーティを組んであたるのが定石の魔獣を相手に、硝子等級が単身勝てる道理などない。

しかし、鵺は既にボウザンに狙いを定めている。

彼がこの場にいる獲物の中で最もマトモな戦力である事なんてお見通しなのだろう。

例えそれが、3匹いる虫ケラの中でまだ立派に見えるカブト虫くん程度だとしても。

魔獣の視線に込められた気迫、否、殺気に気圧されて思わず男が後ずさる。

男の体重が踵に掛かった瞬間、獣の姿がブレ――突如中空に浮かんだ透明な壁に正面から鵺は激突した。


「なっ──!?」

「──っ!?」


いきなり現れた障壁に大きな音を立てて頭から突っ込んだ鵺だったが、応えた様子もなく大きく飛び退って距離を取る。

やがて透明な板状のそれは虚空へと消え去ったが、獣の警戒心を刺激するには充分だったようだ。

猛獣の突進を阻んだ物、それは魔術によって作り出されたものに他ならない。

そしてその魔術の発動者はいつの間にかボウザンの背後に回り込んでいた。


「【水晶壁】か……助かったぜエミリー、ナイスタイミングだ」

「別に構わないわ。

それより退くわよボウザン。

餌ならそこに転がっているのだから、今なら逃げられる」

「いーやそうも行かねぇ……癪だけどな」


冷たい目線と共に未だ腰の抜けているアンジェを指差すエミリーだったが、意外にもボウザンは頭を振って否定してきた。

覚悟を決めたのか、愛剣の柄を握りしめたボウザンは今度こそ、自身が鍛え上げてきた信ずるに足る剣の構えを取る。


「鵺ってのは番いで産まれ行動するもんなんだよ。

猫頭がそこにいるってことは近くに必ずもう一匹居るはずだ」

「じゃあ何?小娘一人じゃ魔獣二匹のお腹は膨れないから獲物をもっと捕まえたいってこと?」

「そんなとこ……だなっ!!」


瞬間、二人目掛けて打ち据えられた翼を振り下ろされた白刃が迎え撃つ。

巨翼をなんとかいなした剣撃は、右左と続くもう一撃を天へと逸らすように弾き返す。

しかし魔獣も食わせ者。

翼を払われるならば巨体で圧し潰すと言わんばかりにタックルを仕掛け──


「壁ぇ!」

「Repeat【水晶壁】!」


先程現れた物よりも小さく薄く脆そうな障壁がボウザンと鵺の間に割り込むように出現した。

頼りなさそうなその壁は、僅かな時間であるものの魔獣のタックルを食い止めきり、その僅かなスキを突くように剣士が魔獣の細首に斬撃を叩き込む。

叩き込んで……羽毛一枚切り取ることも出来ずに弾き返された。

攻撃を弾かれよろめいた剣士と、タックルを防がれ体勢を崩した魔獣は、お互いに距離を取って様子を伺った。


「〜〜っ!?クッソかてぇなオイ!

どんな『評価値』してんだよ!」

「強化でも掛ける?まだ突破の見込みがありそうだけれども」

「いや駄目だ。兎に角この獲物は面倒だと思わせればそれでいいんだよ。

半端な傷なんてつけたらそれこそ最後までやらないと気がすまないってなるぞ」

「タイミング見て壁を張るのとっても面倒なんですけど。かっこよく倒してくれない?」

「おうよ、かっこよく倒してやらぁ。

だけどよ俺の『頑強』だと一撃喰らえば半殺しだからよ。

そこはナイスアシストに期待してるぜ」


軽口を叩きながら息を整え、魔力を滾らせる二人。

鵺が再び飛び掛かったのは次の瞬間であった。


「ガアアアァァ!!!」

「らあああぁぁ!!!」


男と獣、双方の得物が交差しあう。

先程のやり取りと違うのは、何合と切り結び身をよじって躱そうとも両者の距離は離れきらない事だ。

威力も速度も、一撃に勝る鵺の攻撃を己が積んだ経験と時折現れる壁を盾にしてやり過ごす。

独特のリズムを刻むようなやり取りを前にしてアンジェは、体に力を入れて身を起こすのも忘れて見入っていた。

これが、これこそがハンターの狩りなのだと、そう目に焼き付けながら。



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今後の継続力にも直結いたしますのでどうかよろしくお願いします!

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